第2話 しゅな

桜咲く4月。花粉が猛威を振るう季節。

校舎の裏手で男女が二人向き合っている。

二人とも制服を着ているので学生のようだ。

女子生徒の背丈は高くとても整った顔をしている。

向かい合う男子生徒は、いたって普通という言葉が似合う男だ。

側から見れば、4月の休み明けに告白を決意した青年が彼女を呼び出し思いを伝えようとしているように見えるだろう。


「僕になんかよう?」


女子生徒は、僕という一人称で男子生徒へと問いかける。いかにも、興味が無さそうな顔をしている。そんな、無表情な顔も誰かの性癖に刺さりそうな顔だ。

180cmほどの身長から無表情で見下されるのを想像するだけで色々と濡れてしまいそうだ。

同じようなことを向かい合う男子生徒も思っていた


男の方は案の定、少し息が荒い

「珠那さん!よければ俺と付き合ってください」

いきなり、緩急も付けずに第一声で言い放った。

「告白して彼女の心と体を我が物に!」と言う心の気持ちが鼻息や目線から漏れている。

恥ずかしいのか目は、伏せていた。

いや、彼の身長からすると目の前が彼女の豊かな胸なので目が離せなかった。


風で桜の花びらが散る

彼の熱った体を少し冷ます。


一拍置いて

しゅなと呼ばれた女子生徒は少年に近づくと彼の顔を両手で挟み込み、無理やり目と目を合わした。

「ちゃんと目を見て伝えないと後悔するよ?」

そんな、心の臓をえぐるような言葉に

少年は、目を丸くしてた。

彼女の何とも男らしい行動を見ればどちらが男と言われてもよくわからなくなる。


「は、はい!」

彼女の両の手から伝わる体温に少し頬が緩む。

「じゃあ、もう一回」

先ほどまでの無表情が嘘のように

まるで、拷問するように

男子生徒をもて遊ぶ。

「す、好きです」

珠那は、満足そうに不適な笑みを浮かべる。

そして、彼女は彼の目を見て答えた。

「ありがとう、でも僕は好きじゃ無い」

少年は「え?」と言いたげな顔を一瞬見せた。

「は、はい」

だが、少年は、意外にもあっさりと諦めた。

いや、諦めたと言うより考えて返事をする能力はもう彼にはなかったのだ。

彼は、珠那の綺麗な瞳とその他諸々の不純な感情で、頭がパンクしかけていた。

今かれは、魂が抜けて間抜けな顔をしている。


「じゃあ、またね」

そんな彼をよそに

珠那は、スカートをなびかせながら元気よく校舎へと消えてゆく。

姿が完全に校舎に消える直前、春一番の風が吹いた。

スカートがめくれ、水たま模様の下着が見える。

珠那は慌ててスカートをの裾を押さえた。

するとまた、少年と目が合った。

『へんたい』

声は聞こえないが、少年は顔を真っ赤ってに地面に両膝をつく。

珠那は、急ぎ足で校舎の中へと消えていった。

彼の中で今日何かが芽生えた。

何かの沼にハマったのだった。


取り残された男子生徒が正気をとり戻したのは、それから10分が経った頃、授業開始を知らせるベルが校舎に響き渡る頃だった。

「珠那さん、、、なんかいい匂いしたなぁ。」



彼女の名前は、一条 珠那。

ここ、第一高校に通う普通の女子高生。

180cmの身長と美貌。あの独特な雰囲気と行動から一度彼女の沼にハマると抜け出せない意味を込めて影では堕天使と呼ばれている。

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瑠璃色の世界でもう一度 ryuki @moriogai

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