あなたの重すぎる愛は私が受け止めます

第42話 なぜか心が歪んでいく～アルフレッド視点～

僕の横で眠るクリスティーヌを強く抱きしめる。最近クリスティーヌは、僕と一緒に寝てくれている。どうやら僕が、レイチェル嬢に嫉妬していた事に気が付いていた様だ。

貴族学院に入学して少し経った頃、今までクリスティーヌを嫌っていたレイチェル嬢が、珍しいお菓子を持ってきたのだ。そのお菓子をきっかけに、２人は急接近した。

レイチェル嬢は僕にもとても好意的で、カロイド殿下やカリーナ殿下から僕とクリスティーヌを守ってくれたのだ。ただ、レイチェル嬢の気の強さに完全にノックアウトされたカロイド殿下が、彼女に猛アプローチ。

少し前、ついにレイチェル嬢が折れ、2人が婚約する事が決まった。僕にとっても殿下がクリスティーヌを諦めてくれた事は有難い事なのだが…

何分レイチェル嬢とクリスティーヌは非常に仲が良く、よく２人で隠れて会っている。レイチェル嬢に会う時は、決まってクリスティーヌは録画機能があるブローチを外すのだ。一体２人はどんな話をしているのだろう。

レイチェル嬢といるときのクリスティーヌは、まるで大切な人と再会したかのように嬉しそうに話をしている。何となくだが、レイチェル嬢とクリスティーヌには、僕も知らない強い絆で結ばれている様な気がしてならないのだ。

令嬢で既にカロイド殿下の婚約者に内定している彼女に嫉妬するなんて、バカげている事とは分かっている。ただ…あまりにも２人の仲が良すぎるため、なぜか不安でたまらないのだ。いつか彼女が、クリスティーヌをどこか遠くに連れて行ってしまうのではないかと…

ただ、さすがに令嬢に嫉妬だなんて、情けない姿をクリスティーヌに見せる訳にはいかない。そんな思いで、必死に気持ちを抑えていたのだが、どうやら彼女は全てお見通しだった様だ。

「本当にクリスティーヌは、どこまでも僕の事を理解しようとしてくれているのだね…」

眠るクリスティーヌの頬に、そっと口づけをした。愛おしくてたまらないクリスティーヌ。僕が少しでも不安に感じていると、すぐにその気持ちを汲み取り寄り添ってくれる。それが嬉しくてたまらないのだ。

現に最近は、レイチェル嬢とあまり関わらなくなった。きっと僕に気を使ってくれているのだろう。本当に彼女は一体、どれほど僕の事を考えてくれているのだろう…

本当に愛おし子だ…

その時だった。どこからともなく、ヴーヴーという音が聞こえてきたのだ。これは通信機の音か？

でも、この部屋には通信機なんて無いはずだ。もしかしてクリスティーヌが？あり得ない、彼女が僕に内緒で、誰かと密かに連絡を取っているだなんて…

再び耳を澄ますと、ベッドの中から聞こえる。そっと布団をめくると、クリスティーヌの寝間着のポケットからなっている。恐る恐る彼女のポケットに手を入れ、通信機を取り出す。

相手は一体誰だ？クリスティーヌは一体、誰と連絡を取り合っているのだ？

震える手で通信をオンにすると

“やっと出てくれたのね。クリスティーヌ様、今宜しいですか？”

この声は…

震える手ですぐに通信機を切った。間違いない、この声は、レイチェル嬢だ。まさか僕に内緒で、通信機で連絡を取り合っていただなんて…

「どうして…どうしてだい？クリスティーヌ。そこまでして、あの女と連絡を取り合わないといけないのかい？」

もしかしてレイチェル嬢は、僕からクリスティーヌを奪おうとしているのか？そもそも、この２人は一体何をしているのだろう。

ふとカロイド殿下の言葉が頭に浮かぶ。

“レイチェルとクリスティーヌ嬢、仲が良すぎないかい？もしかして、２人は恋仲なんじゃ…”

その時はさすがにあり得ないと思っていた。でも…もしかすると、殿下の言う通り２人は…

震える手で、通信機をクリスティーヌのポケットに戻した。そしてクリスティーヌを強く抱きしめる。

嫌だ…

あの女になんて、絶対にクリスティーヌを奪われたくはない！クリスティーヌは僕の大切な人なんだ。

あと少しでクリスティーヌと婚約を結べると思っていたのに…どうしてだい？クリスティーヌ、どうして僕をこんなに不安にさせるのだい？僕はただ、君の傍にいられたらそれだけで幸せなのに…

そう、傍にいられるだけで幸せなんだ…

そうだ…婚約さえ結んでしまえば、さすがに僕から逃げる事は出来なくなる…それに婚約さえ結んでしまえば、クリスティーヌは完全に僕のものだ。

あの女になんて、絶対にクリスティーヌを渡してたまるか！もしもクリスティーヌが僕から逃げようとしたら、その時は…