第10話 交通公園で交通事故を見た日の夢

 小学校低学年くらいの、ある日のことだったと思います。


 私は祖母と近所の交通公園に来ていました。私は自動車には大して興味はなかったのですが、子供用ゴーカートが遊園地のアトラクションのように見えて、気に入っていた記憶があります。


 そんなゴーカート乗り場で事故が発生しました。職員のおじいさんがゴーカートを手で押して乗り場に整列させているとき、一人の子供が急に飛び出してきて、ゴーカートの下敷きになったのです。


 私たちはその様子を、乗り場の向かい側の通路から見ていました。子供は怪我もなく無事でしたが、子供の頭部だけがゴーカートと地面の隙間から飛び出していて、ショックを受けたのを覚えています。


 その日の夜です。


 私はまた、祖母と近所の交通公園に来ています。いつものように道路を横断し、ゴーカート乗り場へ行こうとしたところで、女性の悲鳴が聞こえます。見ると、子供がゴーカートの下敷きになっています。手足はちぎれてその辺に転がり、ゴーカートと地面の隙間から飛び出した頭部が激しく回転しています。


「違う……」


 景色は現実のものとそっくりですが、起きている出来事が、私の記憶と違っています。私はここで気づきました。「これは夢である」と。


 今までは現実のような悪夢を見たときは、目が覚めるまでそれが夢であると気づけませんでした。そのせいか、目覚めてから思い出してみると明らかにおかしい要素があっても、夢を見ている間は強い恐怖を感じていたものです。


 夢の中で「夢である」と気づいた瞬間、恐怖が一気に軽くなりました。


 この時点ではまだ夢を操ったり、自分の意志で夢を終わらせて目覚めたりすることはできませんでした。それに、毎晩、全ての夢を「夢である」と認識できるわけではありません。


 しかし、毎晩のように眠っている間に感じていた苦痛が、何回かに一度は無効化できるのです。これはかなりの改善でした。


 この日の経験は、私が安らかな眠りを手に入れる重要な第一歩となったのです。

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