119【閑話】太公望鬼一 その2
鬼一side
真幸の話をまとめると、こうだ。
アリスは24回目の誕生日に妖狐の秘めたる力が解放された。体は人のまま成熟してしまって心の成長が追いつかず、混乱の中で無理な転移をして……体の欠損を伴う大怪我をした。
それと共に魂の一部が失われて、前世の命に引き寄せられていたってわけだ。
24歳は厄年にあたるが、厄年ってのは縁起的なものと科学的な根拠がある。
人間の細胞が沢山生まれ変わる時期のため、意識しない程度に体を動かしづらくなる。足が上がり切らず怪我したり、『うまく行かねーな』ってことが増える年なんだそうだ。
昔の人間はわかっていなかったはずだが、日本では昔からこのタイミングを『厄年』としていた。
つまり、アリスはそこに当たっちまったわけだ。
体が厄年で弱り、忌日が重なり、覚醒の誕生日まで来ちまって……どうにもならんかったんだろうな。
ちなみに前世は、なんと
玉藻前といえば、最近になって現世に残された殺生石が割れたって大騒ぎになっていたが、あれは別に封印の綴じ蓋でもなんでもない。
多少の怨念は残していただろうが、すでに本体は退治されてる。割れたことで分かったのは、玉藻前の怨念が綺麗に消えたって事だ。
そういや、殺生石のある場所にも松尾芭蕉は句碑があるぞ。……どこまで行っても真幸の前世がついてくる話ばかりだな。
アリスにも縁があったって事か。いや、そうだよな。真幸の親父は、恋人がアリスの先祖だもんな。
「それで、黄泉の国にいる玉藻前を親父と晴明に捕まえてもらって、魂を返してくれって説得してたんだ。
俺と同じく松尾芭蕉さんみたいに分霊してたんだって。だから玉藻前ごとに魂を全部戻して完全体にしたら、アリスはこの通り」
「でっかくなっちゃいました⭐︎」
おちゃらけるアリスを見て、吹き出してる星野と伏見。俺は苦笑いしかできんぞ。ずいぶん懐かしいモン知ってるな。
「元に戻れたならよかったぜ。黄泉の国なら真幸が適任だろう。親父もいる、颯人様も以前渡ったことがある、黄泉の国の長であるイザナミの勾玉も持ってるしな」
「そうですねぇ、颯人様の反魂もしましたし。芦屋さんに縁のある場所が増えましたね」
「縁というか、なんというか……俺はどうも生死に関わる出来事から逃れられないっぽいなとは思った」
「そうだな」
真幸はどうもそういう巡り合わせなんだな。本人は苦い顔してるが、そうなら支えられるようにしてやりてぇ。俺も精進あるのみだ。
「取り敢えずこれで問題は無くなったと思うよ。アリスの忌み日は様子見たいから、伏見さんにその差配をお願いしておきたい」
「かしこまりました。女性のアレコレをお聞きしてそちらも考慮してますから、問題ありません」
「えっ?そうなの?いつの間に……」
「僕も色々思うところがあるんですよ、今回のお話は。
芦屋さんも無理しないでくださいね。しばらく民間の簡単なお仕事しか回しませんから、少し体を休めて下さい」
「……ありがとう」
真幸に礼を言われて、伏見がニヤニヤしてるぞ。さて、真面目な話はここまでだな。
「鬼一さん、これからも釣りするなら、お魚の捌き方見ておくか?」
「ん……あぁ、そうだな。見せてくれ」
茗荷や大葉、生姜を刻む伏見の横で真幸が次々と鯵を捌いていく。
三枚おろしにするのが手早すぎて参考になりすらしない。
もしかして刃物扱いが上手から剣も立つのか?俺も練習するべきかもしれん。
一通り真幸が魚を捌く様を眺めて、火で炙っていた胡麻をすり鉢に入れた。すりこぎ棒で潰し始める。
あーいい匂いだなぁ、本当に腹が減った。
しかしこんなに胡麻を入れるのか。一袋丸ごととは驚いた。
「ゴマは少し潰すだけでいいよ。そこに味噌と、醤油と、味醂とお酢をほんの少しいれてよく混ぜてね」
「おう。……酢はつけて食うんじゃないのか?」
「そうそう、千葉の房総地方だとお酢をつけて食べるんだよねぇ。でも好き好きがあるからさ。お酢は殺菌と旨みを引き出すために入れるんだ。
つけだれはお醤油とお酢と選べるようにしておこう。お酒飲むなら濃いめがいいだろ?」
「ほう……確かにな」
アリスがすり鉢に調味料を少しずつ足して、俺が混ぜてを繰り返し、真幸が薬味と刻んだ鯵を入れてくる。まな板の上で叩かないんだな?
「全部を混ぜて叩くのがなめろうなんだけど。俺は、あのもちもちした感じが苦手だからこう言う作り方するんだ」
「ほー、先に魚だけ叩いて混ぜるんだな。こりゃ初めてのタイプだ」
感心しながらなめろうが出来上がる様を眺めていると、ダイニングにいる白石の声が耳に入ってくる。
あいつも怒っちゃ居ねえが、諌める役目だからな……一応お説教ってとこか。
「俺だけに連絡したらダメなんです。専用グループ作ってあるんだから、そこに連絡させてください。俺が伏見にどんだけ陰湿な嫌がらせをされたか、分かってくれました?」
「すまぬ。流石に黄泉の国は久々でな。真幸が住人たちに好かれぬようにと、本気で結界を張っていた故他のことに気が回らなんだ」
「フーン。で、タラシは防げたんですか?」
「半分ほどはな。残りはダメだ、勾玉を渡してきた者たちは術が効かぬ。ヒトガミの守護下に入った事になるらしい」
「ノータイム勾玉渡しは黄泉の国でも有効なのか。マジで保険になってんのかよ……」
白石がどでかいため息をついて、両手で顔を覆い、向かいに座った颯人様は背中が丸まってる。
横に座った星野が、まぁまぁと諌めながら二人を励まして……面白いパターンだな。
鈴村は頬杖をついて、俺たちを含めて全体を見渡し、飛鳥と二人で生暖かい目をしている。軍師殿は高みの見物か。
「真幸、あっちでも勾玉もらったのか?」
「……ハイ。と言うか本気で勾玉の整理しないとまずい。流石にカラーが被りすぎてて、誰のかが分かりづらいんだ」
「油性ペンで名前書いたらいーじゃないですか?」
「勾玉に直で書くのはやめたほうがいい気がします。アリスは相変わらずですね」
「伏見さんにそー言ってもらえると、安心します」
「そう、ですか……」
キッチンにもダイニングにもゆるい笑い声が広がって、穏やかな時間が流れていく。
ガス釜からピー!と音が鳴った。
飯が炊けたようだ。
「お!ご飯も炊けたし、そろそろおかずを並べてもらおうかな」
真幸から手渡され、料理された魚たちをダイニングテーブルに並べる。
「うぉ、すげぇ!こんなにあるのか」
「頭落としてくれてんのありがたいわぁ」
「妃菜は魚のお顔が苦手なのよね。でもほっぺの身は美味しいのよ?別皿にしてくれたみたいだし、食べてみない?」
「食べたいけど顔見なあかんやろ」
「飛鳥が取り分けてやればよいだろう」
「そうしましょう」
「べ、別にそうまでせんでも」
「私がしたいのよ、可愛い奥様に♡」
「目玉でも食わせてやろうか、バカップルめ」
「やめてや!白石……あんたまさか!た、食べるんか?」
「鈴村さん、目玉も美味しいものらしいですよ?私は食べませんが。白石くんは何でも食べるんです」
「食えるものは残さず食うんだよ。星野さんも食え」
なんだかんだ言いながら結局全員でテーブルいっぱいに食べ物を並べ、いつもの位置に座って手を合わせる。
久しぶりに全員が揃い、それぞれが満面の笑みだ。
「いただきます」
真幸の声を皮切りに、声を揃えていただきます、と発してから箸を取る。
俺はなめろうからいただくぜ!
白とピンク色の細かい刺身が油を纏い、薬味と馴染んで味噌と胡麻の香りがぷんぷんしている。それを炊き立ての白米と一緒にかきこむ。
米が美味い。なめろうもうまい。
味噌の味、鯵の旨味、胡麻の香ばしさと紫蘇の清涼感や茗荷独特の香りが鼻に抜けて、生姜の辛さがいいアクセントだ!
噛むたびにいろんな味がしてくる。シャキシャキと聞こえる音まで美味い気がするな。
通常のなめろうは粘りが出るまで叩くものだが、こりゃまた別の意味で旨い。
それぞれの歯応えが楽しくて、口いっぱいにほうばる。
旨い、うますぎる。箸が止まらない。
「鬼一さんなめろう好きなんだねぇ」
「んむ、むぐむぐ」
「そんな目一杯口に詰め込むなよ……芦屋、これ海鼠だろ?酸っぱい匂いがする」
「それは海鼠酢。わかめときゅうりを混ぜてから食べて。
こっちは鯛を揚げたやつ。素揚げだから皮がパリパリしてるよ。タルタルソースもいいけどポン酢がおすすめかな。甘辛く煮付けたのは、ミツバと針生姜と一緒に食べてね」
「海鼠酢は初めてだ。あのブヨブヨがこうなるのか。すげぇ……」
「私も食べてみたいです」
「いいねぇ、星野さん。男は挑戦がモノを言うんだぜ」
「鯛はお刺身にせんの?」
「京都の人はお刺身といえば鯛だもんね。でも、一度冷凍しないと寄生虫が怖いんだ。素人で生食はあんまりお勧めできないから火を通してある。
イカは新鮮だし肉眼でもアニキサスはわかりやすいから、お刺身にした。肝醤油で食べてみて」
「はーなるほど。お刺身は難しいんやな」
「妃菜、これ酸っぱくて美味しいわよ」
「ほん?あ、南蛮漬けやんか。お母はんがよう作ってくれたわ。懐かしいな!」
「ふむ、酢漬けか。試してみよう」
颯人様が鈴村から皿をもらい、赤や黄色のピーマン、玉ねぎと生姜がどっさり入ったつゆに漬かってる小魚を皿に盛った。
「小魚は三度揚げしてるから骨もそのままたべれるよ。お酢は控えめだから、足りない人は足してね」
「ううむ……小魚もよいが、野菜もよい」
「颯人は分かってるなー。南蛮漬けは揚げた魚の出汁が出るから、お野菜も美味しくなるんだ」
「この、海鼠のくにゅくにゅ感は癖になりますね!」
「星野……それうまいのか?」
「初めてたべましたが大変美味です!鬼一さんもいかがですか?」
「俺はいい。好きなだけ食え」
「わかってねーな、ツウは海鼠と日本酒だよ。海鼠酢だと臭みがなくていいぜ。な、伏見」
「すみませんが白石と違って、僕は初見です」
「嘘だろ!?はっ、そういやまだ若いんだった……鬼一は?知ってるよな!?」
「突然話をふるな。海鼠は食ったことがない。見た目が怖いんだよ」
がーん、と音を出しそうなほどに口を開けた白石が星野と二人で海鼠をつつき、酒を煽る。
そもそも滅多に食えるもんでもないと思うが。今やスーパーで売られてるとしてもたまに見かけるくらいだし、チビっとの量で800円くらいする高級品だからな。
俺たちの様子をじっと見ていたアリスが飯を口にして、ふいに涙をこぼす。
「アリス、どした?骨があったか?」
「ううん。お家っていいな、家族って……いいなって実感してたんです。お家に帰ってこられて、安心しちゃいました。真幸さんのおかげですね」
「ん……そう言ってもらえると嬉しい」
泣き笑いのアリスは真幸に涙を拭ってもらってニコニコしている。久しぶりに見た人の姿だが、短かった髪がだいぶ伸びたな。道満と晴明の残した金の飾り紐でそれを結んでいる。心なしか顔つきも精悍だ。
「そういえば紐は二つないとダメか?」
「うん。妖力が強くて抑え切れないんだ。アリスが成長し切るまでは必要だと思う」
「そうなると芦屋さんの縛りが必要ですね」
「そうなんだよなぁ、色々探してはいるんだけどなかなか見つからなくて」
「縛りは緊急で必要だ。我の結界が悉く破られる。黄泉の国では消耗戦だった」
「ごめんて……」
真幸も普段から道満の紐で力を抑えていたからな。颯人様も苦労したようだ。
真幸が何も見つけてないなら、丁度いいだろう。
一通り食事が落ち着いた所で、伏見と白石に視線を受ける。
俺はそれに頷いて、まだ削り出したばかりで木の香りが漂う桐の箱を取り出し、真幸に手渡した。
「え?これなあに?」
「開けてみろ。遅くなったが、俺たちからの独立祝いだ」
「ほぁ、マジですか。ありがとう……」
驚いた顔の真幸が恐る恐る桐の箱を開けた。中には簪が2本。加工に時間がかかって今頃になったが、俺たちみんなからの祝いの品だ。
細身の一本かんざしで、先端に微細な花を透かし彫りにしてある逸品だ。
イケハヤワケノミコトが泣きながら彫ってたな。颯人様の依頼と言い、俺たちの依頼と言い、真幸に手渡すものは手が抜けねぇんだ。
「わー……!綺麗だね。水晶?あっ!中に水が入ってる!?」
「エンハイドロクォーツってんだと。バージンウォーターっていう何万年も前の水が白水晶の中に入ってる。不老長寿の水らしいが、空気に触れると気圧の差であっという間に蒸発しちまうんだ。こいつがあれば力も抑えてくれるし、気力の流れが良くなるとさ」
「颯人様とお揃いですよ。つけて見せてください。お二人のイメージで桜を透かし彫りにしてくれたんです」
「こんな細かい細工、すご……」
「見事だ……言葉にならぬな」
颯人様がかんざしを眺めて微笑み、柘植の櫛を取り出して真幸の髪を梳かしだす。
伏見と言い、颯人様と言い、自分に使うわけじゃなく真幸のために櫛を持ち歩いてるのはなんなんだ。
下ろした髪を半分だけ上げてかんざしを刺し、くるりと回して固定する。
颯人様はかんざしのやり方知ってるのか?器用なもんだ。
「わー!すごい。全然締め付けがないんだな、頭が痛くならなそう。これ、スポッと抜けないの?」
「かんざしは回して捻り留めるもの故外れることはない。
よく似合っているな、其方の美しい黒髪に白水晶が映える」
「んふ、じゃあ颯人にもしてあげるー」
「頼む」
背後に回ろうとした真幸を問答無用で膝に乗せて腰を抱いたままになり、真幸が不満そうな顔をしている。
離そうとしない颯人様の髪を渋々纏めて、揃いの髪型になった。うむ、お似合いだな。
「できたよ。颯人、離して」
「それはできぬ相談だな。アリスに独占されて碌に触れておらぬのだ」
「別に触らなくてもいいだろ」
「食事は終えただろう。我にも充電が必要だと思わぬか?」
「むー。せめて後ろで抱えてくれよ。お茶飲みたいんだが」
「ならぬ」
「なんでだよ!?お茶飲みたいのに」
「我が手ずから飲ませてやる」
「ぐぬぬ……むぅ……まぁいいか」
やれやれ。このやりとりを観るのも久しぶりだ。癒される気がするのは俺たちも慣れちまったからなのか?
「アリス、今日は私と一緒に寝よか」
「そうねぇ、今晩はウチの子になってくれる?練習させてもらわないと。流石の私も小さい子は初めてだから」
「あ、飛鳥!そういうアレなあれは……」
「ふふ……」
「わたし、一人で寝ようかな」
「あ、あかん!アリスとお話ししたいんやから。真幸のとこばっかで寂しかったんやで!」
「妃菜ちゃんが言うなら……ハイ」
「そうして!飛鳥は変なこと言うのやめーや」
「どうして?いつ出来てもおかしくないもの。お勉強が間に合うといいけど」
「飛鳥っ!!」
なるほど、鈴村のとこは正しくバカップルしてるな。ウチはなんでも明け透けだからな。
俺は見てない、聞いてないぞ。
「進展あり、と。メモメモ。先に言っとくが、産休申請は早めにしてくれよな」
「そうですね。今年の学生たちも順調に育ってますし、我々の隠居も近いですねぇ」
「うちは二人目で打ち止めですよ。芦屋さんはいつになるでしょうねぇー。僕の子に名付けてくださったんですから、お子さんができたら一緒に考えたいですね」
颯人様に抱きしめられたまま、真幸が真っ赤な顔になる。
いつものパターンとはいえ、星野も思い切ったな。
「俺は!相棒だから!!そういうあれはあれで!!!」
「誰も颯人さんとの子だって言ってねぇぞ。落ち着け」
「…………………………………………」
「白石、其方は優秀だ。褒めて遣わす」
「ハイハイ、そりゃどーも。んじゃ風呂行ってこい。よーく考えて行動してくれな。そこのバカップルは風呂で慎めよ?」
「し、し……白石のバカっ!!」
「アンタ!何アホなこと言うてんの!?」
……こりゃ新しいパターンだな。わかっちゃいるが、「恋人になるかどうかはわからん」ってのはもう苦しいだろうなぁ。俺も……楽しみにしちまってる。
さて、片付けを始めるか。真っ赤に染まった女神と仙女がピーピー怒ってんな。ひとしきり文句言ってスッキリしたのか、それぞれが風呂に向かって行った。
姿が見えなくなるまで見送った白石が『うむ』と頷き、男共で顔を突き合わせる。
「感度はどうですか」
「ん、よし。迷いの杜の阻害があるから地図は出ないが、この通りばっちりだ」
白石が差し出したスマホのアプリに、二つの点と⭐︎在宅中の文字が表示される。
「GPSではないし、高天原でも黄泉の国でも作動するはずですね」
「そうだな。阻害術無効の結界は天照と月読の助けで完璧だし、これで見失うことはないだろう。
かんざしをつけてる間は人間への認識阻害術も自動で発動するし、手間が省けるぜ」
白石、伏見がニヤリと嗤い、俺はなんともいえない気持ちになってしまう。星野も微妙な顔つきだ。
「これで安心材料が増えましたね。イケハヤワケノミコト殿にお礼を差し上げなければ。何かありませんか、鬼一」
「……新しい宝飾品依頼が欲しいって言ってたな。うちの相棒は宝飾品作りにハマっちまったんだ」
「僕もかんざしに変えたいので、後ほど依頼させていただきます」
「そりゃいいな、芦屋への目眩しになるだろ。俺は神ゴムみたいなのが欲しいぜ。それか四次元ポケットみたいな物がありゃいいんだが」
「あとは電子機器類にも詳しくなって欲しいですよねぇ。盗聴機器とか、監視カメラとか」
「伏見、ストーカーはやめてくれ」
「将門殿にも相談するしかないだろ、それは。流石にうちの神様には手が余る。電子機器は知らんが、得意そうな奴に相談しておく」
「皆さんすっかりセコム化しましたね。私は複雑な気持ちです。
自由にさせてあげたいですが……この一週間は本当に堪えましたし、何とも言えません」
星野が言う通り、俺たちは結構参ってる。心身ともにくたびれ果ててんだ。
真幸を信じているとしても、心配なのは変わらん。目印をつけてそれを減らそうってんで、ウチの神様に頼んでかんざしを作ってもらったんだ。
まさかこんな測ったようなタイミングになるとは思いもしなかったが。
祝いの品が位置情報を発信するための物だってのは、今回の事件で秘される事になっちまった。
「しようがねぇな、芦屋は目の前の問題を片付けるまでは他に目が行かないんだ。今回はきつい仕事だったし余計そうだろう……はぁ」
「はぁ……ともあれ、これで一件落着ですよ。しばらくは安心できます。多分」
「星の動きは落ち着かんが、様子見だな……はぁ……」
「そうですね。何も起こらないことを祈りましょう……はあぁ……」
四人で頷き、ため息合戦になっちまった。俺もようやくぐっすり眠れる。
寝不足ってのはメンタルに響くんだよな、きっちり寝て、明日も仕事を頑張るぜ。
ここにいる全員が同じこと考えてるのがわかる。苦笑いしながら、全員で安堵のため息をもう一度落とした。
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