囚われた海賊
蘭桐生
俺の名は
俺は世界中を股にかける大海賊だ。
昔はへんてこ海賊だとか呼ばれたりしたこともあるが、今じゃ世界中に仲間が居るし、いろんな界隈で有名な奴らも俺の傘下だ。
俺の功績は凄いぜ?
ライバルのガイコツ海賊と死闘を繰り広げたり、幽霊船でお化けとパーティーを開いたり、宝物のコンテストを開いたりもしたくらいだ。
富も宝も手に入れたし、テレビのクイズに出たことだってある。
そんな大海賊である俺だが、ある時ちょっとしたミスで捕まっちまって以降ずっと拘束されている。
何度も脱出を試みたものの、おかしなことに逃げ出した先で毎回捕まっちまうんだ。
俺に恨みを持つ奴らもたくさん居るようで、そのせいか拷問に掛けられることもしょっちゅうだ。
そらまた今日も数人で拷問に来やがった。
今日は4人の男のようだ。酒やツマミを片手に拷問に使う短剣を振り回している。
こいつらはあの短剣を俺に突き刺すつもりだろう。
ジャンケンで勝ったやつが最初に俺に向けて短剣を突き立てる。
樽にブチ込まれ自由に身動きの取れない俺は、なんとか身を捩ってそれを躱す。
そして順繰りに男たちが短剣を突き立ててはそれを見てゲラゲラと笑いやがる。
チクショウ! こいつら、俺が自由になったら覚えてやがれ!
そんな叫びも虚しく、何度も何度も短剣を突き刺し、俺は身体中に切り傷を作りながらも直撃を避け続けた。
世界広しと言えど、狭い樽の中で数十本近い短剣を躱す事が出来るのは俺くらいのもんだろう。
昔は樽に爆弾を詰めるなんて奴も居たが、あれは流石に肝を冷やしたぜ。
そうこうしているうちに奴らの手持ちの短剣も残り2本となったようだ。
もう順番の回ってこない2人が短剣を持って悩んでいる男を煽る。
どうやら俺に突き刺す事が出来た場合は追加の酒を買うパシリにされるらしい。
ふざけやがって! 俺の華麗な回避ダンスを余興にしてやがる!
絶対に刺さってやるものかと意気込み、短剣を持つ男を睨む。
そこか! と突き刺した位置から短剣のリーチを読み、腹を凹ませる。
ふぅ。なんとか届かなかったか。
あと1本だ。絶対に刺さってなんかやるもんか!
最後の1本を持った男はまるで俺に興味が失せたかのように背後に回り、グサリと短剣を突き刺した。
ぐわぁああ!!!! 痛てぇぇええええ!
だが、今だ!
俺は尻を突いた短剣の痛みと共に身体に力を入れると、樽から脱出することに成功した。
火事場のバカ力というやつだ。
見事脱出に成功したものの。おかしなことに何故か身体を動かすことが出来ない。
最後に俺を突き刺した男はめんどくさそうに部屋から出て行き、残った男が樽に刺さっていた短剣を全て引き抜くと再び俺を捕えて樽にブチ込んだ。
くそぉ! 止めろ! 俺は大海賊の黒ひげ様だぞ!!!!
俺の声は届かず、新たな賭けを始めた男たちにより拷問が再開される。
―――――――――――――――――――――――――――
あとがき
「カクヨムWeb小説短編賞2023」創作フェス 2回目お題 「危機一髪」用に書いたものでしたが、直接名前こそ出してはいませんが実在商品を題材にした物語は二次創作にあたるかもしれない?のでタグやら外しました。
権利的に怒られるようなら削除します。
囚われた海賊 蘭桐生 @ran_ki_ryu
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