第20話

《麒麟視点》


「いやーミッドウェーとガダルカナルは苦戦だったね」


・苦戦という名の虐殺なんだけれども

・あの人の話ならあと3階層で攻略だよな

・次はどの戦いか予想しようぜ

・そもそもわからないんだよなぁ

・楽しみだ


 俺は階段を下りながらコメント欄を眺めていた。真珠湾攻撃の後はミッドウェー海戦でミッドウェーに居座っていたリザードマンやゴブリンども一掃してついでに米空母ヨークタウンを沈めて終了。ガダルカナルでは軍艦約30隻を沈没させさらに八万のモンスターの大軍を撃破して終了していた。


「さぁ行くぞ…ここは、うんあそこだ」


 俺は階段を抜けた先に広がっていた景色を見て確信した。俺が写真で見たことのある形をした山があったのだから。


・えーこの山があるということは硫黄島だな

・今回も楽勝で終わらせてくれよ

・いっきに進んだな

・相手はどんなモンスターなんでしょうか

・今回は英霊出てくるんか?

・ガダルカナルは出てこなかったもんな


「南雲海軍大将が言っていた探索者とは君のことだね。どうも私は栗林忠道、最終階級は陸軍大将だよ。ここは硫黄島、半刻後にモンスターが上陸してくる。君は配信者というものらしいね。いろいろ話したいよ」


 これまた写真で見たことのある顔。俺のひい爺さんの知り合いだったらしい栗林大将が挨拶してきた。


「初めまして。俺は宇喜多麒麟といいます。栗林陸軍大将のことは祖父より聞かされています。よく遊んでいただいたと」


「あぁあの紺蔵少年のお孫さんかい。麒麟君はひい爺さんにそっくりだよ。いい話ができそうだね。一つ質問いいかい?私はかつてここで戦死したわけだけど後世での私の評判はどうなのだろうか」


 俺はそう聞かれて少し困った。俺自身、あんまり太平洋戦争が大好きでもないので詳しくは知らないのだ。

 そう思い俺はコメント欄を見た。


・世界大辞典で調べてから見せればいいんじゃない?

・それがいいべ


 そんなコメントを見た俺はスマホで世界大辞典を開き栗林大将を検索して画面を見せた。


「これに書いてあるので読んでみてください」


「ふむ、アメリカ軍から手ごわい男として評価されているのか…ありがとう。一つの疑問が解消できたよ」


 その後も話していると上陸三分前になった。


・そろそろか

・上陸用舟艇がいっぱいだぁ

・かすかにオークとオーガの声が聞こえてる


「そうだ麒麟君。この層は特殊でこの百式機関短銃じゃないと攻撃が通らない。最終的には通るようになるのだけれどもそれまでこれを使ってくれ。弾は君の魔力を込めれば大丈夫だから」


 そう言って渡された機関短銃に俺は自身で作ったスコープを取り付けた。


・ふぁ‼

・スコープ取り出したよこの人

・魔改造百式機関短銃だ

・うわ、ワイバーンも見える。


「さぁ戦闘開始だ‼持ってくれよ機関短銃‼」


 俺は普通の百式機関短銃の発射レートよりもはるかに速い速度で打ち出していた。

 だだだだだだだだだだ‼


・速度どうなってんねん

・毎分いくらだ?

・上陸くらいさせてやれよ

・やばすぎてちびるぜ

・ちびんなよ


「ははは、これはすごいね…まったく寄せ付けてないじゃないか。第二ウェーブからはそれ使わなくとも大丈夫だから」


「はは、まだまだこれからですよ」


 次に迫りくるワイバーンの群れに俺は口角が上がっていた。

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