禁句

【調査員 タカ】


神目線の2Dから電波を割りだす。ダグラス社の中で間違いない。

そのままビルの3Dを見て流れる発信源の中心を探る。よし、掴めたぞ。

位置はおよそ地下二十メートル。

ターゲットが携帯を持っているなんてよく知っていたな。

褒めようとBを見ると、拳で自分の目を抑え、ポタポタと涙は溢れ出てしまっていた。

「相当そいつの声が聞けて嬉しかったんだな」

俺は共感したつもりだった。なんとなく言ったんだ。

しかし、Bは俺の座席を激しく蹴り始めた。

治ったかと思うと、Bは車を降りて走り出してしまった。

「おい!待て!」

ありゃ完全に自暴自棄になってる。こうなったら。俺は車を降りて、

「待て!ブライアン!」

と禁句を叫んだ。Bは急にストップして、予想通り戻ってきた。俺は思いっきり歯を食いしばった。

「その名前を使うなあああ!」

言ってしまった。Bは走る勢いそのまま、俺をぶん殴った。

ボンネットに腰を打ちつけ、俺はそのまま地面に倒れてしまう。

Bはジャンプして跨り、その重力は腹が一瞬無くなったと思うほどだった。

俺は二、三発容赦を受けた後、安易な拳を止めた。ああ、腰が痛い。

「今日のミッションは俺を殴る事じゃないだろ。冷静になれ。あと殴りたきゃ車の中で殴れ」

Bは頭をかきむしりながら車に戻り、俺も腹部を押さえながら運転席に戻った。

「さっきは悪かった。こうでもしなきゃと思ってな」

Bの感情に任した暴走は十分ほど続いた。車は軋み、ぐあんぐあん揺れながらBを受け止めていた。

「下手に冷静になりやがって!ゼブラが死んでいたらどうするんだ!」

俺を責めるように文末に座席を蹴り上げるこいつに、何もしてやれず、ただ落ち着くのを待つしかなかった。多分、何を言っても火に油を注ぐ結果になる。キックが静まったかと思うと、今度はまたしくしく泣き始めてしまった。

「おい、何か言ってくれよ……私はどうしたらいいんだよ」

「君のゼブラくん?は多分死んでいないよ。相手は誰だったんだ?」

「サンドラだよ。昔仲良くしてたんだ。変な口調になってたし、急に私を殺すだなんて」

俺は車の窓を開き、少ないタバコに火をつけた。

「何を怯えているんだ、そんなに相手が狂気なのか?」

「調査員のくせに何も知らないんだな。多分、唯一私と渡り合える子だよ。戦闘以外、あの子の方が優秀だった」

「じゃあなんで廃人とかなんとか言ってたんだ」

「同じ施設にいたんだけど、アイツだけ買われたんだ。しかも相手は大金持ちだったから、生活には困らなかったんでしょ」

膝を抱えて、ぐずる女はなんて声をかければいいか分からない。二人静止する中、タバコだけが、時間を記録していた。

『こちらアルベルト。関係者口を発見。警備員が二人、警備室は恐らく中、こっちで中に入れるようにだけしとく、合図をおくったら来てくれ』

「ほら、こっちは金を払ってもらってるんだ。早く行け雇い主様」

Bは鼻を啜った後に頷き、ドアを蹴って出て行った。あんな姿初めてだったな。

二人が頑張っている間に俺も情報収集をせねば。さっきの携帯をもう一度割り出し……あれ、電波が出ていない。もう壊された?地下で壊されたとなると、Bのターゲットが心配になってきたな。

とりあえず、こちらが作ったGPSで二人を確認する。

隠密行動はゆっくりいくのが基本なのだが、なのにBの動きが早い。こいつ、走っているのか。と思うと急に止まった。そしたら、何やら緊張が緩みそうな会話が聞こえてきた。

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