第二話


 「ファンタジー系4」


          堀川士朗



第ニ話



☆王暦20年。人口72800。金31500。食料42100。鋼量1250。兵力13600。文明度130。


17歳の少女、ティチヴァン・ミュノリとの出会いがあった。

彼女は栗色の長い髪をしていた。

プロポーションの良い美少女だった。

アルノの遠い親戚だ。

ミュノリもまた、無限の命を持っていた!

ただ、アルノとの違いは、アルノが永遠に16歳を繰り返すのに対して、ミュノリは歳は取るがまたゼロ歳に若返り何度も何度も人生をやり直せるという点だ。


大魔王アルノは、自らが設置した諜報機関『ユニ・マテ』にミュノリを入隊させ、女スパイとして彼女を育てた……!

サキュバスの血も引いているミュノリのエロチックな生命的本質をアルノは見抜いていたのだ。

そしてミュノリはアルノの信頼の置ける恋人でもあった。



☆王暦23年。人口84600。金38300。食料49700。鋼量2650。兵力15500。文明度143。


北の国の兵力は近隣の、不戦を誓った平和憲法で知られるパニシル市国を調略と交渉により一発の銃弾を撃ち込む事なく無血開城させ、占領下に置いた。

次第に広大な、そして強大な国家になっていく北の国。



国務大臣である王立科学研究所所長の魔導博士ザコシュが王の間にやってきた。興奮している。


「大魔王様!巨人族パルテノ夫婦の間に双子の赤ん坊が生まれましたぞ!」

「良いニュースね、ザコシュ。見に行きたくなったわ。馬を用意して」

「ははっ!」


王都ハムエルから遠く離れたツラン地方まで馬車に乗ったアルノはパルテノ宅に着いた。

家というよりかはまるで城で、家具も調度品も何もかもがビッグサイズだ!

巨大なベッドで眠っている生まれたての双子の赤ん坊と対面した。まだ、目も開いていないが既に身長は20パルカ(2.05メートル)で軽くアルノを越えている。

そばに置かれている熊とうさぎのぬいぐるみも馬鹿デカい!

アルノは、この生まれたばかりの大きくて小さい双子の命に感動していた。


「ヤクーの肉の丸焼きでもいかがですかな?大魔王様」

「いらないわ。ありがとうパルテノ」

「わしら夫婦にもようやっと子供が生まれました」

「おめでとう。私が名付け親となりましょう。女の子ね?双子の姉妹。姉の方をスギサク、妹の方をメチエとすると良いわ!」


双子の父親のパルテノは大層喜び、こう言った。

ちなみにパルテノの身長は75パルカ(7.7メートル)だ。


「ありがとうございます大魔王様。この子たちが大きくなったら、必ずや大魔王様の手助けをさせましょう!」

「そう。楽しみにしているわ。スギサク、メチエ、スクスク育つのよ」


アルノはスギサクとメチエの髪を優しくなでた。


パルテノ宅を後にした大魔王アルノは馬車の中で、誰にも気づかれないように一筋の涙を流した。

アルノは赤ん坊を産む事が出来ない。

無限の命を授かる代わりに、妊娠する事が出来ない宿命を背負っているのである……。



            続く


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