第10話

《麒麟視点》


「下釜さん!!寛大!!少し静かに!!例のパーティーを見つけた」


 俺がそう叫ぶと練習していた2人はこっちにきた。

 俺はこっそりと覗き込むと銀髪を腰辺りまで伸ばした探索者と武将ヅラをした探索者がいた。


「なーんで彼女が日本にいるんですかねぇ」


 俺は銀髪の探索者を見ながら呟いた。それに反応したのか寛大が首を傾げる。


「麒麟、あいつらのこと知ってんの?」


「あー銀髪の方は顔見知り…というかアメリカにいる探索者の友達…というか彼女に限っては従兄弟…」


 そこまで言うと2人ともちょっとわかったようだ。下釜が恐る恐る聞いてくる。


「麒麟君…アメリカにいる探索者の友達ってもしかして4人?」


「ええ、気づいたようですね。彼女がSランク探索者の1人で俺の従兄弟のシェスカ姉さんですよ」


 俺がそういうと2人とも声をあげそうになったが俺が無理やり口を塞いだ。下釜はちょっと顔を赤らめていたが気にしない。

 俺はもう武将ヅラの探索者を鑑定すると彼が擦り付け犯だった。

 彼はありったけの魔力を込めてスキルを発動させる。


「よし、現行犯だな!!バッチリ特殊カメラで撮影したぜ」


 寛大は仕事が早いな。俺はそれを支部長の携帯に送りつけると同時に彼がこっちに悲鳴をあげながら走ってきた。


「お助けぇぇ!!まだ死にたくないよおぉぉ!!」


 なんという棒読みっぷり…。彼が走り去ったのを確認すると俺は困惑するシェスカ姉さんに声をかけた。


「3ヶ月ぶりですね。シェスカ姉さん…いきなりですがあいつのスキルで呼び寄せられたイレギュラーモンスターが来ますよ」


 シェスカ姉さんは俺を見ると分かってるというふうに頷き俺の後ろの2人に目を向けた。


「自己紹介は後でするから2人も手伝ってくれる?」


「わ、わかりました!!」


 寛大が戸惑いながら答えると同時に呼び寄せられたモンスターが現れた。


「なんだまたこいつかよ!!シェスカ姉さん、ブレス避けてくださいね。武器が消滅しますから」


 そう呼び寄せられたのは昨日倒したクイーンドラゴンだったのだ。下釜の方をちらっと見ると足が震えている。


「寛大、下釜さんを見ていてください!!」


 俺がそう叫ぶと寛大は下釜さんを連れて影に隠れる。

 ドラゴンはブレスの体制に入っていたので俺は拳に魔力を纏わせながら横にいるシェスカ姉さんに声をかける。


「やつのブレスは俺が受け止めます。そのすきにシェスカ姉さんはやつを仕留めてください」


「わかった」


 その言葉だけでサッと後ろに下がる…と同時にブレスがきた。


「そのブレスは昨日みたぞ!!その威力そっくりそのまま返してやっからな!!」


 俺はそう言って拳を振り抜いた。拳とブレスのぶつかった衝撃で俺が着ていた上半身の制服が吹き飛ぶ。

 跳ね返ったブレスは反射する角度が悪かったのかドラゴンの手前に着弾。

 ダンジョン全体が大きな揺れに包まれたがシェスカ姉さんはそのまま後ろに回り込んで首を一閃した。


「ふう、終わったわね…あの男は逃げちゃったけど」


「あー、ダンジョン出入口で捕まってますよそいつなら」


 俺は何事も無かったかのように煙の中から出てくるシェスカ姉さんに彼が犯罪者であることを話した。


「というわけで俺があとは執行するだけなんで気にしなくても大丈夫です」


「そう…んじゃ麒麟に任せるわ。と、私これから麒麟の家に帰るから」


 ん?今なんて言った?俺の家に帰る?またまたご冗談を…


「あぁ別に冗談で言ってる訳じゃなくてこれから日本に私は住むからね」


「あーシェスカ姉さんのことですからね…わかりましたよ。とりあえずまだ帰らないでくださいよ。あと自己紹介忘れてます」


「そうだったわね。私は宇喜多シェスカ…母が日本人で父がアメリカ人。そして麒麟とは従兄弟になるわ。ランクはSよ」


 淡々と自己紹介するシェスカ姉さんに2人とも戸惑っていたが自分の頬を叩くと思いっきり頭を下げた。


「初めまして!!俺はそこの英雄様の友達やってる楠神寛大です!!」


「初めまして。私は昨日麒麟君に助けていただいた下釜鈴と申します」


 おおー下釜がめっちゃ丁寧だ。そして寛大はちょっとテンション上がりすぎじゃないか?あと俺の事英雄様と呼ぶのやめろ。


「えーっと…英雄様はやめてって言いましたよね?と、早く上戻りますよ。執行しなきゃいけないんですから」


「ははっ、いいな。麒麟、じゃあ行くか。私は鈴ちゃんを抱えるからそっちは寛大君を抱えてくれ」


 シェスカ姉さんはそう言って下釜を抱え上に向かって走り出した…というよりもはや空中を走ってる。


「あれは…考え無しにスピード出してるな…寛大、ちょっと本気で走るから目を瞑っていてください」


 そう言って俺は全力で走り出す。走ると言うよりも飛んでいくの方があっているだろう。何せ足裏から魔力を噴射しているのだから。

 3分もかからずに地上に出るとそこには武将ヅラの犯人、クラスメイトと先生、支部長、そしてダンジョン庁のお偉いさんが揃っていた。

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