あなたの重すぎる愛は私が受け止めます
@karamimi
第1話 大好きな漫画の世界でした
“ねえ、昨日発売の“私はあなたと生きていきます”の最新刊読んだ?ついにアルフレッド様がクリスティーヌを殺そうとして、処刑されたわね“
“その話はしないでよ…私、アルフレッド様推しだったのに…お可哀そうに、ただアルフレッド様は、クリスティーヌを愛していただけなのよ。それなのに、クリスティーヌの奴、まさかあの王太子と婚約するだなんて。私なら絶対にアルフレッド様の重すぎる愛でも受け入れるのにな…”
アルフレッド様の重すぎる愛?
これは夢?
パチッと目を覚ますと、豪華なシャンデリアが目に飛び込んできた。ここは…
ゆっくり起き上がり、辺りを見渡す。
「おはようございます、クリスティーヌお嬢様。お目覚めですか?」
私に話し掛けてきたのは、専属メイドのアリアだ。そう、私の名前はクリスティーヌ…ん?クリスティーヌ?
ベッドから飛び起き、急いで鏡の前に立つ。桃色の長い髪に、少し垂れさがった紫色の瞳。
「この子は…ヒロインのクリスティーヌだわ…」
「お嬢様、何を訳の分からない事をおっしゃっているのですか?」
隣でため息を付きながら呟くアリア。そう、私は公爵令嬢で“私はあなたと生きていきます”の主人公でヒロインの、クリスティーヌ・アレスティーだ。まだ幼いが、間違いない。
という事は私、大好きだった漫画に転生したって事?
ちょっと待って、とにかく落ち着いて。そもそも私、昨日まで普通にクリスティーヌとして生活していたのよね。昨日までの記憶もあるわ。でも…日本人として生きていた記憶もある。どういう事?
「お嬢様、大丈夫ですか?そんな難しいお顔をされて、一体どうされたのですか?」
「アリア、悪いのだけれど、ほんの少しだけ1人にしてくれる?考えたい事があるの」
「考えたい事ですか?はぁ…分かりましたわ。では、外に待機しておりますので、落ち着いたらお呼びください」
アリアがそう言って出て行った。再び鏡に映る自分を見る。
間違いない、私は前世で大好きだった漫画の世界に転生したのだわ。そして、ひょんなことから、前世の記憶が蘇っただろう。こんな事があるだなんて。
それにしてもクリスティーヌって、こうやって見ると可愛い顔をしているわ。鏡に映る姿を見ながら、ついニヤけてしまう。て、ニヤけている場合じゃない。
そう、私の好きだった漫画、“私はあなたと生きていきます”では、主人公の公爵令嬢、クリスティーヌは、幼馴染のアルフレッド様との関係で悩んでいた。
彼は俗にいうヤンデレで、クリスティーヌが好きすぎて、事あるごとに束縛するのだ。そんなアルフレッド様から逃げたいと常々思っていたクリスティーヌは、12歳の時、運命的な出会いをはたす。
それがこの国の王太子、カロイド殿下だ。彼の穏やかな性格と優しさにノックアウトされたクリスティーヌは、両親に頼み込み、何とか婚約者候補にしてもらう。
その後クリスティーヌとカロイド殿下は惹かれていき、恋仲になる。ただ、黙っていなかったのが、クリスティーヌに恐ろしいほど執着していたアルフレッド様だ。彼はありとあらゆる手を使って、クリスティーヌを取り戻そうとするが、結局失敗に終わる。
最後は自分とクリスティーヌが結ばれないのなら、せめてあの世で結ばれたい!そう願い、クリスティーヌと無理心中をしようとしたところを、カロイド殿下に捕らえられ、アルフレッド様は処刑されてしまうのだ。
そしてその後、クリスティーヌとカロイドはめでたく結婚し、ハッピーエンドを迎える…て、何がハッピーエンドよ!
何を隠そう、前世の私は、病的に病んでしまう悪役令息、アルフレッド様の大ファンだったのだ。彼が毎回“どうしてクリスティーヌは、僕を受け入れてくれないのだ。こんなに愛しているのに”と涙を流すシーンを見ながら、私なら重すぎるアルフレッド様の愛を受け止めるのに!と常々思っていたのだ。
特に処刑される寸前、様子を見守りに来たクリスティーヌを見つめ死んでいくシーン、今思い出しても涙が出るわ。クリスティーヌも悪趣味よね。わざわざアルフレッド様が処刑されるところを見に行くだなんて!性格が悪い事この上ないわ。
そもそもアルフレッド様は、6歳の時にご両親を事故で亡くし、アルフレッド様の親友でもある今の私のお父様(アレスティー公爵)に引き取られた。ちなみにお母様とアルフレッド様のお母様は、従姉妹同士で幼馴染だったらしい。家族を失い絶望に打ちひしがれるアルフレッド様の心を癒したのが、クリスティーヌだったのだ。
クリスティーヌは1人涙を流し悲しむアルフレッド様に寄り添い
“私がずっと傍にいるわ。だからどうか1人で泣かないで”
そう言ってアルフレッド様を慰めていた。そのお陰か、少しずつ元気を取り戻していったアルフレッド様。全てを絶望した時に手を差し伸べたクリスティーヌに執着し、全身全霊で愛情を注ぐようになったアルフレッド様に、あろう事かクリスティーヌは!その愛情が重すぎて逃げ出すだなんて!
それなら“私がずっと傍にいる”だなんて大嘘、吐くんじゃないわよ!
あぁ、思い出しただけでムカついて来たわ!あの女、一言ぶん殴ってやりたいとずっと思っていたのよね…て、今の私か。
再び鏡に映る私を見つめた。見れば見るほど、憎たらしい顔をしているわね。本当にぶん殴ってやりたいところだが…
鏡に向かってニヤリと笑う。
神様、ありがとうございます!私を悪役ヒロイン、クリスティーヌに転生させてくれて!
私、必ずアルフレッド様の重すぎる愛を、受け入れて見せますわ!
~あとがき~
今更ですが、新年あけましたね。
2024年一発目はヤンデレ?系です。
今年もぼちぼちと書いていきますので、どうぞよろしくお願いしますm(__)m
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