第2話 裏公務員始めました その2
現時刻 16:00。俺はようやく縄を解かれて裏公務員の部署に案内されている。
スタスタ歩く糸目さんに連れられて、エレベーターに乗って地下3Fまで一気に下っている最中だ。
と言うか役所に地下のフロアが存在すること自体知らなかったな。エレベーターのボタンが隠されてて一般職員には使えなくしているみたいだ。
今更ながらに裏公務員の特殊な扱いに気づく。
流石に数年勤めていて同じ庁舎で見たことも聞いたこともないなんておかしい。
でも隅田川でぷらっと出会ったおじいちゃんが知っていたくらいだし……うーん…どう言う事なんだか訳がわからん。
「これは『えすかれぇたぁ』と言う物だったか?」
首を傾げていると颯人が顔の真横からエレベーターのボタンを覗き込んでくる。
なんか距離感が近いなこいつ。
人懐っこいのかな。あっけらかんとした様子に悩んでいるのがアホらしくなってきた。
「これはエレベーター。エスカレーターは動く階段の方だよ」
「ぬ…ややこしい。似たような名をつけるでない」
「俺がつけたんじゃないよ。そもそも神様なのに横文字いけるのか?」
「我は神として人の世を観る役割がある。故に、新しい学びはよいものだ」
「ふーん?颯人なんて神様いたかな…俺もまだモグリって事かな…」
「ふ…」
何で含み笑いしてんだよ。今日は身の回りに変な奴ばっかりだ。
「到着しました。裏公務員・陰陽師課へようこそ。」
「ど、どうも…」
糸目の人がエレベーターから降りて、手のひらで扉を押さえてくれる。イケメンムーブだな。
エレベーターから足を踏み出すと、そこは…。
「煙っ!タバコ…?」
「ふん、まぁ陰陽師ならそうなる。あれは魔除けだからな」
部屋中に漂うタバコの煙。排出しきれないそれが白く霞のように部屋の中に蔓延している。タバコって魔除けなの?それも知らんかった。
スモーキングフリーとは…やったぜ。
「すみませんね、これから夜間の部が始まりますのでみんな魔除けをしています。芦屋さんは…」
「喫煙者です!」
「でしたら問題ないでしょう。こちらへ」
てくてく部署内を歩いて、奥の小さな部屋に招かれる。
うーんこの、なんとも言えない雰囲気。
部署にいる人たちは全員スーツ姿で、顔に疲労が滲んでいる。そこからジトッとした視線が纏わりついて来る。
古い刑事ドラマのワンシーンみたいだ。
それを振り切って小部屋に入り、『座ってくれ』と言われるままに小さなソファーに腰掛けた。
糸目さんが壁に設置された本棚から書類を取り出して目の前の机に置き、向かい側のソファーに座って姿勢を正す。
「私は裏公務員・陰陽師課、管理事務の
「担当…?と言うか俺何にも知らないし、何なら神様とか依代やらも良くわかってないんですけど」
「私があなたの担当事務という事です。お身内に陰陽師の祖先がいたりとかしませんか?」
「さぁ…わかんないです」
ここに配属されるって事はそう言う人が多いんだろうか。何もかも知っているのが前提らしい。『なるほど』と呟いた伏見さんは苦笑いになった。
「苗字はたまたまでしたか。
ウチの課は神様の依代達で構成されており、
業務内容は主に、妖怪・アラガミの退治や
「……はぁ」
すごい、伏見さんの説明では何にもわかんない。当然のように言ってるけど単語自体で理解できたのは建立だけなんだが。俺は大工さんにでもなるのか?
神様とバディ組んで仕事するってこと?妖怪って存在するの?アラガミってなに?
陰陽師は現存してたのか。
超常的なモノが大前提として存在するとか、ファンタジー世界に転生でもした?
「ふん、伏見とやらは
「颯人はそう言うのわかるのか?ご飯の神様だったっけ」
「ウカノミタマノオオカミは元々稲作の神だが、狐を使う」
「ウカノミタマノオオカミ、ねぇ。狐さんかぁ…伏見さんが糸目だからかな」
俺と颯人で話していたら、ガタッと音を立ててご本人が立ち上がる。わー、そんなに目開くんだねー。すごーい。糸目って言ったから怒ったのかな。ごめんよ。
「な、なぜ我が神の名を!?」
「へ?」
「我が位の高い神だからに決まっておろう。現代の陰陽師はあほぅなのか」
「管理事務さんも陰陽師って事か」
「そうだろうな。まぁまぁの力がある」
颯人が目を細め、伏見さんを見つめてニタリと嗤った。
「あの…颯人様は何と?」
「えっ?声聞こえないんですか?」
「すみません、私の力不足です。位の高い神様のお言葉は、全て古い大和言葉に聞こえるので理解に及ばないのです。」
「はーなるほど……えっ?俺何でわかるんだ?そんなの知らんけど」
颯人は欠伸をしていて答えない。
めんどくさそうな顔をして目を閉じてしまった。
「芦屋さんが颯人様と依代の契約をしたので、理解できていると推測しますが…通常ではあり得ない事です。
『颯人』と仰る名称は恐らく正式な神名ではありませんし、現段階では何とも言えませんね」
「ですよねー。て言うかなんかすいません、偉そうな神様で」
「いえ……話を進めましょう。
我々の所属は警察や自衛隊と同じになります。国家公務員として国に仕え、働く人たちの集まりです」
「国家公務員!?」
待ってー!国家公務員なの!?俺めちゃくちゃ昇進???したじゃん。
えっ、ラッキー??
「国家公務員というのは国の公僕ですよ。あなたは公僕の名の通り命を賭してこの国を守る役割を持つんです。
裏公務員は世間から秘匿されていますし、喜ぶような事ばかりではありません」
「す、すいません…」
伏見さんに嗜められて、しょんぼりしてしまう。
だってさ、さっきまで地方公務員でさ。クビになってどうしよう、お酒でも飲んでしまえ!な男だったんだもん。
ちょっとはしゃいじゃっても仕方ないと思うんだが。ちぇ。
「その辺はおいおい自覚を持てるでしょう。明日から先輩について実務になりますから、マニュアルと仕組みを頭に叩き込んで来てください。
それから、先ほど仰った…我が神の名は颯人様が見破られましたか?」
「え?は、はい。」
「そうですか…と言うことは私の神よりも神格が上の神様という事ですね。教育役は組み替えますので明日紹介します。
衣服は配給となりますので、マンションのクローゼットにあるスーツ一色と玄関にある革靴を使ってください。
決まった休日、長期休暇はありませんが教育役から外れれば好きに休養しても構いません。
我々あずかりからの連絡は、こちらのスマートフォンに専用メッセージアプリから送信されます。お渡ししておきますね」
「は、はい…」
「細かい質問は全て教育役にして下さい。
明日の出勤時に契約書に署名と印鑑、遺書を提出できるように今晩ご用意をお願いします」
「わかり…ました」
うーむ…伏見さんってだーいぶ事務的。管理事務って言ってたしそんなもんなのかな。気楽に質問できる雰囲気じゃないなぁ。
矢継ぎ早に言われて、戸惑いながらスマートフォンと書類を受け取る。
国家公務員、公僕、休みがない、契約書と遺書を書く。頭の中のメモに書き記す。
なかなかの内容だ。
「出勤時間はマニュアルに書いてありますが教育役がつく研修中のみ適用です。
給料と歩合があり、残業代はそこに含まれます。また、陰陽師課に所属する者は全て依代の人間しかおりませんが、普通他人の神名はわからないものです。
軽々しく口にせず、言いふらさないようにして下さい」
「はい…」
「一旦これで説明は終わりますが…簡単になら質問を承りますよ」
伏見さんの細い目がさらに細くなり、冷たい視線をよこしてる気がする。
やだなー、こういうの…俺やっていけるのかな。公務員になりたての頃を思い出してしまうぞ。でも質問していいならしておこう。背に腹はかえられぬ、だ。
「陰陽師って事は戦闘するってことですか?映画とかみたいに」
「大体がそうなります」
「大体…そうならない事もあるんです?」
「すべては個人に任されておりますから。どう戦うか、どう収めるかは陰陽師次第です。助太刀以外の横槍は厳禁ですよ」
「その陰陽師について何にも知らないのに明日から実務ができますかね?」
「そのように教育できる者をつけます」
「武器とかあるんですか?」
「通常戦闘は神がされる場合が多いです。武器はこちらからお渡しするのではなく、神が下さる場合が多いかと」
ふーむ。アニメで言うところの陰陽師だと使役する何かが居るんだよな、それこそ妖怪とか小さい神様とか…なんか法術を使ったりとか。魔法使いみたいにさ。
武器があったとして俺、使えないよ。
武術の心得なんかないし、法術ってどうやって使うんだ?
そこがわからないとどうにもならないな…。どう質問したらいいのかわからなさすぎて頭の中がぐるぐるして来た。
「では、これでよろしいですか?私も仕事がまだありまして」
「はぁ…はい」
よくない!冷たいよ!ホントに!
なんなの!!冷たいっ!
結局何が分からないのかも分からないままソファーから立ち上がる。
俺はまたもや紙の封筒を手渡され、事務室を後にするのだった。
━━━━━━
「しゅごい。ピカピカ高級マンションだ」
「…なんだその…しゅごいというのは。面妖な言葉を使うのだな」
「面妖なのは颯人だろ。とりあえず行こうぜー。えーと、703号室だから70階?うわ、エレベーターのボタン多い」
「またえれべぇたぁか。つまらぬ」
「うっさいな…あ、あったあった。」
豪奢なマンション。聳え立つ高いそれに登っていくエレベーター。
追い出されるように役所を後にして、もらった地図を頼りに与えられたマンションへやって来た。
エレベーター、でかい。
ボタンがすごい数ついていて自分の行き先すら一目でわからないほどだ。
建物の入口にはコンシェルジュさんもいたし、いろんな意味でこんなに高い建物に住む事になろうとは…。家賃タダでよかった。
エレベーターが止まり、七十階に到着する。
うわ、見ろ!人がゴミのよう…その言い方はダメだ、よくない。やめやめ。
頭をブンブン振って、廊下を歩く。
ガラス張りの渡り廊下を歩き、703号室とプレートのついたでかいドアを開いて中に入る。
支給されたスマホが鍵とは。スマホが壊れたらどーすんだこれ…。あとで聞くしかないな。
部屋の中にはだだっ広い玄関があり、段ボールが四つ重ねてある。
俺の荷物だよなこれ、もう届いてるの怖いんですけど。
もともと荷物が少ないやもめ生活だったとは言え、他人に元住処に入られて段ボールに詰められたのはちょっと微妙な気持ちだ。これも後にしよ。
まずは新居のルームツアーだな。
長い廊下に繋がった部屋が複数あり、全体的にシックな木目調でまとめられた、いかにも高級マンションな造り。
一番手前のリビングダイニングにはすでに家具が置かれてる。大きめのダイニングテーブルと複数の椅子、ふかふかソファーに、観葉植物、テレビ……でかっ。
さてさて、お次はここが浴室…わー、ドラム式洗濯機って乾燥機ついてるの?…トイレはウォシュレットついてる。
風呂もでっか!ホテルか!?
スタスタ歩いて廊下の奥へ。ここは寝室か…。やたらでかいベッドと寝具、間接照明と加湿器が備えてある。
他にも部屋があるけど…二人暮らしにはかなり広いお家だ。
「至れり尽くせりゴージャスハウス!」
「ふむ、布団は一つか。同衾とは粋な計らいだな」
「は?何言ってんの?」
颯人が寝室のベッドに腰掛け、ギシギシ揺らしてる。
「音がする。敷物を変えた方が良いのではないか」
「何で?寝るだけの場所、そんな揺らすことないだろ?」
「ふん…分からぬぞ?さてさて、まずは食事の時間としよう。腹が減った」
「神様ご飯食べるの??」
「食うし寝るし酒も飲む。
「はぁ???俺が作るの???」
まだベッドを揺らしてる颯人が不満気に顰め面してる。
意味わからん。今日は意味わからんことだらけだ。
きゅるるる、と可愛い音が聞こえた。
神様もお腹空くのか!お腹が鳴くほどぺこぺこなのかな。
颯人に上目遣いで服の裾を掴まれて、謎の母性本能がくすぐられた。
顔がいい!!くそぅ…。
「…腹が減った」
「あーもう!わかったよ。簡単なものしかできないからな」
「腹に入れば何でもよい」
「へいへい」
ビジネスバッグから伏見さんにもらった封筒だけ取り出し、リビングダイニングに戻る事にした。
━━━━━━
「うーむ、なるほど…」
「………」
「神下ろしはそもそも霊力のある人だけ出来るのか。もしかしてモヤモヤが見えてたのってそれが原因なのかな。
陰陽師として戦うってのは確定、神様が神力を分けて、摩訶不思議アドベンチャーが仕事ってことね」
「………………」
「トゥイッターの噂だった、祠が壊れて日本がおかしくなったってのは事実なのか。
神様が下りると自身の能力が完全に目覚めます…ほうほう」
「…………………………おい」
現時刻、18:30。ソファーに座って、くたびれたスーツ姿のままテレビにDVDを突っ込んで勉強中。
伏見さん、マニュアルはDVDもあるって言ってくれよ。あの人説明足りなさすぎじゃない?
集中してるのに颯人が服の袖を引っ張ってくる。
「今忙しいから後で。ほん、結界とかあんのか…
「我を放っててれび鑑賞とは、どういうつもりだ」
あーもう!颯人が耳元で喋るもんだからこそばゆくて仕方ない。
「颯人こそどういうつもりなんだよ。ソファーが向かいにあるのに横座るな。あっち行け。」
「つれないな…お前が我を降ろす時に言っただろう。恋に落ちてちゅうすると」
颯人の口から驚きの単語がまろび出て来て、びっくりしてしまう。
「まさかそれを真に受けて、俺んとこに来たの?」
「そうだ」
「俺男だけど」
「知っている。神に伴侶の性別区分はない。少々もさく、しょっぱい雰囲気のパッとしない男だが仕方あるまい」
「どうせパッとしないよ。悪かったな。カッコ良くはなりたいがよく分からんの。ちなみに俺は男と恋する趣味はない」
「我とて固い肉の男など好みではない。人生を変えると言っておったのは嘘か?」
横に座ってしょんぼりした颯人を見つめる。
恋だのちゅーだのは流石に冗談だとわかっているとは思うが…寂しがりなのかな?
「俺は今日一日で180度どころか360度くらい人生変わったんだ。神様なんて本の中でしか知らなかった。
颯人だって俺に出会ってこれから一緒に働くんだから人生…神生?変わってるし。嘘じゃないと思うけど」
「恋は?ちゅうは?」
「男同士でそういうのはわからんし、遠慮したい。だけど、颯人が俺を選んで下りて来たなら俺たちはバディだろ?恋じゃなくて友情とか、そういうんで行こうぜ」
「我は恋がよい」
「そりゃ無理な相談なの。そもそも恋します!って言ってするもんじゃないだろ。
お互いのいい事も悪い事も知って、信頼を築いて、お互いを尊重した上で心が寄り添うのが恋だ。チューもその先の話だろ」
「ふん、時を置けと言う事だな。あいわかった。」
ホントにわかってんのか…?颯人の横顔を眺めながら首を傾げてしまう。ソワソワしてたのが落ち着いたなら良しとするか。
恋をした事のない奴が語っても通じるもんなんだな。うん。
話す間に進んでしまったDVDをもう一度最初から見直すために、再生ボタンを押した。
『なぜなに陰陽師!このDVDは、初めて陰陽師課に配属された皆様に向けて陰陽師とは何か、公僕とは何か、その仕組みをお教えするものです!心して聞け!』
テレビの中で可愛い女の子のアニメーションが解説を始める。
颯人は大人しく一緒に見始めたようだ。
くっついたままなのはまぁ…いいや。気にしたら負けな気がする。
『まず、今現状どうなってるかみんな知ってるよね!日本は現在、人の世では測れぬ存在の超常が跋扈し、神々に護って頂いていた状態が祠を壊したのでパーになっています』
『20xx年からその対抗策として陰陽師達が組織化され、不思議なぱわーで日本を元に戻そう!と言う使命を持つのがあなたの配属先です。
裏公務員・陰陽師課は中務、管理事務、営業課と言う部署に分かれ、それぞれ役割を担っています。あなたは営業課所属の鎮め役、現場で戦う戦闘員です!
管理事務は正式名称
全員が神様をバディとして、乱世となった日本を護る為に戦う
「仲良くしてくれりゃいいけど、あれは無理だろ」
冷たい感じの伏見さんといい、偉そうな上役の人といい、煙の中の目線と言い…あれはみんな仲良し♡な場所とは思えない。ご期待に添えるかどうかは分からないけど、やると言った以上はやるしかない。
小さくため息を落とすと、颯人がそれを見てぽんぽんと俺の膝を叩く。
「其方と我が仲良くすればよい」
「うん。そうだな、バディだもんね」
「だが、お前は…本当にそれでよいのか」
「ん…?何が?」
颯人の真剣な声色にDVDを止めた。
俺の問いかけに首がにゅっと伸びて、真っ黒な瞳が俺をじっと見つめてくる。またもや顔が近い。クソ…イケメンだな。
「お前は元々神職や陰陽師ではなかろう。
我が守るとしても、妖怪や荒神と対峙して戦えるのか?命は惜しくないのか?」
「うーん…」
正直、酔っ払って起こってしまった事で実感はない。戦闘の経験もないから危険性もわからんし、基礎知識も何にもない。
今置かれている状況だって明らかに普通じゃない。
遺書を書く、国家公務員で高い給料を貰う…食べるのにも困る人がいる世の中で、こんな高級マンションに住まわせるんだから。
危ない仕事なんだろうって事だけは分かる。ハイリスクハイリターンが世の常だ。
「そこまではまだ…わかんないよ。でも、困ってる人を助けるって言うのは公務員共通の仕事なんだ。命をかけてまでやるってのはピンとこないけど。
逆に言えば裏公務員が存在するって事は、命の危機に瀕してる人がいるって事だろ?」
「そうだ。悪しきものが跋扈する世を知らぬ人間は多い。しかし、日本は元々神が作った国。その我々も統治できぬモノを鎮めた要が人によって壊され、人が害されている」
「そっか…じゃあ、その対処をできる奴がやるしかない。実感が湧いたら後悔するかもしれないけど、そんな事考えてもどうにもならん。やる事があるならするだけだし、死にたくないから俺は上手くやる」
「上手くできなかったらどうする?死ぬのだぞ」
「俺は死にたくないから必死で足掻くよ。
元々地方公務員してたのは、何かの役に立ちたくてやってたんだ。俺の命がこの世にある意味を持ちたかった。
モサくてしょっぱい男のままでいるのは嫌なんだよ。
公務員をクビになって地獄に落ちた気でいたが、これも運命ってやつじゃないか?黒いモヤモヤが見えてたから俺は人の役に立てる事もなかっただろ?」
「自己犠牲の精神か?」
颯人が眉を下げる。
なんかさぁ、可愛いって思ったら変かな。表情が豊かで見ていて面白い。
こんな顔して…俺のこと心配してくれてんのか?いい奴じゃん。
「俺は端から犠牲になるつもりはない。人の役に立つってのは生きてなきゃ出来ないだろ。バディで有る颯人が手伝ってくれるんだよな?死ぬ気で生き残ってやるさ」
「……ふぅん…ふぅん…」
唇を突き出し、拗ねたような顔でふーん、と呟いた颯人が俺の肩に顔を埋める。
「お前のそう言うところは、好ましい。人としての性がとてもよい。我も協力してやろう。死ぬなよ」
「うん…よろしくな、颯人」
「応」
どーせあの部署の感じじゃ最初から仲良くできるのは颯人だけだ。返事をまともに返してくれるから俺も安心したよ。
頼りにしてるぜ、神様。
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