第三話


 「ファンタジー系4」


          堀川士朗



第三話



☆王暦25年。人口142300。金63400。食料107000。鋼量3850。兵力18500。文明度165。


一昨年開通した北の国初の地下鉄。ゲドレ線。

隣国タリホー帝国に繋がれている。

ゲドレ線は両国の友好の証として建設、開通された。

だが、近年タリホーとは関係が悪化していた。


22歳になったティチヴァン・ミュノリが地下鉄ゲドレ線に乗り込み、そのままタリホー帝国にスパイに行く。

予め潜入していた北の国の諜報機関『ユニ・マテ』の介添えによりタリホーの森林首都エルトポの国民証書がミュノリに与えられた。

アジトも提供された。

これにより彼女は市民権を得て自由にタリホー帝国を諜報活動する事が可能となったのだ……!

充分な国力を蓄えてきた新興国家北の国と、東州最大最強軍事国家タリホー帝国が激突するのは、もはや時間の問題であった……!



王暦27年8月中旬。

今年もヴォンソン(盆尊)の季節がやってきた。

この時期はヴォンソン休みとなり、国民の多くがふるさとの街に帰省し、家族と過ごす。

また、祭りでは輪になってヴォンダンスも踊ったりする。


♪はあ~ 踊ろ踊ろう

ヴォンダンス ダアンス

憂き世忘れて 踊れば

ちょいと 三度傘

ヴォンダンス ダアンス~


♪はあ~ 踊ろ踊ろう

ヴォンダンス ダアンス

太鼓叩いて 踊れば

これは サンバかな

ヴォンダンス ダアンス~


♪はあ~ 踊ろ踊ろう

ヴォンダンス ダアンス

同じ阿呆なら 踊れば

また 愉しからずや

ヴォンダンス ダアンス~


先祖に対する鎮魂の祭りだ。

アルノは護衛の配下もつけずコーカシャイン地方にある墓参りにやってきた。

ここには北の国の大きな墓地がある。

墓の周りの木々にはもう、イガグリがなっている。

墓に北の国の国花であるスピカ薔薇のブーケをたむけ、墓を綺麗に磨く。

無心だ。

ここには父親が眠っている。

本当の父親ではないが、アルノを16歳まで育ててくれたとても大切な父。

アルノは墓の前で祈りを捧げた。

夏の暑い日射しが彼女を照りつけている。

大魔王である事を今日ばかりは彼女も忘れているようだ。

時期的にジンジン蝉からバトンタッチしたチキチキホッス蝉が遠くで鳴いている。

日が暮れて夜ともなれば、もう早くも顔を出した秋の虫が鳴き始める。

そんな季節にアルノは夜一人ベッドで魔導科学の分厚い本を読んでいる。

開け放たれた窓からは、お菓子のような匂いの美味しい夜風が入ってくる。



王暦32年。4月。

北の国南部地方で『アマタイト』が産出された。

魔導博士ザコシュの探索チームにより、アマタイト鉱山が発見されたのだ!

その埋蔵量は計り知れない……!

アマタイトはレアメタルで、電子機器の半導体などにも利用される。

ここにきて北の国の文明度は格段に向上した。

農業を産業の武器とするだけでなく、科学技術を駆使した一大工業立国への産声を上げた!

そのニュースは近隣諸国を駆け巡った!

しかし軍事境界線が隣の国、タリホー帝国が北の国のアマタイト鉱山を狙っていつ戦争を仕掛けてくるかも知れない。

タリホー帝国は強大な軍事国家である。

スパイに走らせているティチヴァン・ミュノリの報告からも、タリホー帝国軍の中枢部が開戦論議に明け暮れているとしているのが分かる!

両者の間に緊張が走った。



            続く


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