第9話 初めての休日 その2


 参拝を終えて、よし。と呟く。

 

 賽銭箱の横を抜け、本殿両脇にある酒樽と大きな提灯型の御神灯ごしんとうが壁みたいに積み重ねられてるのを眺めながら、小さな階段を登って白い神前幕しんぜんまくの下をくぐる。短いのれんみたいな感じだなぁ。紙垂や房が飾られていて、平安時代のお姫様の部屋みたいな感じだ。これも簡易的な結界だな。神社の中は細かい結界がいくつも張られていて、神様の祀られた場所は大切に守られているようだ。


「お、お邪魔しまーす」


 磨き抜かれた床板をこわごわ踏み締め、本殿の中に入るとお香のいい香りが漂ってくる。

 これ、颯人と同じ白檀の香りだ。

 


  

 部屋全体を囲んで御簾みすが垂らされて、外からふんわり日差しが差し込んでいる。中は結構明るいな。御簾って日除けなのか?すだれみたいな使い方なんだな…。

 カラフルな布が壁にたくさん飾られてるのはなんだろう…そこらじゅうにほわほわと神力が漂っていて、初めて見るものばっかりだ。

 

 室内の奥に黒い祭壇がある。金の縁取りが重厚に飾られた筐体の前に、いろんなお供物そなえものが置いてあって、両脇のぼんぼりに火が灯されている。

 お雛様の段が黒くなって飾り気がなくなった感じかな…一般的なお仏壇とあまり雰囲気は変わらないけど、かなり重厚な空気感がある。

 

 四方には白虎、朱雀、玄武、青龍と毛筆で書いたお札が掲げられて…四神結界が張られてる。とても清らかな空気で満ちて、室内なのにそよそよ風が吹いてる。

 すごい、なんか凄い。それしか出てこない。神職さん達が見てる景色はこんな感じなのか…。


   


「真幸、早う奥へ来い」

「颯人はそこに座るのか…そして誰?」

「あっ!やっと会えたわ!初めましてぇぇーーー!」

「ごふっ!」


 祭壇を背にしてあぐらをかいて座ってる颯人と魚彦。

 颯人の横に座ってた人が立ち上がり、ガシッと掴みかかってくる。

 なんなの!?どちら様!?タックルやめてくんない?!


 

「飛鳥…我のばでぃに触れるな」

「良いじゃないのっ!ケチ!真幸くんっていうんでしょ!アタシ飛鳥って言うのよぉ〜ん!」

「えっ、まさか飛鳥大神アスカオオカミ…?」

「そーおー!やーん、この子可愛いっ!」


 飛鳥さんはオネェ系なんだな。そうか、なるほど、うん……。颯人によく似た風貌だが目の吊り上がりは颯人よりきつめ。ニコニコ人の良さそうな顔が間近で微笑む。

 紛うことなき男神だ。筋肉がすごい。



 

「ねー!真幸クン随分見ない間にステキになったじゃない!?」

「はぇ?あ、そうか颯人が降りる時に見てたんですか?」

 

「そうよぉ!タメ語で呼び捨てにしてちょうだいね。渋ってるからアタシが無理やり降ろそうとしたら、あなたが来たの。

 それとも…颯人が呼んだのかしらね。こうして近くで見ているとついて行きたくなっちゃうわ♪ほっぺ柔らかい♡」

 

「い、いえ…あの今日はそう言うのではなくて…神様なのにカタカナいけるのか…」


「飛鳥」



 ふぉ…冷たい気配。颯人の目つきが鋭い。鬼一さんの刃を止めた時と同じ顔してる…。


「おーこわっ。じゃ私は結界の方に回るから、頑張ってね♡」

「は、はい…」


 飛鳥の額から冷や汗が一筋流れるのが目に入る。颯人…激おこか?




 

「颯人…悋気を起こすな。飛鳥は其方の眷属じゃろう」

「眷属であってそうではない。彼奴…我と好みが似ておるのだ」

「めんどくさいのぅ。真幸、頭でも撫でてやっとくれ。イライラされては敵わん」

「えぇ…?」

 

 魚彦が胡座の上に片肘をついて心底だるそうにしてる。

 颯人はまだピリピリしてるな。しゃーなし。

 颯人の前に座って、頭をぐりぐり撫でてやる。ツヤッツヤの黒髪は芯があるけど柔らかくて手触りがいい。俺もこのくらいの毛量が欲しいな、羨ましい。


 

「飛鳥は我よりも神格が下なのだ」

「下とか上とか言わないの。同じ神様だし神社が一緒なんだから仲良くして。」

 

「我の真幸に触れるなど…」

「男同士?なんだから良いだろ?バディは最初から颯人だ。俺たちは唯一無二だろ?」

「うむ…」


 頭をひとしきり撫でると、颯人の目線が緩んで、ふっとため息を落とす。

 落ち着いたかな?


 


「……武器をれべるあっぷして早う帰ろう。そこへ並べよ」

「はいよー」

 

 まだちょっと苦い顔してるけど、納得はした感じかな。

 ポケットに忍ばせた神楽鈴と檜扇、鈴矛を取り出して三宝さんぽうと呼ばれる木の箱に置く。

 これは鏡餅なんかが置いてあるのが有名だけど、神社では奉納するものを置いたりする役割なんだ。生木で作られていて、木のいい香りがする。

 

 武器武器言ってるけどこれは正しく神器だからこう言う扱いなのか…ポッケに突っ込んでたけど改めた方がいいかも。



 

 

「よいか、この先何が起きても瞼を閉じてはならぬ。また、場を辞してもならぬ。

 我は共にゆけぬのだ。必ずこれを守れ。わかったな?」

「う、うん…」 

 いつになく真剣な顔の颯人に気圧されながらも頷いて、正座で座りなおした。



  


 祭壇に武器を供えて颯人が柏手を打つ。


 パァン!と打ち合わさった手から波動のように大きな風が起こり、バタバタと御簾が風に靡いて揺れている。

 わー、すごい…。一度しか合わせていないはずが手のひらから幾重にも振動が伝わり、ひんやり冷えた清浄な空気が追いかけるように広がっていく。


 背筋を伸ばし、柏手を打ったまま微動だにしない颯人に違和感を覚える。

 目を閉じちゃダメってことは、祝詞と同じか?何が起こるんだろう?

 颯人を眺めたまま違和感の正体に気づいた。

 

 

 時が、止まっている。 

 風に広がった颯人の髪がそのままだ。魚彦がぴくりともしないし、風に靡いた御簾が固まってる。

 わー、そういう感じかー。



  


「其方は嘘を吐いてはならぬ」

「其方は返事に窮してはならぬ」

「其方は必ず答えねばならぬ」

 

 颯人の背中から、三人の子供がするりと姿を表す。あの、すっぽんぽんなんだが…寒くないか?三人共俺の目の前にあぐらを描いて座った。

 みんなおかっぱで大きな目をしてる。ほっぺと唇が赤い。日本人形のような見た目だ。…可愛いな。

 


「「「よいな」」」

 

「はい」


 

「其方はこの国が好きか?」

「はい」

「本当は嫌いだろう?」

「はい」

「ふむ…賢いな」


 ふふ。好きなところも嫌いなところもあるからそうなるな。

 真ん中の子が立ち上がり、じいっと俺の目を見てくる。なんとなくだけど、俺は何か試されてるのかな。

 レベルアップのための試験って感じみたいだ。

 

 目が触れそうなほど近くに顔が近づき、奥の奥まで覗かれている。

 綺麗な瞳の色…夜の海のように黒が揺れて揺蕩う様子がわかる。

 じっと覗かれているままに任せて、その色に応える。

 俺は、こんな人間ですよ。汚いところもたくさんあるんだ、清い依代じゃなくてごめんな。

 



「金が欲しいか」

「はい」

「命が惜しいか」

「はい」

「金をやるなら、陰陽師をやめるか?」

「いいえ」


 うん、お金も欲しいんだ。

 颯人と魚彦の酒代が欲しい。

 ふかふかのお布団で寝て、美味しいご飯を作って、あったかいお風呂に入れてあげたい。それしか俺にはできないから。

 俺が本当に欲しいのはお金だけじゃない。お金では買えない物、生きる意味が欲しい。

 

 俺は自分のために仕事をしている。

 それが結果として誰かのためになる仕事だと思ってるから、自分の意思で自分のために働いてるんだ。


 誰かのせいにする癖とは決別したいから、そう思っていたい。


  


「颯人は好きか」

「好きですよ」

「魚彦よりもか?」

「比べる物じゃないと思います」

 

「小賢しい…お前は何のために生きる。生きる意味を欲するのは何故だ?」

 

「俺は碌でもない過去を持っています。でも、何もかもを見ずに諦めるのはもうやめました。俺ができることがあるはずだ。それを達成するために颯人と一緒に生きて、働いて、命ある限りこの仕事をさせてもらいます。」

 

「…この先、颯人と別れることがあってもそれが揺らがぬのか?」


「揺らぎたくはないのでそうならないように努力します」


「人の力でそれがなせるとでも?」


 ふ、と思わず笑ってしまう。言葉が強めなのに、顔が明らかに『心配なんだけど』って書いてあるんだもん。

 可愛すぎる。


 


「人間は矮小で非力な存在ですが、俺には颯人がいる。たとえ颯人が離れても、心はきっとそばにいる。そうできるように強くなります。

 あなた達も力を貸してくれるんでしょう?三人いるってことはおそらく三種の神器なんだろうなと思ってます」


 俺の顔から離れて、三人が身を寄せ合いこくりと頷く。



 

「其方はまだ半人前なのだ」

「其方は悲しい思いをする」

「颯人も悲しい思いをする」

「「「それが怖い」」」


 しょんぼり項垂れた子達を見て、なんとなく何がしたいのかがわかった。

 颯人は自分の大切なものを俺に渡そうとしてる。

 これから先何かが起こるんだ。俺と、颯人が離れなければならないような事が。

 レベルアップしてしまうとその先の出来事に近づくから、怖いんだな。

 差し詰めここがセーブポイントってとこか。



 

「俺もちょっと怖いな。ずっと一緒にいてくれる颯人と離れたくないし。寂しがりになっちゃったから、想像するのもキツい気がする」

 

「そうだろう?やめてもよいぞ」

 

「それはダメだ。颯人は迷ってない。君たちが知っているなら颯人もわかってるんだろう?それでもその先へ歩を進めようとしている。俺はバディだから、その意思を反故にはできないよ。

 颯人がそう決めたなら、俺が決めたのと同じだから、やめない。」


「本当にか?痛い思いをするのだぞ?」

「うん、いいよ。颯人は俺が生きていく先を見たいと言った。俺も、そうしたいんだ。同じものを見て、肩を並べて颯人と一緒にいたい」


「そうか…わかった」


 

 

 子供達が手を繋ぎ、白い光を湛えて眩い光を放つ。

 真っ白に染まった後それぞれが透明な勾玉、一振りの短刀、そして鏡に変わる。

 

 颯人の長い髪がしゅるっと抜けて、勾玉に結びつく。

 …結構抜けたけど禿げないよな?

 

八尺瓊勾玉やさかにのまがたま草薙の剣くさなぎのけん八咫鏡やたかがみかな」

 

「「「そうだ。まだ、真の姿ではない。我らも其方が好きだ。颯人と同じく真幸を唯一無二の存在として認めている。

 颯人を、頼む。大切にしてくれ」」」

 

「はい。確かに承りました」


 


 真っ白な光が輝きを増して、辺りを包んでいく。

 少し前から俺の目はカッピカピなんだが大丈夫かなぁ。いてて…。


 光が収束すると、颯人の髪がパサっと体に沿った。すいっと振り向き、その手に三つの神器を抱えている。



 


「瞬きしてもよいぞ。れべるあっぷは叶った」

「そうかい。よかったな…あいてて。目が乾いた」

「すまぬ。我の神器が問答をさせろと聞かなくてな」

「いいよ。なんか…うん。嬉しかった」


 ハテナマークを浮かべて、颯人が目の前に座る。さっきの子みたいに顔を近づけてくる。

 あぁ、そっくりだな。おんなじ目の色してる。



 

「颯人の大切な何かなんだろ?武器って言ってるけどそれは三種の神器だし。俺なんかに渡していいのか?」

「ばでぃに渡さずどうする。我は他にばでぃを作る気はない。真幸の他にはいらぬ」

 

「そうか?俺もだから一緒だな」

「あぁ。…もう一度真幸にこれらを下す。勾玉は飲め。剣は鈴矛のように使えばよい。鏡は手に持てば扇に変わる。姿形も、さいずも真幸の心で変化する」


 へー…ん?ちょっと待って…。


「飲む??」

「そうだ。さぁ、口を開けろ」

 

 

「まてまてまてまて!それ颯人の髪の毛ついてるだろ!?ネックレス的なアレじゃないの!?」

「違う。体内に入れるのだ。飲め。さぁさぁ」

「いやっ!やめてっ!!アーッ!!!」


 ━━━━━━




 

けがされた気分なんだが」

「汚してなどおらぬ。体内からも常に浄められておろうに」

「はー、やれやれ。困ったもんじゃな…」


 髪の毛ごと勾玉飲まされてりゃ汚された気にもなるだろ!うえっぷ。

 流石に颯人のものだとはいえ…毛はちょっと…うっぷ。


 

 

「真幸、勾玉は神の魂のようなものじゃ。まぁ普通はねっくれすのようにすれば良いのだが」

「魚彦!しっ!!」

「おおぃ、颯人…なんで飲ませたんだ…」

 

「我の魂だぞ?外にぶらぶらされてはかなわぬ」

「真幸、飲んでしまっては仕方ない。別に腹を下すわけでもなし、既成事実はどうにもなるまい。ワシのようにな」


「ぐぬぬ…」

「さて、れべるあっぷも叶ったことだしワシからもこれを与えよう」



 

 魚彦も立ち上がって、床に突っ伏してる俺の首に勾玉を下げてくる。

 魚彦の勾玉は水色なんだな…乳白色に近い色がころん、と胸の上に転がった。

 はーい、魂二つ目いただきましたー。

 

「って!なんでだ!?どうしてっ!?」

「神器は一柱のみしか与えられぬ。勾玉は飲んでもよいんじゃがのう」

「ならん。我の勾玉だけでよい」

 

「ふ…今のところはそうしてくれよう。」

「ぬう…そういう事じゃないだろぉ…」


 

 勾玉に通された黒髪は細い三つ編みになってる。かなりキツく編んであるから、ぱっと見は黒い組紐みたいだ。

 海外では人毛アクセサリーとして19世紀ごろにメジャーだったらしいけど、確かにこうして見てるとツヤツヤして綺麗だな。

 でも先っぽについてるの魂だよね?なんでホイホイ俺に渡すんだ???



 

「さて、目的は達した事じゃし、そろそろ陽が落ちてくるぞ。棲家に帰ろう」

「うーんうーん…なんでこうなるんだ。俺に拒否権はないのか」

「「ない」」


 

 二人にきっぱり言われて、しょんもりと冷たい床に顔を押し付ける。

 

 艶々ピカピカの磨き抜かれた床。

 大切にされた社の中で、俺はでっかいため息を落とすのだった。


 ━━━━━━

 


「さっむ」

「橋の上は風が冷たいのう…わーぷでええじゃろに…老骨に染みるわい」

「ごめんて。もうちょっとしたらワープしてもらうから付き合ってくれよ」

「仕方ないのう」


  

 魚彦に文句を言われながら、素盞嗚神社を後にして京成千住大橋駅方面に向かう。

 

 この辺りの様子を見ておきたいから歩くことにしたんだ。

 相変わらず気温がおかしいなぁ…。

 雨が降ってないのに凍えるような寒さ。道を行き交う人たちはみんな真冬のコートを着てる。

 


 薄緑色の鉄骨でできた千住大橋を渡り切ると、舗装された道路が突然でこぼこし始めた。

 この辺り一帯までが神社の氏子区域か。

 大きな看板に隅田川の文字が書かれていて、それは大きくひしゃげて地面に倒れている。

 隅田川を渡り切るまでは綺麗になっていた道路が跡形もなく消えてめくり上がり、建物が多く倒壊していた。



 天変地異の影響がまだ、色濃く残っている。

 無事だった区域は神様に守られている氏子区域。赤城山もそうだった。

 それぞれの神社に守られていない場所はこうして見るも無惨に荒れ果てている。

 少し前まで謎だったけど、祠達を壊して始まった天変地異は間違いなく俺たちの管轄なんだと改めて思う。

 

 素盞嗚神社が守ってくれた隅田川は江戸川のように氾濫していない。多少の隆起のみに抑えられていて、氏子地域との差が目に見えてわかる。

 守られたもの、守られなかったものはこの境界線でくっきりと区切られていた。

 誰が見ても明らかな原因なのに、それが広まっていないとすれば…情報統制をして居るのかもしれないな。

 

 神様達はこれを見てどう思うんだろう。人間は、これを見てどう思うんだろう。ここに善と悪が持ち込まれる事がわかるから…俺は少し怖い気持ちになった。

 



 

「神様はいつも…俺たちを守ってくれているんだな」

 

「手の届かぬ場所もある、このように」

「そうだな…でも、これは俺達人間が仕事をするべきところだ。神様が気に病むことはないよ。そもそもこれが起きた原因は、人間が作ったんだ」


  

「神を励ますとは。真幸もなかなかやるのう。これを見に来たのか?」

 

「ううん、違う。俺と颯人が出会ったここを…もう一度見ておくべきだと思ったんだ。

 俺に誑かされた颯人が、自分の命を俺に預けるなんてさ。恐れ多くて整理がついてないんだよ。」



 

 千住大橋を振り返り、そこを眺める。

 素盞嗚神社の力がだんだん弱くなっている境界線の縁はアスファルトがめくれて土が出て、川中の一部が盛り上がっている。

 笹の葉がついたままの枝が…しめ縄が颯人が降りてきた当時のそのままの姿で残されていた。


「真幸がここに来たのは、飛鳥の言う通り我が願ったからだ」

「そうなのか?」


 川に反射した沈む夕陽の光を、その目にたたえて颯人が微笑む。


 


「我は、こう願った。我が心から信頼し、心から愛せるものを遣せと。あの小娘では嫌だった」

「ほーん。なんでだ?可愛い子だったろ?俺よりは少なくとも好みだったんじゃないか?」


 颯人がジャケットを脱いで俺に被せてくる。お前が寒いだろ。彼女にするようなことすんなし。



 

「あれは、自分の命を差し出すと言った。我はそのような自己犠牲の精神は好まぬ。我と共に立ち、我と同じものを見て欲しい。そして、それは真幸が叶えている。満足だ」

「そ、そうかい。そりゃ良かったよ」


 いつものセリフを吐いて、重なったジャケットの暖かさがくすぐったくて、身を捩る。

 魚彦は切なそうに顔を歪めた。


 


「星野ではないが羨ましいのう。ワシもそうなりたかった…鈴村は…元気かな」

「明日にでも伏見さんに聞いてみよう。魚彦も緊急措置って言ったって仲間なんだから。仲良くしような」

 

「うん…そうじゃな」


 みんなで颯人の降り立った地を眺め、いろんな気持ちが浮かんでくる。

 悲しい気持ちになるような事は、早く終わらせないと。俺が仕事をしていけばきっとそれがなくなる。一生懸命頑張ろう。

 

 ここが俺の、俺たちの始まりの地だ。

 またここに来る時は…きっとみんなの笑顔と一緒だな。

 


 

 

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