第41話 アルフレッド様は相変わらずです
「クリスティーヌ、やっと見つけた。またレイチェル嬢と一緒にいたのかい?」
グイっと引っ張られる感覚がしたと思うと、そのままアルフレッド様にギュッと抱きしめられた。
「僕の可愛いレイチェル!また僕に黙ってクリスティーヌ嬢と会っていたのだね。クリスティーヌ嬢、僕の可愛いレイチェルを、勝手に連れて行かないでくれ!」
後ろからやって来た殿下も、すかさずレイチェル様を抱きしめている。ただ…
「カロイド様、私はちゃんとクリスティーヌ様とお話をして来ると伝えましたよね。それなのにクリスティーヌ様に文句を言うだなんて、どういうつもりですか?もしかして私から、大切な友人を取り上げるつもりなのですか?」
「いや…僕はそんなつもりではないよ。ただ…やっとレイチェルが僕の気持ちに答えてくれたから、嬉しくてつい…」
子供の様にシュンとする殿下。まさかこんな姿を見られるだなんて。笑いがこみ上げてくるのを、必死に抑えた。
「そんな顔をしないで下さい。クリスティーヌ様、カロイド様が申し訳ございません。ではまた今度、ゆっくりお話しをしましょう」
「はい、もちろんですわ」
カロイド殿下を連れてレイチェル様がその場を去っていく。なんだかんだ言って、あの2人もラブラブね。前世では男の影すらなかったいっちゃんが、まさかあの腹黒王太子と恋仲になるだなんて…本当に人生何が起こるか分からない。
全てが終わったら、次期王妃になるレイチェル様を、全力で支えよう。おちろん、アルフレッド様を幸せにすることが、私の最重要使命ではあるが。
ふとアルフレッド様の方を見ると、不安そうな瞳で私を見つめていた。しまった、きっと私がアルフレッド様に黙って、レイチェル様に会いに来たから心配していらしたのだわ。
「アルフレッド様、ごめんなさい。心配して探しに来てくださったのですよね。さあ、私たちも帰りましょう」
アルフレッド様の手をギュッと握り、一緒に馬車を目指す。
「クリスティーヌ…その…随分とレイチェル嬢と仲が良いのだね…それにブローチも最近付けていない様だし…」
アルフレッド様が少しでも安心する様にと、録画機能があるブローチをずっと付けていたのだが、レイチェル様と会話をするときはさすがに外しているのだ。
「ごめんなさい、最近ちょっとうっかりしていることが多くて。今すぐ付けますわ」
ポケットに入れていたブローチを急いで胸に付けた。
「アルフレッド様、不安な思いをさせてしまって、申し訳ございません。ですが私は、誰よりもアルフレッド様の事を大切に思っております。以前も申し上げた通り、私はどんなことがあっても、アルフレッド様から離れるつもりはありません。もし私たちを引き裂こうとする者が居たら、蹴散らすまでです。ですからどうか、そんな顔をしないで下さい」
ギュッと彼を抱きしめ、必死に訴える。
「ありがとう、クリスティーヌ。君が僕の事を大切に思ってくれている事は分かっているつもりだ。ただ…どうしても不安になるのだよ。特に最近、レイチェル嬢とかなり仲が良いだろう。彼女が悪い人ではない事は僕にも分かっている。ただ…」
「ただ?」
「いいや、何でもない。クリスティーヌ、後少しで僕たちも婚約を結べるね。君と婚約を結べる日を、僕は心待ちにしているんだ」
「私もですわ。アルフレッド様と婚約できる日を楽しみにしております。貴族学院卒院後は、すぐに結婚できる様、両親も準備しているみたいですし。だからどうか、アルフレッド様は何も心配しないで下さい」
アルフレッド様との幸せな未来の為にも、私は必ずあの女との戦いに勝利する必要がある。その為にも!
「クリスティーヌのウエディングドレス姿か…きっとものすごく綺麗なのだろうな…」
「無事婚約を結んだら、アルフレッド様のご両親にも報告に行きましょう。きっと天国で、あなた様の事を見守って下さっていますわ」
漫画では無残にも殺されてしまったアルフレッド様。きっと天国のご両親は、さぞ無念だったことだろう…ご両親の気持ちを考えると、胸が締め付けられる。
「両親に報告か…そうだね、2人でいい報告が出来るといいね。クリスティーヌ、君がいてくれるだけで僕は生きていける。どうか…どうか僕の傍にずっといて欲しい。どうか両親の様に、僕を残してどこかにいったりしないで欲しい…」
切なそうにアルフレッド様が私を見つめる。そうだわ、彼はある日突然両親を亡くしたことから、時折情緒不安定になる事があるのだった。きっと私がレイチェル様と最近仲が良いから、情緒が不安定になってしまっているのだろう。
私ったら本当に駄目ね。とにかくしばらくは、レイチェル様に会わない様にしよう。きっと彼女なら、分かってくれるはずだ。
「アルフレッド様、ごめんなさい。あなた様はいつでも私を求めてくれているのですよね。それなのに私は…これからはレイチェル様と関わるのは控えますわ。極力アルフレッド様の傍におります」
「本当かい?それは嬉しいな。クリスティーヌはいつも、僕の気持ちに寄り添ってくれるね。ありがとう」
「私はどんなことがあっても、あなた様を嫌いになる事はありません。ですから、どうかもっとご自分の気持ちをさらけ出してください。嫌な事は嫌とはっきり伝えて下さい。私はアルフレッド様に我慢させてしまう事が、一番辛いのです。どうかご自分に正直に生きて下さい。私はどんなアルフレッド様でも受け入れますので」
どうか私の前では、無理をしないで欲しい。もしも愛するあまりに、彼に命を奪われたとしても、それはそれで本望だ。ただ、私は生きてアルフレッド様と幸せになる事を目指すけれどね。
とにかく、これからが本番だ。アルフレッド様の心を病ませないように、あの女と上手く戦わないと!
※次回からしばらくアルフレッド視点です。
よろしくお願いします。
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