第4話
あれから彼女の父親から勧められるのを断れず、ビールは4本目に突入していた。空になると、新しい缶を渡され、口にする羽目になった。彼女の父親に付き合うことになった。
そのせいで目の前がちょっとクラクラする。やっぱり気をしっかり持つのは難しそうだ。飲み慣れていないから、おぼつかない。
「それでラーメンはやっぱり味噌が好きかね。北海道だから」
彼女の父親もいい感じに酔っ払っている。名前をなじって、冗談をかましてくる。
「そんなことはないですよ。やっぱり豚骨が好きです。福岡の傾向として、豚骨が多いから、その環境で慣れ親しんでいますから」
冗談に乗っからず、自分の好きなものをはっきりと口にした。ボケをかましてきたんだろうから、ツッコミで返した。そういうやり取りをやりたいんだろうから、付き合ってあげた。
「豚骨をベースにしたラーメンも北海道にあるよ。味噌だけじゃないんだよ」
だからなんだよ。
知っているよ、そのくらい。コンビニにそのカップ麺が売られているし、それをたまに買って食べているから、わざわざ言わなくてもいいんだよ。
「そうでしたか。それはまた…勉強になりました」
しかし、ぐっと堪えた。
酒で気が緩んでいるけど、口にしなかった。下手に怒って、彼女の両親との関係を悪くしないためにも乗っかった。反論するほどのことじゃないから、知らないふりで通した。
「そうなるとやっぱりちぢれ麺が好き?北海道だから」
何がそうなったかは分からないが、彼女の父親は再び名前をなじって、冗談をかましてくる。
「強いて言えば、細麺ストレートですよ。福岡の傾向として、細麺ストレートが多いから、その環境で慣れ親しんでいますから」
またしても冗談に乗っからず、自分の好きなものをはっきりと口にした。ボケをかましてきたんだろうから、ツッコミで返した。そういうやり取りをやりたいんだろうから、再び付き合ってあげた。
「北海道も昔はストレートが当たり前だったんだが。今はちぢれ麺がスタンダードになっているようだが」
だからなんだよ。
それは時代の流れだったり、企業努力の賜物だったり、だろうよ。より味噌ラーメンをおいしくするために頑張った結果なんだろうよ。
「そうなんですか。北海道も昔はそうだったんですね」
しかし再び、ぐっと堪えた。
酒で気が緩んでいるけど、口にしなかった。下手に怒って、彼女の両親との関係を悪くしないためにも乗っかった。知らないことでもあったから、同調した。
「しかし若いと1杯だけでは物足りないだろう。
そうなるともう1杯頼んだりするのかね。北海道だとスープが冷えるから」
もう3回目にもなるが、彼女の父親は再び名前をなじって、冗談をかましてくる。いい加減しつこく感じる。
「替え玉がありますから、もう1杯は頼みませんよ。まだ金ない学生の身分ですから、毎回ラーメンに2000円も3000円もかけられませんよ」
いい加減、受け答えするのも飽けたが、彼女の父親との関係を悪くしないため、冗談に乗っからず、自分の意見を口にした。付き合いたくないが、仕方なく付き合った。ボケに対するツッコミではないにしろ。
「北海道でも替え玉を提供する店舗が増えてきている。なにも福岡だけの文化ではないんだよ」
だからなんだよ。
それは時代の流れだったり、空調管理の技術が発展したり、だろうよ。地元の人たちが第2の故郷となった場所でも味わいたいがために頑張った結果だろうよ。理由はそれだけじゃないだろうけど。
「北海道について詳しいですね、お父さん。出張か旅行でよく行かけられるから、そんなに詳しいんですか」
うんざりしてきたから、話題を切り替える。北海道を推してくる理由に話題を逸らそうと試みる。
「貴様にお父さんと言われる筋合いはないわ」
すると突然キレてきた。今まで気分よく調子に乗った雰囲気だったが、いきなり空気がピリついた。俺に向かって、空になった缶を投げてきた。
当たりはしなかったが。床にぶつかり、カッツンと音がするだけだったが。
驚いたのは俺だけでなく、彼女もその母親もピックリしていた。急に荒立てるものだから、動きが固まっていた。
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