第2話 愛しのアルフレッド様とご対面です
とにかく一度落ち着かないと。えっと確か今の私の年齢は12歳よね。昨日行われた王家主催のお茶会に参加して、王太子でもあるカロイド殿下の美しさにすっかりノックアウトしたのだったわ。
そして…
昨日の出来事を思い出した私は、顔が真っ青になる。
「しまった…こうしちゃいられないわ」
寝間着のまま部屋から飛び出る。
「お嬢様、どこへ行かれるのですか?」
後ろでアリアが叫んでいるが、今はそれどころではない。
「おはようございます!お父様、大事な話がありますわ!」
よかった、お父様がまだいらっしゃって!
「クリスティーヌ、何だその格好は。とにかく着替えてきなさい」
「いいえ、着替えなんかよりも大切な話があるのです!とにかく、私の話を聞いて下さい」
お父様に鼻息荒く詰め寄った。すると…
「クリスティーヌ、そんな恰好で部屋から出るだなんて。寝ぐせも付いているじゃないか。さあ、僕が部屋まで送ってあげるから、一度着替えておいで。義父上にはその後ゆっくり話をすればいいだろう」
私の元にやって来たのは…
美しい銀色の髪に青色の瞳、間違いない。アルフレッド様だわ。あぁ、アルフレッド様の声、素敵だわ。それに生アルフレッド様が目の前に…ダメだ、鼻血が出そうだ。
でも、なぜか悲しそうな顔をしている。そうか!
「アルフレッド様、おはようございます。昨日は変な話をしてしまい、ごめんなさい。お父様も聞いて下さい!昨日は何を思ったのか、王太子殿下のカロイド殿下と結婚したいなんて寝ぼけた事を申しましたが、前言撤回でお願いします。私は王妃様に何てなりたくないし、何よりこの家を継ぎたいと思っております。その為に、必死に勉強もして参りましたし」
そして何より、アルフレッド様と一緒にいたいし、彼の重すぎる愛も全力で受け入れたい!
「あぁ、クリスティーヌ。よかった、考え直してくれたのだね…昨日僕が何を言っても“私はカロイド殿下の婚約者候補になりたいのです”と言っていたから、僕は…昨日は不安で一睡もできなかったんだ。本当によかった」
心底ほっとした表情を浮かべるアルフレッド様。きっと昨日も、1人で泣いていたのだろう。漫画のシーンが脳裏をよぎり、胸が張り裂けそうになった。
「ごめんなさい、アルフレッド様を悲しませてしまって。もう二度とその様な事は言いませんわ。お可哀そうに、それで少し目が赤いのですね。さあ、アルフレッド様、食事が済んだら一度お休みください。そうだわ、アルフレッド様が眠るまで、私が傍にいて差し上げます。昔はよく、アルフレッド様が眠るまで、手を握って差し上げていたでしょう」
アルフレッド様の手をそっと握った。すると、大きく目を見開いたと思ったら、今にも泣きそうな顔で私を見つめてくるではないか。そんな顔で見つめられたらたまらない。
「クリスティーヌ…ありがとう。僕は嬉しくて…さあ、とにかく着替えをしに行こう」
私の手を取り、嬉しそうに歩き出すアルフレッド様。温かくて大きな手。6歳で両親を亡くしたアルフレッド様、きっと慣れないこの家で、辛い事もあっただろう。でもこれからは、私があなた様をしっかり守って差し上げますから!
彼の手を握りながら、そう誓った。一旦部屋に戻ると、アリアが待っていた。
「お嬢様、急に部屋から出ていかれるなんて。それもその様なお姿で。このお屋敷には、アルフレッド様もいらっしゃるのです。軽率な行動はお慎み下さい!」
「ごめんなさい、昨日の件でどうしてもお父様に話しがしたくて。それでつい」
「お嬢様、いくら王太子殿下の婚約者候補になりたいとおっしゃられても、あなた様はアレスティー公爵家の一人娘なのですよ。いずれあなた様が婿を取り…」
「もう、分かっているわ。だから今さっき、お父様に昨日の件はなかった事にして欲しいと伝えてきたわよ。とにかく私は、この家を継ぐから安心して頂戴」
この家を継いで、アルフレッド様と幸せに暮らすのだ。もう二度と、アルフレッド様を悲しませたりしない。彼は絶対に私が幸せにして見せる!
「…それならよろしいのですが…」
着替えが終わると急いで部屋の外に出る。すると、不安そうな顔のアルフレッド様が待っていた。
「まあ、こんなところで待っていて下さったのですか?着替えが遅くなってごめんなさい。さあ、アルフレッド様はゆっくり休んでください。私が寝るまで、そばにいて差し上げますからね」
アルフレッド様は12歳になった今でもきっと、人恋しいのだろう。漫画でのアルフレッド様は、ただただクリスティーヌの温もりだけをずっと求め続けていた。でも、その温もりを感じられないままアルフレッド様は…
ダメだ、考えただけで涙が出てくる。お可哀そうなアルフレッド様。大体、人ひとり不幸にしておいて、何がヒロインよ!何がハッピーエンドよ。ふざけるのも大概にして欲しいわ!
漫画の事を思い出しただけで、怒りがこみ上げてくる。私ははっきり言って、ヒロインのクリスティーヌが大嫌いだった。アルフレッド様を不幸にしたあんな女、絶対に不幸になればいいとずっと思っていたのだ。
「クリスティーヌ、怖い顔をしてどうしたんだい?」
いけない、ついあの事を思い出してしまったわ。ダメね、今はアルフレッド様に集中しないと。
「何でもありませんわ。さあ、お部屋に戻りましょう」
昨日ショックで眠れなかったであろうアルフレッド様を、休ませてあげないと!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。