第6話 腹立たしい夢と金縛りのループ

 ある夜。私は父の運転する車の助手席に乗り、夜道を帰る夢を見ていました。こちらが夢であるという自覚はあったので、厳密には明晰夢でしょうか。


 暗い川沿いの道を走っていると、右側に学校が見えてきます。


 と、そこで目が覚めました。あまりにも短い夢です。しかし、カーテンからは朝日が差し込んでいます。体を起こして時計を見ると6時55分。いつも目を覚ます時間です。


 もう朝か、と思いながら、ベッドを降りたところで気づきました。感触が異常です。床はフローリングのはずなのに、足の裏に伝わる感触は「芝生」でした。つまりこれは現実のような景色の夢です。ご丁寧に裸眼時の視界まで再現されています。


 私は布団の中に戻り、強く目を閉じます。そうして勢いよく目を開くと、現実にある肉体の目がつられて開く、つまり目覚めることができるからです。私はいつも通りに目を開き、この夢を終わらせます。


 目が覚めました。部屋は真っ暗です。やはりまだ起きる時間ではなかったようです。安心してもうひと眠りしようとした、次の瞬間。


 金縛りです。いつものように全身の金縛りを破りますが、再び金縛りに遭います。変な体勢で固まってしまったので気持ちが悪いです。仕方がないのでもう一度金縛りを破り、元の体勢に戻ります。


 元の体勢に戻ったところで、また金縛りです。あまり連続して金縛りを破っていると、目が冴えてしまって眠れなくなるので、今回は諦めてこのまま眠りに入ることにしました。


 眠りに入ると、先ほどのあの夢です。暗い川沿いの道を走っています。右側に学校があることはもう分かっているので、今度は左側を見てみました。見渡す限り深い森が続いています。何の面白みもない光景です。そして。


 目が覚めました。部屋は暗く、日の出前であることは分かりますが、夢と金縛りのせいで時間の感覚が狂い、今が何時頃だか分かりません。


 首を持ち上げて時計を見ようとしましたが、寝る前にいつも閉めているはずの部屋の扉が開いています。――こちらもまだ夢のようです。一度現実の様子を確認しておきたいので、先ほどと同様に強く目を閉じ、夢を終わらせます。


 目が覚めました。部屋は明るいです。今度こそ現実の朝でしょうか。そう思って時計を見ると、4時44分44秒で止まっています。


 残念です。しかもその「44444」という数字が脈打つように強調されています。こんなことで怖がるのは小学生までです。じわじわと腹が立ってきますが、現状ではどうしようもありません。


 夢を終わらせ、目を覚ましてもそれも夢で、また夢を終わらせて――そんなことを何回も繰り返して、ようやく、6時55分、現実に戻ることができました。


 その日は寝る前よりも疲れたような状態で、実に腹立たしい一日でした。

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