第18話

《南雲視点》


「あの子は大丈夫だっただろうか…」


 私は南雲忠一。大日本帝国海軍中将だ。

 私は大東亜戦争が始まった時第一航空戦隊、第三艦隊の司令長官を務めていたがミッドウェーで空母四隻を失う大失態をしてしまい最期はサイパン島で自ら命を絶った…はずだった。

 目が覚めた私は天照大御神と名乗る女性から世界を救うために協力してほしいといわれこの沖縄ダンジョンで蘇った。話によればこのダンジョンといわれるものは大東亜戦争終結後に出現したらしい。

 私の目的はこの沖縄ダンジョンでかつての大東亜戦争をやってくる人に体験させること。私はかの戦争の結果だけは聞かされた。日本は降伏したとのこと。詳しくはやってくるものに聞けと言われ年月が経った頃に現れた一人の少年。私はもっと話したかったがその宇喜多麒麟と名乗った少年は飛び去って行った。

 そんなことを考えているとエンジン音が聞こえた。ふと見ると零式艦上戦闘機を操縦した彼が着艦してくる。


「いやー大変だったぁ」


 降りてくるなり空を飛ぶ物体に話しかける彼。私はねぎらいの言葉をかけに歩み寄る。


「麒麟君、お疲れ様。もう下に行くのかい?それとも休憩していくかい」


「あ、司令官さん。すみません、艦攻は撃墜されてしまいました。そうですね…一人で赤城の船内探索してきていいですか?その間これはお貸ししますので」


 彼はそういって板状のものと飛行物体を渡してきた。私が少し戸惑っていると彼は申し訳なさそうに


「あ、今ダンジョン配信というのをやってましてこの様子が世界中に放送されているんですよ。司令官さんはほら言っちゃなんですけど過去を生きた人ですしその時代を生きた人から話をしてもらったらうれしいじゃないですか。この板でコメント…文章が流れてきます。全部返す必要はありませんが。それでこの飛んでいるものはカメラといって映像を撮って流してるんです。しゃべるときはこのカメラのレンズを見ながらお願いします。それじゃぁ頼みました。半刻ほどしたら戻ってきますので」


 そういって彼は艦橋に入っていく。私はそんな彼を見送った後渡された板を見てみた。


・南雲司令官、困惑しとるww

・そりゃそうだろなにせ約八十年前の人だぜ?

・帝国海軍だしな


「あぁたしかに困惑してるよ。それより君たちに聞きたいことがある。私はかの戦争の結果しかわからないのだが詳しく教えてくれないか。サイパン島よりあとに起こったことを知りたいのだ」


・いいぞー

・ざっくりいうとサイパン島のあと日本はフィリピン周辺で起きたレイテ沖海戦で大和型二番艦の武蔵を含む戦艦三隻、空母四隻他多数沈没。その後硫黄島の戦いで約一ヶ月抗戦するも敗走、沖縄に上陸してきた米英軍相手に奮戦するも沖縄県民含む多数の犠牲者をだし敗走。沖縄戦の前に帝都東京には大空襲が行われ焼け野原に、終戦直前には広島と長崎に原子爆弾という当時最新の爆弾が落とされ何万という人々が犠牲に、その後日本は無条件降伏。おおむねそういう流れですぜ

・あの戦争の転換点と言ったらやっぱミッドウェー海戦とガダルカナルだよな


 私はそんな文章を読んでふと気になったことがあった。

 敗戦後、日本は…天皇陛下はどうなったのかと。基本的には戦争責任で処刑されてもおかしくはない。

 それともう一つ。帝国海軍はどうなったのかを海軍の軍人としては知りたかった。


「そうか…ありがとう。それと二つほど聞きたい。一つ目は終戦時の帝国海軍のことだ。私の知る限りでは主力艦を多少失ったとしてもまだ戦力は持っていたのだがどうなったのかな。それと…敗戦後の日本について教えてくれないか」


・帝国海軍か…ちょっとまってな今調べてくる

・敗戦後の日本は東条英機などの戦争犯罪者は処刑などなったな。憲法も変わって天皇が象徴になったな。

・調べてきた。開戦時世界第三位を誇った帝国海軍だが…ボロボロだ。残った戦艦だけでいうと長門は中破、榛名と伊勢、日向は大破してるな。終戦後解体されたり戦勝国に譲渡したりしてる。

・一回武装全放棄したもんな


「そうなのか…帝国海軍の象徴…大和はどうなった?もしや沈没したのか」


・ご明察、戦艦大和は沖縄戦の最中に起こった坊ノ岬沖海戦で沈没したよ

・今では誰もが知る戦艦だもんな

・現在でも世界最大の戦艦だな


 私は少し感動した。敗戦はしたが復興しているのだと。そう感動している私の目にある文章が飛び込んできた。


・【国連アカ】南雲忠一司令官殿、厚かましいお願いではありますがこのダンジョンで各国の軍を訓練目的で使わせてはもらえないでしょうか。

・南雲司令、国連ってのは国際連盟と同じって思ってもらって構わないよ


「あぁダンジョン全体を使っていいのかは下の英霊たちと話してみないとわからないけど取り合えずこの階層…真珠湾攻撃ともう一つの階層は許可します。私も未来の軍人さんと会話してみたい」


 その後も談笑していると彼が戻ってきた。

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