登校

「なんでいつも先に行くかなー」


 ――もぐもぐ。


「――」


 真由の家を出て数分後。家と学校のちょうど真ん中あたりを俺が1人で歩いていると。パン片手に真由に追いつかれた。

 こいつ何か出会いを求めているのかもしれないが。週に数回はこのパン片手に持って。食べつつ登校している。

 というか。少し前までパジャマ姿で寝ていたはずの真由。今はちゃんと俺と同じ制服を着ている。そして何をどうしたらこんなに短時間で寝癖とかを直せるのだろうか?というレベルである。


「聞いてる?」


 はっきり言って、全く聞いてない。


 俺は横でパンを食べつつ話しかけてくる奴はいないものとして扱っている。

 俺はちゃんと前だけを見て歩いている。ズッコケてもだしな。

 そして、学校が近づいてきたこともあり。ちらほらと同じ制服を着た学生の姿を見るようになってきた。

 しかし、真由は特に今の自分。朝ごはん?食べつつ登校というのは気にしないらしく――。


「あっ、ちなっちゃんおはよー」


 クラスメイトに声をかけられると普通に挨拶をしている。


「あっ、おはよー。今日も夫婦登校?」

「そうそう。こいつが起こしてくれなくてさー。食べながら登校」


 そうそうではない。あと夫婦を訂正しろ。それと登校しながら朝ごはん普通に思うな。周りを見ろ周りを。誰もいないだろうが。食べながら歩いている学生は。


「夜寝かせてくれなかったの間違いじゃない?」

「あっ、そうかー」

「適当なことを言うな」

「あっ、怒られてるー」


 朝っぱらから何を話している。というか昨日の午後は真由と会っていない。嘘をさらっというな。である。それと何故か真由の言うことを事実を思う友人も問題ありな気がする――。


 などと俺が思っている間に俺たちは学校の敷地に。

 学校内に入ると、真由は自然と友人たちと一緒に――と、なる。

 あのなんか馬鹿の幼馴染。一応――俺から見れば単なる馬鹿なのだが。

 普通に居れば、そこそこかわいいチビ。よくよく小動物として友人たちからは扱われているので気が付くと人が集まっている。


 一方で、俺は特に目立つことがないため。先ほどみたいに真由と一緒だと誰かに話しかけられて、そのまま少し話すことはあるが。1人になると空気いうのか。上手に場に溶け込んでいる。

 ということで自分の席に着席する俺だった。

 少しだが。馬鹿から解放されるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る