治療
【B】
タカが家まで送ってくれて、「早く振り込んでおけ、振り込んでなかったら、明日家に突っ込んでやるからな」と捨て台詞を吐き、私たちを降ろした瞬間、車を走らせてしまった。
太陽は落ち始めているのか、遠くの空が薄暗く、オレンジの層は少し薄く感じた。
背中に風が立ちこみ、「寒い寒い」と言いながらジブラを担いで家に入っていった。
鍵をあけて、ドアノブを捻り少し開けた後、片手が塞がってたので、よっと足でドアを開ける。
あれれ、こんなに汚かったっけ。
ゼブラが命令通り私の部屋だけ手を出さなかったから、明らかに汚れているのがわかる。
でも、私にはこれが落ち着く。
うなされているゼブラをリビングに置いて、私は救急箱を探し始めた。
確か、冷蔵庫の上だ。覗いて見ると、全てを見なくてもわかるくらい漆黒の最悪な光景だったが、他は無視してとりあえず救急箱だけを取り出した。埃をかぶっていて、信頼性を失っていた。
中を開けると、ほとんど新品だった。ここまでほぼ無傷できたってことか。思えば、本業として動き始めてからは、一度も傷を負立てないのかもしれない。多分、ここを根城にしようとした時に、とりあえず買ったものだ。
ゼブラの傷は、手の甲の薬指から小指にかけて、ギリギリ後遺症にならないようにできていた。
サンドラの精密な射撃がなせる技だろう。あいつは、会った時から銃だけは天才だった。現場じゃ使ったらすぐバレるから、活躍できなかったのだろう。
私が来た瞬間に撃てばよかったのに。囮を連れてくることがわかっていたのかな。
まあ、サンドラのことだ。私情を持ち込んでいるに違いない。
布切れを外して、消毒をかけると、ゼブラが急に叫び声を上げた。
近くにあった私の服を咥えさせて、治療を続けた。少し裂けてる、縫ったもらったほうがいいけど、病院には行かせてあげられないんだよ。ごめんな。
私は初めて、自分が殺し屋だということを恨んだ。普通に生きるメリットってなんだろうとずっと考えていたけど、こういうことなのかもしれない。軽い治療が終わった後、自分の治療も始めた。
横腹と、目尻かな。後は返り血と、多少の切り傷のみ。
顔も洗い終わった後、傷に耐えかねて苦しそうにしているゼブラを見て、どうもたぎってきてしまう。
元々こういうの好きだったけど、好きな人がなるのはこうもたまらないものなのか。
咥えていた服を外して、一方的な接吻をゼブラに与えた。
一度離れたら、ゼブラが咳き込んでしまった。失礼なやつ。
そのまま私の布団に寝かせて、私も一緒に横になった。ゼブラの荒い息に興奮して、しばらく眠れなかった。
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