第7話 父がギャンブルを辞めた日に視たもの
これは幼少期の体験です。
私の父はギャンブルが大好きで、また、ギャンブルに強い人物でした。父がパチンコ屋から帰った日は必ずお土産があり、その次の休日には必ず買い物へ行き、私たち兄弟の欲しいものを何でも買ってくれました。父が負けるのは人に誘われて断れなかった時くらいです。
「昔麻雀をやってたときは、周りの出す手が最初から終わりまで全部視えることもあった」
あまり大声では言えませんが、父は若い頃から、勘の冴えているときは必ず何かを賭けて楽しんでいたそうです。
そんな父親が、ある日突然、ギャンブルを辞めました。
今思えば、父は私たちが喜ぶ顔を見て嬉しく思っている、という感じで、ギャンブルに勝ったこと自体はそれほど嬉しく思っていない様子でした。
ある日、父は私たちをゲーム屋へ連れて行ってくれました。買ってくれたのは父と私たち兄弟3人分の携帯ゲーム機が計4台と、好きなゲームソフト計6本。その後、中華料理屋で食事をし、帰りにはデザートを食べるためだけに別のレストランにも行きました。
それが最後の「買い物」でした。
少し年月が経った後、それとなく父に聞いたことがあります。父曰く、
「勘が冴えてて、大金を稼いだ日は、必ず変なものを視てた」
父が以前、友人との賭けに勝った帰り道、深夜にも関わらず3歳くらいの子供が一人でボール遊びをしているところを視た、と、母と話しているのは聞いたことがありました。
他にも、父が買い物に連れて行ってくれるのは必ず翌日以降であったこと、ギャンブルで得たお金は急ぐように使い果たそうとすること、父が心霊系の話をすることを異常に嫌がることなど、不思議な点はいくつもありました。
ですが、それでもギャンブルを続けていたということは、少し変なものが視えた程度ではそれほど気にしていなかったということ。
大好きなギャンブルを辞める決意をしたその日、父は一体何を視たのか。それは今でも聞けないままです。
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