第15話

《???》


 麒麟が配信をしているのを地球ではない…いや、正確には地球なのだが違う次元で見守る人たちがいた。


「なあ、本当にダンジョンを出現させて良かったのか?」


 そう言うのは20代くらいのちょっと渋そうなイケメン。そんな彼の質問に答える太陽のような神々しい女性がよってきた。


「神倭伊波礼毘古命、気持ちは分かりますがこの先地球に起こることを防ぐ手段はこれしかないのです。あなたもオーディンから聞いたでしょうラグナロクのことを」


 そういわれた彼…神倭伊波礼毘古命かむやまといわれびこのみことまたの名を神武天皇はその女性に頭を下げて謝る。彼女は日本の神様の中で上から数えたほうが早いほど偉い神様…日本神話においては最高神として、もしくは天皇家の始祖である天照大御神あまてらすおおみかみである。

 そうここは神々や世界中の伝承の獣が暮らす天界。もともと天界には六柱の神がいただけだったのだが地球で暮らす人々が様々な神話を作り出したので天界に生み出されたのだ。

 だが天照大御神はラグナロクという単語を口にした。ラグナロクとは北欧神話で語られる終末戦争のことだ。ただ本来神々と巨人の戦いであるラグナロクは地球では起こらない。だがとあることがきっかけで今、地球にラグナロクが起こりそうになっているのだ。

 そのことを地球の民は知らない…


《麒麟視点》


 雑談配信の翌日、俺は魔力による空中走行を使って沖縄に来ていた。


「さ、配信始めるか」


 ドローンカメラを飛ばしマイクを服につける。そんなことをしているとマスコミが駆けつけてきた。


「宇喜多麒麟さんですよね。ダンジョンについて今あなたが思ってることを一言お願いします‼」


「麒麟さん、沖縄ダンジョンに挑まれるということですが今の心境を…」


 あっという間に囲まれた。俺は少々うんざりしながらも渋々答えていく。質問に答えてもらった人たちには離れてもらった。もちろん撮影の許可は出した。

 配信開始のボタンを押す。


「えー皆さん。おはよう、昨日言った通り沖縄ダンジョン攻略していくぞ」


・おはよー

・もう口調が違う

・まだダンジョン入ってないんだー

・早くダンジョンはいろー


「ちょっとダンジョンに入る前にひい爺さんの墓に参ろうかと思ってね。いちおう沖縄に来たわけだから。ちなみに映ってないけどカメラの後ろ側にマスコミの人たちがいるんで供養もかねて」


 そういって俺はひい爺さんの墓の前に来て墓石に刻まれている辞世の句をつぶやく。そして俺は一分ほど目を閉じた。


「それじゃダンジョンに潜っていくか。沖縄ダンジョンってあんまり人が来ないから最上層しか攻略されていないんですよ。つまり俺が初めてってことだ。ここのコンセプトは何かなっと」


 俺は完全鑑定を発動させダンジョンのコンセプトを見る。

 ダンジョンにはそれぞれコンセプトがあり基本的には全部バランス的に魔物がいる。基本これがスタンダードといってもいいだろう。コンセプトが違うのはまれだ。


「はは…まじかよ。これは自前の武器必要ねぇじゃん」


・ここのコンセプトって何なの?

・殿、そんなに驚いてどうしたんですか


 そんなコメントが流れていくが俺は忘れてそのままダンジョンに入り最上層から下に降りる階段のところで息を整える。


「すまん、あまりの衝撃で発表するのを忘れていた。ひとつ言えるのはこのダンジョンは軍人のほうが向いてる」


・軍人のほうが向いてるダンジョンって

・なんか予想できいたわ


「それじゃ発表するよ。沖縄ダンジョンのコンセプトは…太平洋戦争、だそうだ。詳しく言うとこの先は要するに先の大戦を体験できるんだと思う。どんだけ時間かかるんだよ…」


 俺がそう呟くとコメントが止まった。そして同接が急激に伸び始めた。

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