第五話
「ファンタジー系4」
堀川士朗
第五話
☆王暦36年。人口975500。金1353400。食料1405300。鋼量295400。兵力176800。文明度1760。
北の国の魔導博士ザコシュは様々な電子機器の発明をした。
炊飯器、電子レンジ、ビデオカメラ、テレビジョンなどの製品は他の国よりも20年も早く開発された。
特許を取得したそれらの電化製品はタム屋の商人キョンタムの販路により世界各国に大量に販売され、多大なる外貨を北の国にもたらした。
また、貿易相手国が製品を研究してコピー商品を作ろうとすると、分解した際に爆破する仕組みにしてこれを阻止した!
軍事技術にも次々と転用されていく!
騎兵銃や重機関銃、戦車砲などに電子機器を組み込み、命中率を格段に向上させる事に成功した。
それには鉱脈が発見されたレアメタル、『アマタイト』の存在が大きく関与していた。
王暦36年7月。
機は熟した。
大魔王アルノはタリホー帝国に対して宣戦布告した!
タリホー帝国との戦争が始まった。
これには近隣諸国のネルネ共和国、へーカップ王国、東国諸侯連合はいずれもみな沈黙を守り、静観の構えを見せた。
どの国も進んで自軍の兵力を同盟国へと派兵する事はなかった。
ただ水面下では北の国、タリホー帝国ともに諸国に働きかけ、物資や軍備の供与を促していた。
その工作には北の国の女スパイ、ティチヴァン・ミュノリの活躍もあった。
最前線。
タリホーと北の国の国境地帯。
センドロ大平原。
タリホー帝国陸軍第5師団第7歩兵大隊を率いるダスボエンディ少佐は、両軍の衝突予測地帯の大地に、部下に塹壕を掘らせ続けた。
部下たちはその疲れから不服を隠せないが、少佐はこう言った。
「掘れば掘るほど、山を高くすればするほど貴様らの生存率が上がる!死にたくなければ掘れ。戦争はピクニックじゃないぞ!少しでも可能性がある事に躍起になるのがタリホー帝国軍人の矜持だ!」
部下たちは塹壕を掘り続けた……。
ダスボエンディ少佐には、この地が一大激戦地になるだろうという予感があった。
齢105歳になるタリホー帝国の老兵ハンダ・リョーヘー・オブライオス兵長。
歴戦の勇士だ。
漆黒の軍服を着ていて、『黒騎士』と呼ばれている。
普段は好好爺のように穏やかなその表情は、戦場では鬼の形相に一変する。
武器は伸縮自在の鞭剣『ドルベン』。
佐官クラスの将校ですら、彼を前にすると最敬礼するほどの伝説の戦士である……!
「オブライオス殿、ご武運を」
「ああ。ダスボエンディ少佐。俺はまだ死ねねえ。俺は敵の魂を食らって生きている。そいつらのためにもな。いつものように俺一人で出る。その方が殺りやすい。俺の剣は、皆殺しの剣だからな」
ハンダが出撃した。
北の国の歩兵部隊が次々と攻めてきた!
最大まで伸ばすと長さ270パルカ(28メートル)まで伸びる鞭剣『ドルベン』を縦横無尽に振り回すオブライオス兵長。
まるで生き物のように鞭剣はあらゆる敵兵を削ぎ飛ばし、何百人も地獄送りにしていく!
北の国兵士の放つ弾幕により地に咲く花々が散っていく!
それでも黒騎士ハンダは存在感を示し続けた。
鞭剣『ドルベン』は大気との摩擦音でヴィピューンッという甲高い音を立てて空中を疾駆していく!
ハンダ・リョーヘー・オブライオス兵長は戦場を駆け抜ける!
……やがて静寂が訪れた。
「ふう……。あちい」
ハンダは敵兵が二度と起き上がらないだろう事を確認すると草原にあった岩に腰をおろし、鉄兜を脱ぎパタパタと扇いでいる。
ふと見ると、オブライオス兵長の肩と腹には一発ずつ、敵からもらった銃創の痕があった。血も出ている。
「いけね。二発も食らったか。こんな事はあまりないんだがなぁ。あ~あ。ハードラックとダンスっちまったかな。今日のところはもう帰るべ。退散退散」
ハンダ・リョーヘー・オブライオス兵長は撤兵した。
後に残るのは死体の山、山、山。
北の国のピンク色の迷彩の軍服を着た新兵たちはみな静かな死体となり、わずかに残った重傷者も捕虜に取られていく。
北の国本国から進軍してきたケンシバ将軍率いる第4師団の第11歩兵大隊はたった一人の老兵の手によって全滅した……!
続く
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