秘密基地へ
皆がまた私を注目の的にする。話し合いが少し聞こえたのか、さっきよりもソワソワしていた。
「ダグラス、いや社長。我々にはもうあなたしか残されていない。どうか我々のため、ダグラス社のためにも、どうぞよろしくお願いします」
センター長が研究所を揺らすような大声で深々とお辞儀すると、研究員達が一斉にお辞儀をした。
誰かが社歌を歌い出し、それに合わせて皆が歌い、私はそれをバックに研究所から出て行った。
唐突なセンター長の声は、私の緩かった決断を締め、業界の必死さ、私の威厳を私に再理解させるための鼓舞なのだと受け取った。
堂々としよう。私のミスで、ここを、世界を終わらせてはいけない。
両手で頬をビンタし、シモのところへ向かった。
静かに自動ドアが開くと、シモとサンドラはリバーシをしていた。
「お疲れ様です、ダグラス様。どうかなさいましたか?」
「いやあ、シ、ゼブラと話したいのだよ、席に案内してあげなさい」
シモは角を取る瞬間を奪われたらしく、しかめっ面をしながら席に座った。
「ゼブラ、新しい生活はどうだね」
シモは机の上に置いた指を波のように動かし、二回パタ、パタと動かした後、少し間が開き、答えてくれた
「楽しい。子供の頃に戻ったみたい。Bには会いたいけど、ここもそんなに悪くないと思ってる」
よしよし。心を掴めてきている。
「そいつはよかった。ただコインランドリーで君を見て、君は自分を守る術がないと思ってたんだ。こっちにきなさい。身を守る方法を、教えよう」
私は、シモとサンドラを引き連れて、奥のエレベーターに向かった。
エレベーターの前に着き、振り向くと、二人の手が離れる瞬間が見えた。年頃だなと思う半分、サンドラに気を許していることに安心感を抱いた。
エレベーターに入り、扉を押さえて二人が入るのを見守る。ポケットから出した鍵穴に鍵を入れ回すと、ガタン、と揺れて足元から少し浮き上がるような感覚になった。これがいつも少し怖い。
シモはキラキラした目で周りを見渡している。こんなところでゼブラのハートを射止めるとは思わなかった。
ガタンとエレベーターが止まり、射撃場についた。
「広いだろ?ほとんどの従業員が知らない場所だ。」
シモ達を見ながら私は後ろ歩きで自慢する。シモの反応はいつになっても爽やかで良い。
「まずは接近戦だ。サンドラ、私の相手をしなさい」
接近戦用の敷地に移動し、隅でサンドラは徐に脱ぎ始め、中に着ていたスラっとした自社のプロテクトスーツになった。
シモは両手で目を覆っている。
ナイフが飾ってある場所から、指紋認証で鍵を開け、ナイフを取り出し、サンドラにナイフを投げた。
「まずは見て真似しよう。サンドラ。来なさい」
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