最高の朝食
【シモ】
うわっ。急に体が落ちた。眩しい。目をゆっくり開けると、カーテンがゆっくり開いているのがわかった。
夢なのか。夢だったのか。はああ。できる限りのため息をした後、寝相を変えても、
布団が優しく俺を包んでくれた。ずっとここにいたい。しかし、さっきの夢がフラッシュバックする。布団の中の暗さも怖くなって、そそくさと布団を出た。
床が黒い。タイルのようにひんやりとしている。そうだよな。
音のする方向を見ると、サンドラが、ワイングラスに牛乳を注いでいた。少し、髪の毛が乱れている。
「おはようサンドラ」
「おはようございます。ジブラ様」
そうだよな。
サンドラが椅子を引いてくれて、俺はタイミングよくその椅子に座る。
朝食はパンの上にソーセージと目玉焼きが乗っていただけだが、俺がBのために作る朝食とはまるで違った。黄身は金色とも言っていいほどに輝いていて、パリッとしているソーセージは分厚く、油が凝縮しているのがわかる。パンも見たことのない分厚さで、パンの耳でさえ触り心地がよく、角を感じないほどに滑らかだった。
「いただきます」
一気に頬張ると、全てが完璧だった。見た目もさることながら、ザクっとした後にクッションのようにパンによって受け止められる手応えのある噛み心地に、鼻に近づいた時の香る、スーパーの安いエグ味も感じられない。昨日の肉のような感動がもう一度味わえるなんて、必死になってがっつき、牛乳も持たずに俺は食べ終えてしまった。
「サ、サンドラ」
「はい、なんでしょう」
「お、おかわり」
「わかりました」
サンドラらしくない咲くような微笑みを浮かべて、部屋を出て行った。ウィーン。
「やっぱり夢なのかな」
今になって、広く広く、ほんのり奥がカーブしているようにも感じる海に感動を覚えた。どこまで続いているのだろう。何人か人がいて、ボールを飛ばしあって遊んでいる。僕も遊びたい。Bとこんな毎日を続けられたら最高なのにな、ご飯食べて、倒れるまで遊んで、一緒に昼寝をして。
ウィーン。
「ジブラ様、お待たせいたしました」
さっきの最高の料理が運ばれてきた。しかも二枚。嬉しくなって思わず体が揺れてしまう。
「お行気が悪いですよジブラ様」
料理をテーブルに置きながら僕の顔を見て穏やかな口調で注意された。
「ご、ごめんなさい」
怒られた。体を小さくして姿勢を正す。僕のことを怒ったというよりは、怒ってくれてたと言う感じだ。Bと違って、サンドラはちゃんと僕のために注意してくれた。作ってもらった朝食をとって方張ろうとした瞬間、夢に出てきたBの顔を思い出した。見たことのない笑顔。夢はいつも忘れるけど、今日の夢だけはずっと忘れないだろう。
「お食べになっていいですよ」
「あ、うんありがとう」
後ろの定位置に戻ったサンドラの催促でBのことは一旦忘れ、次はがっつかずに、ゆっくり齧り付いた。同じ味なのに、全く飽きることがない。Bがこれを食べたらどんな顔するのかな。
「Bだったらこれ飛んで喜ぶと思うよ。あ、わかんないか、Bはね」
「非情な殺し屋。ですよね」
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