第48話 全てが終わりホッとしたのも束の間…

カリーナ殿下が私を毒殺し、アルフレッド様を犯人に仕立てようとしていると知ってから、私は早速レイチェル様に協力を要請した。


彼女を確実に裁くため、私は自ら毒を飲み、カリーナ殿下の作戦に引っかかるふりをしたのだ。もちろん事前にカリーナ殿下の作戦をばらすことも出来た。でも、事件を未然に防いでしまっては、カリーナ殿下の罪は軽くなってしまう。


もしかすると、厳重注意を受けたくらいで終わるかもしれない。彼女を確実に排除するためには、私が毒殺されそうになるしかないのだ。


分かっていて毒を飲むことに、最初は反対していたレイチェル様だったが、私の決意を聞き、受け入れてくれた。すぐに王太子殿下にも話をし、協力を得た。


王太子殿下には、自分の妹を売る事になってしまって少し申し訳ない気がしたが


“カリーナめ、絶対に許せない。僕たちの大切な日を何だと思っているのだ!僕が穏便に済ませようと動いていたのに、それを台無しにしようとするだなんて。もう容赦しないぞ”


そう言って怒っていたらしい。


こうして私たちは、今日無事カリーナ殿下を断罪する事が出来た。さすがにほとんどの貴族が集まっている場所で、公爵令嬢でもある私を毒殺しようとしたうえ、侯爵令息でもあるアルフレッド様に罪を擦り付けようとしたのだ。


ここまで大事になっては、さすがの陛下や王妃殿下もうやむやには出来ないだろう。きっと極刑に処されるはずだ。


これで一番の脅威であったカリーナ殿下が居なくなる。やっとアルフレッド様と幸せになれるわ。


そう思っていたのだが…


「クリスティーヌ、きちんと解毒出来ているみたいでよかったね。でも僕は…君が命を落とすかもしれないと思った時、本当に生きた心地がしなかったのだよ。僕も後を追おうと本気で考えていたくらいだ…」


近くで見守ってくれていたアルフレッド様が、涙を流しながら私の元にやって来たのだ。


そうよね、アルフレッド様は、私の事を誰よりも愛してくれている。それはもう、病んでしまうほどに…ん?病んでしまうほど?


アルフレッド様の顔を見た瞬間、一気に血の気が引くのが分かった。


この顔…私、知っているわ…


クリスティーヌに拒否され続け、追い詰められたアルフレッド様が、クリスティーヌを殺害しようと計画を企てた時の顔だ。


あの時の彼は、完全に病んでしまっていた。どうしてあの時と同じ顔をしているの?私は間違いなく、アルフレッド様を愛し続けてきたはずなのに…


「アルフレッド様?どうして…」


ポツリと呟いてしまった。私は彼を病ませてしまったの?この命をかけてでも、彼の心を守りたいと思っていたのに…私は彼を守り切れなかったの?


ショックで涙が溢れだす。そんな私の傍までやって来たアルフレッド様が、ペロリと私の涙を舐めたのだ。


「クリスティーヌ、僕の可愛いクリスティーヌ。君はカリーナ殿下の作戦を知っていたのかい?」


ゾクリとする程美しい微笑を浮かべながら呟くアルフレッド様。なんて美しいのかしら?そう思うほど、神がかっている。


「クリスティーヌ、ちゃんと答えて。義父上も言っていただろう?僕にはきちんと話して欲しい」


いけない、あまりにもアルフレッド様が美しすぎて、つい見とれてしまったわ。


「はい、知っておりました。カリーナ殿下は必ず動いてくると踏んでいたので、彼女にはスパイを付けておりましたので…」


「それじゃあ、自ら毒を飲んだという事かい?どうしてそんな危険な事をしたのだい!君にもしものことがあったら、僕は…」


「申し訳ございません。でも、中途半端な事をしていては、彼女を完全に排除する事が出来ない。だからこそ、多少危険を冒してでも、カリーナ殿下を確実に排除したかったのです。あなた様と幸せな未来の為に!アルフレッド様を守るためなら、私は何でもしますわ!」


カリーナ殿下がいる限り、私たちはずっと彼女に怯えて生きていかなければいけない。あの人は、それほどまでに恐ろしい女性だと私は思っていたのだ。だからこそ、確実にカリーナ殿下を排除しておきたかった。


たとえどんな手を使っても!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る