少女 ブライアン・メイデューの記憶 3

部屋に戻ると、ナイフと一緒に、昨日と全く同じ食事が配られた。

「ありがとうございます」

手を合わせる。しかし、食欲が湧かなくて、スープを植木鉢に注ごうとしたら、私は間違えて水を入れてしまった。微量に残っていた生きる気持ちが、この水によって鎮火されるようだった。仕方なく、今日は飲み物無しで食事を始めた。パンのせいで喉が乾いて、スープを飲んでもドロドロで、油がとても気持ち悪い。

うつ伏せになってお腹をごまかしていると、カタン。とトレーの音がした。なんだと思って顔をあげると、そこには水が二杯、置かれていた。

なんで、どうして?少し考え、私が水を注いだからだということに気がついた。良いことだったんだ。一杯は自分で飲み、もう一杯はまた植木鉢に注いだ。こうしたら、もう一度来ると思ったからだ。

しかし、水は来ないまま、部屋が暗くなってしまった。

ガタン。

今日はよく眠れた。でも、体が臭い。お風呂が苦手だったから気にしていないが、少し清潔な自分が恋しくもあった。

同じように整列させられ、同じ部屋に連れていかれる。これからこれが毎日続くのだろう。でも、いつかは出られる。そんな安易な考えをまだ持っていた。

だらけだったあの場所は、新品のように真っ白に生まれ変わっていた。

「今回は、殺しは禁止です。一人が降参するまで、争いあってください」

ファーン。

昨日と同様、整っていた列は一気に乱れ始めた。よく見ると、昨日と乱れ方はそんなに変わっていない。つまり、戦う相手が決まっている。弱いものいじめが起きているんだ。強いやつが、決まった相手をボコボコにしている。その子が死なないように、ある者は殴り続け、あるものは言葉で追い込み、あるものは、ナイフで少しずつ肌を切り裂いていた。

ここは地獄だ。わかっていたことだが、この施設には、人を貶めてはいけないという法律はない。いくら赤信号を渡っても、誰にも怒られない。

カリッ。脳の中にある謎の歯車が、一目盛り、動いた気がした。

そして私の相手はやっぱり、濁った青い目をした、金髪の彼女だった。

「今日こそ死んでよ!お願い!」

目を見開いて、私の首に向かってナイフを振りかざす。私が追いかけようとすると、ステップで逃げる。ツインテールが揺れる。脳に考えがよぎった。カリッ。即実行しようと、私はすぐに膝を落とした。来た。昨日は朦朧として見えていなかったが、チャンスになると、彼女はすぐにこちらに向かって走って来ていた。

引き寄せて、彼女がジャンプしたその一瞬で、体ごと顔を後ろに倒した。

「えっ」

カリッ。私には才能がある。本当にそう感じた。金髪の子が盛大に転んだ瞬間に私は彼女にまたがり、昨日とは真逆の体勢を見せた。私は金髪が向かってきてる間に考えた。この子が一番嫌がることはなんだろう。カリッ。それは昨日、彼女がヒントを見せてくれていた。そして前回のこの子と同じように、私はナイフを振り落とした。

ザクン。

私の刃は、彼女の綺麗なツインテールを一つ、ぶった斬った。

「お前、お前。私の、私の綺麗な髪を」

そして落ちた束を掴み上げ、お土産として髪をいわいていたゴムをいただき、髪の毛は彼女の顔に落とした。

「ぼぉっうぇ!」

「イヒヒ……」

すかさず彼女のナイフを持った手を床に叩きつけ、離した瞬間に取り上げ、ポイと投げ捨てた。そして見えた彼女の片耳を掴み、張り付いている場所から、ちょっとずつ、ちょっとずつ下にギコギコとナイフを落としていった。なんで急にこんなことしたんだろう。多分それは、私が嫌だと思った行動だからだ。

「痛い!やめて!やめて!」

今なら、最悪なことならなんでも思いつく気がした。舌を切る?目はどうだろう。

嫌がっている唇に、粘り気のある液体が落ちた。その時、私は笑っていることに気づいた。

私の手首を掴んだり、首を掴んで抵抗しようとする彼女が、今日は一段と可愛く感じた。そっか、そりゃいじめるよな。こんなに愚かで面白いんだもん。学校でいじめてきたあいつやこいつを、今は許してやろうと、そう思った。

ファーーン。

「一人、死亡しました。今回は、自殺です。皆、お疲れ様でした」

すると、荒い足音が、床に響いた。見ると、自分で心臓を突き刺して倒れている女の子に向かって、青髪の女の子が、肩を担ぎ上げ声を荒げ泣いていた。

「嫌だ!イヤダイヤダイヤダ!嘘だって言ってよ!一緒に生き残ろうって言ったじゃん!」

まるで咆哮のようだった。その子は列に並ぶ前に、防護服の人によって担がれ、先に扉のほうに向かっていった。

「お前が殺した!殺したんだ!あの子が自殺するはずがない!私が殺してやる!私が!」

バタン。

閉まった扉の奥からでも、彼女の喚く音が聞こえていた。

「だって、そういうゲームなんだもん。仕方ないだろ?」

おそらく犯人であろう身長の高い男の子は、半笑いで両手を上げ、あの子が泣いている理由がさっぱりわからないようだった。その片手には、綺麗なナイフが持たれていた。

あっ、そういえば。私はすぐに刃を抜いたが、どうやら引き抜いてしまったらしい。それが新たな一撃になってしまったらしい。「痛い!」と言って金髪の彼女は血だらけの耳を抑えていた。私は彼女から降り、手を差し伸べた。

「ごめんね」

こいつは私の手を払い、そのせいで私の手にも血がついてしまった。汚い。

「最悪な性格してるわね!殺してやるんだから。明日よ。明日決着をつけましょう」

明日か。私は、あの感触を思い出しながら、列に並んで部屋に戻った。牢から顔を出して見てみると、白い床には、耳から垂れたであろう血が、隣の部屋まで水玉模様を作っていた。壁の向こう側では「クソックソッ!絶対に、絶対にぶっ殺してやる!」と、負け犬の遠吠えが聞こえてきた。この愉悦が、私の考え方を肯定するように歯車を動かし、心の奥底にある新芽に、水分を与えた。そして植木鉢にも、芽が出始めていた。私の気持ちは、あの植物と共に成長していくのだろう。トレーが配られると、今日も先に植木鉢に水を与え、食事をした後、昨日と同じように水が二杯届いた。一杯は土に与え、もう一杯はじっくりといただいた。その水は、高揚の蜜で甘く感じた。

彼女の悲鳴を聞きながら今日のハイライトを思い出していると、すぐに部屋は暗くなってしまった。

明日か。楽しみだな。

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