体育

「よーし。準備体操終わったら集まれー。集まれー」


 体育の先生が声とホイッスルで俺たち生徒を呼んでいる。

 

 今日は女子の体育担当の先生が休みのため。男女が合同となって体育館に居た。

 男女同じ。ということは――あっ、そうそう、言い忘れたかもしれないが。俺と真由。同じクラスである。

 教室内だと、席が今は離れているためそうは絡まれないのだが――こういう自由というのか合同となると……。


「やあやあ牧人」

「――」


 サラッと、隣に体操服姿の真由が現れる。

 ちなみに俺たちが2人で話していることなどいつもの事と認識されているため。周りがとやかく言うことはない。別に言ってもらった方が真由が離れそうとか俺は思っているんだがね。誰も言ってこないというか――いや、話しかけては来るが。普通に友人に話しかけるというのか――。


「何するんだろうね?」

「自由時間がいいなー」

「それもいいよねー」


 こんな感じ。俺と真由が一緒に居ても友人が話しかけてくる。ちなみに今は真由の方だ。とか思っていると――。


「今日も夫婦はな仲が良いなー」

「だから夫婦じゃない」

「はいはい」


 俺の方にも友人が声をかけてきたが。夫婦ではない。というか、こんな感じで俺の方に友人が話かけてきても真由はというと――。


「照れちゃってー。牧人かわいいかわいい」

「……」


 何故か俺だけが恥ずかしい思いをするというか。真由の中で俺はどういう扱いなのだろうか?ちなみに2人の時にちょくちょく俺たち付き合ってないよな?ということを確認すると『当たり前の事聞かないでよー』と、言われる。

 マジで馬鹿の考えていることは俺にはわからん。


「そこ雑談を始めるな。そして自由じゃないからな。ってか、ドッジボールの予定なんだが。ミックスがいいか?それとも男対女でするか?」

 

 すると、体育の先生が楽をしたい――ではないが。そんなことを言いだして、まあスポーツ大会などでクラス対抗。ミックスで行うこともあるのでそのままミックス。出席番号の前半後半でそこそこいい男女比になったので、ドッジボールが始まった。


 なお、なんか男性陣の一部がいいところを見せようとでも思ったのか。盛り上がっていたが――俺には関係ないこと。

 あと、女性陣の一部も。


「先生ー男子の顔面当てるのOK?」

「どんどん当ててやれ」


 なんか――別のことで盛り上がってる?ってか、先生笑顔でOK出したよ。


「やっべー、当てられてー」

「……」


 あっ、でもいいのかも。男子の中でなんか当てられることを希望する声が――って、真由以外にも馬鹿はいる。

 なお、今そんなことをつぶやいたのは俺の隣。そう、先ほど俺に話しかけてきた友人だったりする。

 もしかして――俺の周り馬鹿が集まる?


 とかとか思っていると、ドッジボールスタート。 

 そしてなかなか盛り上がった。

 うちのクラス仲いいわ。


 ちなみに空気の俺。隅っこに居るだけでボール飛んでこず。


 一方の真由はというと。俺と同じコートで、その中心でぴょんぴょんしている。


「へいへい。当ててみろー」


 そして相手に挑発していた。

 馬鹿だから仕方ないか。

 ってか、真由は小柄。そして運動神経は良い方?なので先ほどから狙われてもすいすいと避けているのが現状だったりする。

 さすがに相手も男子も真由相手には全力――というのはないというのもあるだろうが。避けまくる。そして女子から狙われても避けまくるということをしている。

 これ――真由がドッジボールを盛り上げていると言ってもいいかもしれない。

 普通にしていればムードメーカーもできる真由。


 なのだが。


「ちょちょ、敵さん。牧人がフリーじゃん」

 

 なんか余計なことを言い出す。

 

 そしてもちろん注目が集まる俺。


「うわっと」


 急に相手が全力で俺の方へと投げてきた。

 せっかく空気となっていたのに。


「真由。余計な事いうなよ」

「へっへっへー。サボってるからだよ」

「こ――おっと」


 真由が指摘したことで狙いが変わり。俺と――ちなみに俺の周りには他にも数人居たので狙われる狙われる。めっちゃ剛速球が来るんですけど!

 ちなみに俺。運動神経は――普通のためあれは取れない。

 とか思っていると。俺の顔めがけて剛速球が――でも避けれそうだと俺が避けると――。


「へぶしっ!?」

「へっ?」


 俺の後ろで変な子が聞こえ――ボールが俺の顔の近くを再度通過する……って、顔面にボールを食らって後ろへと倒れていく真由が居た。いやいやなんで俺の後ろに――って、これはたまたまだが。ちょうど手が届いたため。俺は軽く避けた流れのあとさっと真由を支える――。


「松本!悪い!」


 すると敵チームのコート内で、俺を狙った男子の謝る声が。まあ俺を狙っていたからな。まさか避けた先で真由に当たるとか思っていなかっただろう。


「牧人に――しがみ付いて――妨害する計画――が――」

「元気だな」


 俺の腕の中で顔を真っ赤にして答える真由。痛そうではあるが――ふざけたことを言っているので元気と判断――だったが。


「牧人がでかいからボール見えな――あれ?」


 すると、真由の鼻から赤い雫――って。


「――はぁ。真由。鼻血出てるから動くな」

「なんと!?」

「動くな」

「あっ、はい」


 さすが鼻血騒動になると真由は大人しくなり。その後俺が保健室へと真由を運ぶことになったのだった。

 ちなみにその際も『おかしいな――私の華麗な身のこなしで、寸前のところで避けて牧人に直撃計画――』とか言っていたので無視して運んでそのあとは保健の先生に丸投げした俺だった。


 そして余談。

 真由の顔面に事故でボールを当ててしまった男子。

 その後俺たちのチームの女子から集中的に狙われたとか――。

 馬鹿なことを考えた幼馴染はしばらくの間鼻に詰め物をしていたのだった。

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