第45話 あの女に嵌められたのか…~アルフレッド視点~
その場に倒れこむクリスティーヌを抱きかかえた。その瞬間、クリスティーヌが吐血してしまったのだ。
「クリスティーヌ…なんて事だ。誰か助けてくれ。クリスティーヌが!」
嫌だ、このままクリスティーヌが死んでしまうだなんて。絶対に嫌だ。
「落ち着いてくれ、アルフレッド殿」
「クリスティーヌ様、大変。すぐに医師を」
いつの間にか僕の傍に駆けつけていたカロイド殿下とレイチェル嬢。レイチェル嬢の指示で、すぐにクリスティーヌが運ばれていく。
「待ってくれ、僕も一緒に…」
震える体を必死に奮い立たせ、クリスティーヌに付いていこうとした時だった。
「お待ちください、クリスティーヌ様に毒をもったのは、あなた様ですね。アルフレッド様」
この声は…
ゆっくり声の方を振り向くと、そこにはカリーナ殿下の姿が。この女、何を言っているのだ?僕がクリスティーヌに、毒を盛るだなんて。
「殿下は何をおっしゃっているのですか?僕がクリスティーヌに毒を?そんなもの、盛る訳がないではないですか?」
「そうだよ、カリーナ。なんて事を言うのだい?さすがにアルフレッド殿に失礼だろう」
震える僕を支えてくれているカロイド殿下が叫んでいる。
「お兄様、騙されないで下さい。今捕まえたメイドが白状しましたの。ほら、あなた。証言してあげて」
さっき僕たちにジュースを持ってきたメイドが、震えながらこっちにやって来た。
「申し訳ございません。私はアルフレッド様に雇われた者です。彼にクリスティーヌ様の飲み物に、毒を入れるよう指示をされました。アルフレッド様に大切な家族を人質に取られていて…それで、どうしても逆らえなかったのです」
ポロポロと涙を流し、訴えているメイド。この女、一体何を言っているのだ?訳が分からない。
「ちょっと待ってくれ。貴様、いい加減な事を言うな。どうしてアルフレッドが、クリスティーヌを毒殺しないといけないのだ」
「そうよ、2人は家でもとても仲睦まじかったのよ。もう少しで婚約を結べると、クリスティーヌもアルフレッド様も喜んでいたのに。アルフレッド様にクリスティーヌを毒殺する理由がないわ」
僕の傍にやってきてくれた義両親が、メイドをギロリと睨んでいる。
「動機なんて私には分かりませんが、現に毒を盛った実行犯が、アルフレッド様が犯人と申しているではありませんか?」
「こんなメイドの証言なんて、信用できない。そこまで言うなら、アルフレッドがやったという、決定的証拠はあるのか?もし嘘の証言をしていたとしたら、タダでは済まないぞ!」
あまりの義父上の剣幕に、恐怖でメイドが後ずさっている。そんなメイドの傍に寄り添うあの女。
「証拠ならありますわ。アルフレッド様、まだスーツのポケットに、毒を持っていらっしゃるのではありませんか?ほら、左のポケットに」
カリーナ殿下がニヤリと笑ってそんな事を言っている。すかさず護衛が僕の傍にやって来て
「失礼いたします」
そういい、ポケットに手を突っ込んできた。すると…
「カリーナ殿下がおっしゃられた通り、アルフレッド様のポケットから、この様な小瓶が」
「ほら、毒が発見されたではありませんか?やはり、アルフレッド様がクリスティーヌ様を毒殺しようとした犯人なのですわ。まさか公爵令嬢を毒殺しようとするだなんて。その上、お兄様とお義姉様の大切な婚約披露パーティーの日に。すぐにアルフレッド様を地下牢に連れて行きなさい」
カリーナ殿下の言葉で、護衛たちが近づいてくる。
「違う…僕じゃない…僕が愛するクリスティーヌを殺そうとするだなんて…それよりも、クリスティーヌは無事なのかい?そうだ、クリスティーヌ…彼女にもしものことがあったら、僕は…」
僕が犯人とか、正直どうでもいい。もしこのまま、クリスティーヌが命を落としたら、僕はもう生きている意味はないのだから…このまま犯人に仕立て上げられ、殺されるのもまた運命だろう。
「アルフレッド、しっかりしろ。クリスティーヌは死んだりしない。それに君が、クリスティーヌに毒を盛るだなんて考えられない。必ず私たちが、君の無罪を証明する」
「そうよ、気を確かに。あの子は絶対に死んだりしないわ。あなたもクリスティーヌも、私にとって大切な子供よ。だから希望を捨てないで」
「義父上…義母上…」
護衛たちに連れて行かれる僕に向かって、必死に叫んでいる義両親。その姿を見たら、涙が溢れ出た。こんな僕を信じてくれるだなんて、やはりクリスティーヌを生み育てただけの人達だ。
でも僕は、もう…
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