第9話

《麒麟視点》


「て、なんでここに支部長がいるんですか。あ、さっきの電話の犯人について詳しく教えてくれるんですか?」


「あぁ、君だけ先に来たのかい。犯人の手口が分かったんだ。どうやらスキルで潜っている階層より下のモンスターを呼び寄せていたみたいなんだ。被害者と一緒に潜ってスキルを使い、イレギュラーが起きてパニックで逃げる…そういう手口だよ。少し前に2人組のパーティーが中層まで潜っていった。その2人組のうち片方が今回の犯人だ。見かけたら自然にあとをつけてみてくれ」


 そんな会話をしていると先生がクラスメイト達を引き連れて追いついてきた。俺は支部長に軽く会釈してクラスの中に戻っていく。


「それじゃ、今から潜っていくから注意事項を言うわね。さっきも麒麟君が伝えてくれたけど犯罪者を見つけたらすぐに出入り口に通報すること。自分の実力を過信して深く潜り過ぎないこと…麒麟君は間違っても深層まで行かないこと。2時間後にまたここに集合してね。はい、では解散‼」


 先生の言葉でみんなが一斉に潜っていく。俺は下釜を見つけそばまでいった。下釜が誘ってくれたもう1人を見ると下釜以外の唯一の友達、楠神寛大くすかみかんただった。


「おっす、これからよろしくな英雄様‼」


 眩しいほどの笑顔を見せてくる寛大に俺はすこし顔を引きつらせながらもうなづいた。


「これからびしばし指導してね‼私のえ・い・ゆ・う・さ・ま」


「う、うん。まずはその英雄様っていうのをやめましょうか。下釜さんは昨日約束してたし」


 俺がそういうと下釜と寛大は顔を近づけて何かを話していた。そして何か同意したらしく下釜がうなづいていたが気にしない。


「えー、なら中層まで潜ります。本当は下層で修行したいんだけど寛大の実力を考えて。それでは腰を失礼…」


 そういうと俺は下釜を右に、寛大を左に抱え昨日と同じ速度で中層まで走った。

 5分ほど走るともう中層の入口だ。


「中層入口ですね。ちょっと待ってください、2人には処理しきれないほどのモンスターがいるので」


 俺はそういうと魔力を銃弾の形にして思いっきりぶん投げた。銃弾がモンスターを蹂躙しているのを確認した俺は2人に向き直り鑑定を使った。

 あ、やべ。上位鑑定使っちまった。プライバシーは見ないでおこう。

 そう思ったのだが見ない努力をするだけで視界にはスリーサイズとかいろいろ表示されてる。


「寛大は…10分間素振りしてくれ。下釜さんはちょっとこっちで武器に魔法を纏わせる練習をしようか」


「おーし、分かった。下釜さん、そいつ潜在能力見抜けるから安心していいぞ。あとでさっきのやつ教えてくれよ」


 そういって寛大は邪魔にならないところまで移動してから素振りを始めた。

 俺は広告剣を取り出して下釜に渡す。


「麒麟君?この剣はどうしたの?」


「あー朝適当に広告紙固めて作りました。これは爺さんが言ってたんだけど武器に魔法を纏わせる練習をするときに、いきなり真剣でするのではなく紙などで作ったものからしたほうがやりやすい…らしいです。では早速炎を纏わせてみましょうか」


 いきなりそういわれて下釜は少し慌てるが試しとばかりに集中する。まぁ、なにも起きなかったが。


「無理だよ。まったくイメージがつかない」


「あー下釜さん筋がいいですね。もしかして一発でいけるのではと思ってしまいました。今の下釜さんは武器自体から魔法をだすイメージをしてましたよね?」


 俺の問いに下釜はちょっと嬉しそうに頷く。


「うん。だって纏わせるんでしょ?纏わせること自体は昨日麒麟君が目の前でしてたじゃない。それを思い浮かべたんだ」


「さいですか。まず武器から魔法を出すのではなく武器の表面に薄い空気層を纏わせて、その上に魔法をだすイメージですね。こんなふうに」


 俺はこぶしに炎を纏わせて見せた。ただ俺の炎はいつもの癖で青色だ。


「うわー、綺麗…。よし……っとできたよ」


 あぁ本当にすごい。俺は改めて昨日下釜を助け出せてよかったと思った。なぜなら潜在能力は俺と同等…つまり眠れるSランクというわけだ。

 そう感心していると俺の視界に2人組のパーティーが映りこんだ。

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