第33話 ここでもレイチェル様は大活躍です

「レイチェル嬢、僕からもお礼を言わせてほしい。君のお陰で助かったよ。ありがとう。ただ、今日から毎日クリスティーヌと一緒に過ごすというのは、ちょっと…」


困り顔のアルフレッド様。その姿を、もちろんレイチェル様が見逃すはずがない。


「あれは言葉の綾ですわ。私はお2人の邪魔をするつもりはありません。私、ずっとお2人の仲睦まじい姿が、素敵なだなっと思っていたのです。ですから、どうか私にも協力させていただけると嬉しいですわ。もしよろしければ、特別にアルフレッド様に、苺大福のレシピをお教えいたしますよ」


レイチェル様が笑顔でアルフレッド様に話しかけている。


「それは本当かい?ありがとう。それじゃあ、早速レシピを教えてもらえるだろうか?これでクリスティーヌに好きなだけ苺大福というものを食べさせてあげられるよ」


アルフレッド様が、それはそれは嬉しそうに微笑んだのだ。その顔を、レイチェル様が嬉しそうに見つめている。


「それでは今日、公爵家にお邪魔してもいいでしょうか?公爵家の料理長に伝授いたしますわ」


「もちろんだよ。よろしく頼む」


昨日まで嫌悪感を露わにしていたアルフレッド様だが、レイチェル様に対し、少し警戒心を解いてくれた様だ。よかったわ。


和やかな空気のまま教室へと向かい、それぞれ席に着く。やっぱりレイチェル様はすごいわ。あの殿下たちを黙らせるのだから。ただ、このまま彼らが黙っているとは思えない。特にカリーナ殿下には、引き続き要注意ね。


案の定、お昼休み。


「クリスティーヌ様、アルフレッド様、一緒に昼食を食べましょう」


笑みを浮かべこちらにやって来たのは、カリーナ殿下だ。後ろにはカロイド殿下もいる。断ろうかどうしようか迷っていると、カリーナ殿下がアルフレッド様の隣に座ったのだ。ただ、なぜかいつも私の隣に来るカロイド殿下は、カリーナ殿下の隣に座っている。


あら?もしかしてレイチェル様の言葉がきいたのかしら?とにかく、あのうさん臭い笑みで近づいてこなくなってよかったわ。ただ、カリーナ殿下は相変わらずだ。さて、どうしたものかと考えていると…


「皆様、こちらにいらしたのですね。私もご一緒してもよろしいでしょうか?」


私達の元にやって来たのは、レイチェル様だ。待っていました!レイチェル様の姿を見るだけでホッとしてしまう。


レイチェル様は私の隣に座るのかと思いきや、何とアルフレッド様とカリーナ殿下の間に座ったのだ。


「ちょっとレイチェル様、狭いですわ。あなた様はクリスティーヌ様の隣に…」


「確かに狭いですわね。カロイド殿下、もう少し向こうに行っていただけますか?カリーナ殿下もお願いいたします。さあ、食べましょう」


無邪気な笑顔でカリーナ殿下をさりげなく押しのけるレイチェル様。そんなレイチェル様を、カリーナ殿下が睨んでいる。


「カリーナ殿下、そんな怖いお顔をしてどうされましたか?私、何か気に障る事をいたしましたでしょうか?」


ウルウルとした瞳で、カリーナ殿下を見つめるレイチェル様。ここでも前世の時の演技力が炸裂する。


「いえ…何でもありませんわ…」


完全にペースを乱されたカリーナ殿下に対し、レイチェル様は勝ち誇った顔をしている。この勝負、レイチェル様の勝ちね…て、いつまでも親友に負担をかけていてはダメよね。私も頑張らないと!そう思い、動こうとした時だった。


「カリーナ、そんな仏頂面をしているのなら、席を替わってくれるかい?」


「誰が仏頂面ですか!お兄様まで私をバカにして。なんだか私、気分が悪くなってきたのでこれで失礼いたします」


ペコリと私たちに頭を下げると、カリーナ殿下がその場を去って行った。


「私、何かいけない事をしてしまったかしら?」


レイチェル様がコテンと首をかしげている。きっと演技なのだろう。それにしても、カロイド殿下のアシストがあったにせよ、あのカリーナ殿下を追い出すだなんて…


やっぱり私のいっちゃんはすごいわ!つい尊敬のまなざしでレイチェル様を見つめていしまう。


ただ、同じような眼差しでレイチェル様を見つめている男が…


「レイチェル嬢、あのカリーナをあそこまで追い詰めるだなんて、凄いね。まさかクリスティーヌ嬢と同じような令嬢がここにもいただなんて。僕、君に興味を持っちゃった」


ニヤリと笑ったカロイド殿下が、レイチェル様の手を取ったのだ。この悪そうな顔はまさか…


「殿下、はっきり言って興味を持たれるのは迷惑ですわ。今の言葉は聞かなかった事にして差し上げます」


カロイド殿下の手をペッと振り払うと、露骨に嫌そうに手を拭いていた。いくら性悪ヒーローで、アルフレッド様を殺した相手だからって、そこまで露骨に嫌わなくても…


ただ、ド変態の性悪カロイド殿下には逆によかったようで…


「その目、僕が求めていた目だ…君なら婚約者もいないし、問題ないよね」


何を思ったのか、殿下がにっこり笑ってそんな事を言い出したのだ。

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