「サンドラの勝ちだな。しかしよくここまで戦えたよ。素晴らしい」

私はシモに拍手を送った。今日が彼にとっては寿命を延ばすバースデーだからだ。

「さあ、次は射撃だ。ナイフをこっちに渡しなさい」

固まっているシモに近づいて、もぬけの殻になっているシモからナイフを抜き、

「君はすごい子だ。きっとすぐに上達する」

と、小声でエールを送った。

サンドラからゴム製のナイフを受け取り、閉まってロックをかけた。

「次は銃。ハンドガンは誰でも持っている可能性がある。法律で取り締まられてはいるが、いつ銃撃戦になるかわからない。どちらが早く正確に打つか、その勝負になってくる」

ハンドガンを二人に渡すと、シモはうおっ、とハンドガンの重さに引っ張られていた。

「片手でよく撃つのを見るがあれは完全なフェイクだ。両手で覆うように隙間なくしっかり覆って、軸がブレないようにしっかり持て。衝撃に耐えられるように少し肘を曲げるんだ。目でちゃんと照準を合わせないと、遠くの敵なんて撃てっこない」

サンドラが唐突にパンと撃ち、的の真ん中に吸い込まれるように球が貫かれる。ない風に煽られてシモは体が少しのけぞった。

「ジブラ様、安心してください。ナイフと違ってそこまでフィジカルな武器ではありません。習得すれば誰にでも攻撃できます」

と言いながらパンパンと二回撃ち、開けた穴に再度弾が入る。サンドラはまだここにきて半年も経っていない。いわゆる天才だ。天才の発言は経験が少ないだけに浅い。感覚で人を教えるなんていうのは愚の骨頂だ。シモは見様見真似で構え始めた。

片目をギュッとつぶって、ブレないように必死に持っているのがわかる。

「たとえ当てられたとしても、こっちが撃たれたらおしまいだ。右足を少し引いて、そう。ナイフを持った時のように体を斜めにすると、今じゃわからないだろうが、少し相手は当てにくくなる。これを覚えなさい」

私が少し体を調節しながら、シモに構え方を教えていった。彼の肩を持った時、もし彼が自分のことを知っていたら。とセンター長の顔を思い出し、私が支えたシモの肩が少しシミになっていた。

パン!と急に破裂音がしてシモが少し後ろに吹っ飛んだ。そのまま倒れて、目でわかるような震え方をしている。おそらく、震えた指に力をこめてしまったのだろう。銃が急に目の前まで近づき、音と感覚、得た力が一気に押し寄せて唖然としていた。

「ハハハ、最初はそんなものさ、腰を少し屈めなさい。そう、そうだ。さあ、もう一度。手前の標準ではなく、奥の標準に視点を合わせるんだ」

シモは震えながらも、次は決意を持って引き金を引いた。

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