凛音君……
「雑居ビルだね」
「うん。休日なら、店で合コンしていいよって代表が言ってね」
「へぇーー。でも、二人でよかったの?」
「二人じゃないよ。あっ、いたいた。高校の時の先輩の
「あっ、お久しぶりです。水瀬一葉です」
「かずちゃんじゃん。久しぶり!今日は、よろしくねーー」
美佐さんは、ニコニコと楽しそうに笑っている。
「て、美佐さんって結婚して子供いなかったっけ?」
「いるよ!今日、合コンするって話したら行きたいって聞かなくて」
「えっ?それって相手に失礼じゃない?」
「大丈夫、大丈夫。彼等は、商売人だから……。まあ、これは商売関係ないけどね」
結愛は、気にしない気にしないって笑っていた。
商売か……。
だったら、連絡先とか交換しようものなら営業電話とか掛かってくるやつだ。
合コンじゃないじゃん。
正直、期待なんかしてなかった。
だけど、一瞬でも晃君を忘れられるなら……。
それでよかった。
カランカラン……。
「いらっしゃい。結愛ちゃん。座って」
「はーーい」
BOXと呼ばれる席に案内される。
そこにいたのは、イケメン三人組。
例え商売でも目の保養になる。
「何飲む?」
「じゃあ、オレンジジュース」
「私も……」
「一葉は?」
「えっ、あっ、お茶で」
「オッケー」
飲み物を入れてくれてテーブルに置かれる。
合コンというのか何なのかわからない集まりが始まる。
「凛音さん、座って下さいよ」
「あっ、うん」
ドクン……。
彼が振り返った瞬間。
胸の奥が痛む。
「じゃあ、自己紹介しようかーー」
合コンという名の集まりが始まる。
自己紹介が始まり、彼の順番がきた。
「凛音です。28歳。一番年上です」
「いぇーーい、じゃあ次」
彼は、私の向かいに座っている。
他の人の声が何も聞こえないぐらい胸が騒いでいる。
「一葉だよ、自己紹介」
「あっ、うん。水瀬一葉です。二十歳です。よろしくお願いします」
「一葉ちゃんかーー、よろしくね」
合コンは、盛り上がっていく。
だけど、凛音君は楽しそうじゃなくて……。
「結婚って憧れるよねーー。ってか、旦那さんこんな所来て怒らない?」
「大丈夫、大丈夫。って、みんな独身?」
「凛音さんは、バツイチですよね」
「うん。23の時に結婚して、27で離婚した」
「へーー、最近じゃん。子供は?」
「いなかったよ」
凛音君が話をすると私の耳は吸い寄せられるように話を聞いていた。
「また、結婚したい?」
「結婚?俺には、向いてないからいいわ」
「えーー、勿体ない」
結婚はもういいって言葉に何で胸がざわつくのかわからなかった。
まだ、結婚のけの字も考えていないのに……。
楽しそうにみんなが話してる輪の中に私は入れずにいた。
「何か飲む?」
「えっ……。あっ、同じので」
「わかった」
凛音君だけが、そんな私に気付いて声をかけてくれた。
「楽しくない?」
「えっ、いえ、楽しいですよ!凄く楽しいです」
「そう。なら、よかった」
差し出されたお茶を受けとる時に、指先が軽く触れる。
ドクドクと胸の奥が痛む。
一目惚れ?
そんなそんなあるはずない。
私は、まだ晃君が好きなの。
よくわからない合コンはお開きになった。
「また、お母さんと来るねーー」
「はーーい。待ってるよ」
「ありがとうございました」
「うん。気をつけてね」
私も結愛と美佐さんと一緒に頭を下げた。
三人で並んで歩く。
凛音君が覗き込んできた瞳や触れた指先を思い出す。
「ねぇーー、一葉、連絡先交換したい人いなかったの?」
「あっ、ごめん」
「聞いてなかったでしょ?」
「うん」
「連絡先交換したい人いなかった?」
「いた……かな」
「えーー、誰々?」
「凛音君……」
「いいじゃん、いいじゃん。私、連絡先知ってるから一葉に教えていいか聞いてあげるよ」
「えっ?いいの」
「いいよ、いいよ」
帰宅して暫くして、結愛からメールが届いた。
【凛音君が、一葉に連絡先を教えていいって言ってるから送るね。凛音君のは、これだからね!頑張ってね】
私は、結愛のお陰で凛音君の連絡先をゲットした。
「さてと……。何て送ればいいかな」
悩んでる私とは違って、凛音君からすぐにメールがやってきた。
【結愛ちゃんから連絡先聞きました。凛音です。いつでも暇な時、メールして。よろしくね】
「わぁーー。やっぱり慣れてるよね。でも、お店のお客さんとして出会ったんじゃないんだから……。気にせずに連絡すればいいよね」
【こちらこそ、よろしくお願いします】
【敬語じゃなくてもいいよ。年上だけど】
【そうなんだね。わかった】
【何かまだ堅くない?】
【すみません。何か慣れてないです】
【一葉ちゃんって面白いね】
凛音君と連絡先を交換できて、私は幸せで……。
この日は、寝るまでメールをしていた。
中身なんかほとんどなくて……。
ただ、下らない話をしていた。
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