第2話 誰もが視線を感じる家
私が学生の頃の話です。
その日はある友人の家に集まり、10人くらいで遊んでいました。玄関があって、目の前には居間の戸があり、右側はすぐに階段になっている。そんな間取りの家です。
私たちは居間で転がりながら喋っていました。そんなときです。
「何か視線感じね?」
ふいに、一人が言いました。初めは皆、
「霊能者かよ!」
「え、見えちゃう系なの?」
などと、からかうような反応をしていました、が。
「でも確かに視線感じる気するよね」
「俺、前来た時にも感じたよ」
一人、また一人、と、視線を感じると言い始めたのです。その場では言いませんでしたが、実は私も、その視線を感じる一人でした。そこで、ある一人がこんな提案をしたのです。
「じゃあ、皆で視線感じるほう指さそうぜ」
「え、怖っ」
「しょうがねえな、やってやるよ」
若干嫌がるような言い方をしながらも、皆は明らかに乗り気です。そして一人が号令をかけます。
「せーの!」
全員が、同じ場所を指さしました。
一瞬、その場の空気が凍り付きます。全員が指さしたのは、居間側から見た居間の戸の、一番左上です。戸は下がすりガラスになっており、上の一列だけが通常のガラスになっています。位置関係的にはちょうど階段の中ほどから、体を曲げれば覗き込めるような位置です。
「まあ、いかにも視線感じそうな場所だしな!」
「俺、風呂場からも視線感じたことあるよ」
「それはただの覗きじゃね?」
「なんで風呂場から外覗くんだよ、逆だろ!」
友人達は少しの間、霊的な話を続けていました。その時はドアの裏側のような、「いかにも居そうな場所だから」という結論で終わりましたが、後日、その家の友人から気になることを言われました。
「うち、午前2時になると階段を上がっていく音がするんだよね。しかも階段の途中から」
話によると、上の部屋で寝ている彼の母は、よく金縛りに遭い、女性の霊に首を絞められたこともあるそうです。また、その家はお風呂場と階段についている照明の具合が悪く、何度修理してもつかなくなってしまうそうで、私が彼の家に泊まった時も、お風呂はろうそくの明かりで入りました。
お風呂場があるのは階段の向かい側。つまり玄関の左側、壁の向こうです。霊はよく電気に影響を与えると言われていますが、もし、その霊がお風呂場側の方角からやってきて、階段を上がっていくのだとしたら?
果たして、私たちが感じていたその視線は、本当にただの気のせいだったのでしょうか。
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