第四話


 「ファンタジー系4」


          堀川士朗



第四話



☆王暦34年。人口459000。金164800。食料305000。鋼量58950。兵力54500。文明度760。


8月。

夏の暑い日。

邸に、父親の使いで出入りしていた酒屋の若い娘ラシャに大魔王アルノは恋をした。

ラシャは14歳の少女だった。

幼さを隠した横顔に、アルノは惚れてしまった。

酒屋がやっている居酒屋『星の葡萄亭』に飲みに行き、店員として働くラシャの白くて細い手を握るアルノ。

葡萄酒を二本開けた。

ラシャの顔が少し歪んだ。

邸に呼びつける。

窓を閉めアルノはラシャにキスし、想いを告げるが、ラシャには恋人の少年スードンがいた。パン屋の息子。将来、結婚するのだとラシャはアルノに言った。

ああ、あの兄妹みたいに仲の良い男か。男め。男なんて、とアルノは思ったが口には出さなかった。


「そう。それは良かったわね……」


と言って大人しくその日はラシャを帰した。


ところが、翌日スードンは北の国王国広場で公開処刑される事になる……!

ヤクーによる五体裂きの刑。

スードンの体には五ヶ所縄がくくりつけられており、それは今にも暴れだしそうな雄のヤクーに繋がっていた……!

兵士を従えた大魔王アルノは笑ってそれを見ていた。

ピンク色の扇子を仰ぎながら。

ラシャは泣き叫ぶ。


「スードン!スードーン!」

「ラシャ!見るな!僕を見るなーっ!」

「スードーン!やめて~!」

「うわーっ!」

「スードーン!」


五体の雄ヤクーは鞭を当てられ勢いよく走る。

そのままスードンの体を五つに引き裂いた……!


散乱する血だらけのスードンの死体……。

それを見て、泣き叫び狂ってしまうラシャ。


『星の葡萄亭』の主人、ラシャの父親が罵倒する。


「大魔王!貴様は死んで地獄に墜ちろ!」

「何を言われても平気よ。むしろ逆だわ。私は絶対死なないの。……この男もヤクー裂きの刑にして」


アルノは配下に命じた。

ラシャの父は連れていかれた。

そして、同じように処刑された。


「もうラシャには興味を失ったわ。私に従順な、大人しいかわいらしいお人形さんでいれば良かったのに」


立ち去る大魔王。

ラシャは広場に捨て置かれた。

泣き崩れる彼女を誰もが、みな見ない振りをして家の中に入っていった……。



☆王暦36年。人口925500。金963400。食料865300。鋼量158400。兵力126800。文明度1180。


時間は無情にも刻一刻と流れていく。

戦争準備が各方面で進んでいた。。

国家総動員法が王令により制定された。

若者はみな次々と徴兵され訓練により一人前の兵士に育て上げられた。

国税があらゆる形で上昇していった。

その頃ティチヴァン・ミュノリはタリホー帝国森林首都エルトポの酒場でホステスとして働き、客で訪れているタリホー帝国陸軍の将校らに色気と高い酒で情報を引き出し、アジトにある無線機で暗号化された機密情報を逐次北の国に送信していた……!



大魔王アルノはタム屋の商人キョンタムとの交渉の席にあった。

軍馬や多砲塔戦車ゲンブ、数万梃もの騎兵銃、重機関銃や大砲、それらの弾薬砲弾などを国家予算から大枚はたいて購入する。

軍事予算は合計20億スクレバス(5600億円)にまで膨れ上がった。

スケールのデカい大商いだ!


「装備品にはお金は惜しまないわ。もちろん品質が良ければの話だけど」

「大魔王様もご商売が上手い!出血大サルビスさせて頂きますヨッ!」


キョンタムはやり手の武器商人だ!

タリホー帝国にも、その同盟国のネルネ共和国にも販路はあるし、高値で買い取るならばその買い手は別に敵国タリホー帝国でも構わないのだ。

それだけは避けねばならなかった。

この大切な時期に出来るだけ速くキョンタムから高値で購入するのが、現時点での得策と言えた。


翌週から列車で次々と本国へ送り込まれる軍事物資。

総計50数輌にも及ぶ多砲塔戦車ゲンブは壮観な姿を見せていた。


北の国とタリホー帝国。

国力差は1対3!

北の国が劣勢だ。

ふたつの国の決戦の日は近い……!




 (後半戦 タリホー戦役編に続く)


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