第8話
《麒麟視点》
俺は公演を終え1人教室に戻ったあと机に突っ伏した。それもそのはず麒麟はまともに人前で話をすることがなく、人前に出ようともしなかったからだ。
暫くするとクラスメイト達の足音が聞こえる…。その足音は全て俺の周りで止まった。
俺が顔を上げると目の前には下釜がちょっと顔を赤らめて立っていた。そのまわりをクラスメイト達がかこんでいる。
「あのー、なにか俺にようなんでしょうか?というか、なんで皆さんは俺の周りを取り囲んでるのでしょうか」
俺は困惑しながらもそう声を漏らす。
「麒麟君、良かったら午後から一緒にダンジョンもぐらないかな…」
「あー、なんか午後からダンジョン潜るんだっけ?下釜さんは…ほら、昨日俺が教えてあげるって、晋也さんにも頼まれたんですから。それに…なんで顔を赤らめて…もしかして昨日の…」
俺はふとそう口にするとますます顔を赤らめた下釜が叫んだ。
「それ言われたらお嫁にいけないよー!!」
「あ、はいそうですか。それでほかの皆さんは…あ、午後から俺と組みたいんですか?それでしたら下釜さんにあと一人選ぶの任せますんで…」
そこまで言ったとき俺の携帯に電話がかかってきた。相手は東京ダンジョン支部長。
俺はちょっと断りを入れてから電話をとる。
「もしもし、宇喜多です。支部長が電話してきたってことは例の件ですよね?」
『話が早いね…あぁ以前から問題になっていた連続擦り付け犯を見つけた。ただ証拠が全く無いからまだ捕まえなれないんだが、今ダンジョンに潜っているようだ。君は大丈夫かもしれないが午後から1年生でダンジョンに潜るんだろう?もし犯行現場を見かけたらダンジョン出入口の受付に通報してくれないか』
「わかりました。というよりスピーカーにしてるので全員聞いてますけどね。直接頼んでください」
『君は相変わらずだね。よし、そこにいる1年生のみんな、先程も麒麟君に言ってたから分かってると思うがダンジョン内で擦り付け行為をしている人を見つけたら通報してくれ。そうしてくれればダンジョンの外で刑を執行できる。犯人は過去5回に渡って擦り付け行為をしていたんだが上手く証拠隠滅されていたんだ。有無を言わさず捕まえてすぐに麒麟君に刑を執行してもらう。頼んだよ』
支部長がそういうとクラスメイトはしっかり返事をした。それに対し支部長は『じゃ、ダンジョン探索頑張ってね』と言って電話を切った。
「ようやく捕まるのか…どこに潜ってるかにもよるな…ま、捕まったら公開で執行になるんだろうけど…嫌なんだよなぁー、絶対痛めつけてから殺してって言われるやつじゃん」
俺がそんな独り言をつぶやくと囲んでいたクラスメイトの1人が恐る恐る聞いてきた。
「え?擦り付けした犯人が麒麟君にボコされることは聞いたけど…そこまで擦り付けってやばい犯罪なの?」
講演では俺が刑を執行するとまでしか話してない。なので未成年の探索者は擦り付けをした場合の刑罰を知らないのだ。
「あーそうか。この学校では擦り付けが犯罪とまでは習うけど、どういう刑罰がなされるのかは習えないんでしたね。ダンジョンにおける擦り付け行為は基本的に故意的なものは犯罪です。しかし刑罰については被害者の怪我の程度によって変わりますね。これまで俺が執行したなかでの重いのは最も悪質な擦り付けを行った人でその人には四肢を切り落とした後に逝ってもらいました」
サラッと衝撃的な発言をする俺に全員が後退りをした。俺はそれに苦笑いをしながら
「ま、まあ故意的に擦り付けをしなければいいだけですし。例えば狭い場所で戦いにくかった探索者が、広い場所にモンスターを誘導する過程でモンスターがほかの探索者を襲ったとしてもそれは不注意なので大丈夫です。ただ相手が死んでしまったりした場合は何日かダンジョンに潜れなくなりますけど」
そんな感じで話をしていると先生が入ってきた。
「はーい、席着いてね。麒麟君は講演お疲れ様でした。今からダンジョンでの3人組を決めますね。ちなみにこれは卒業するまで基本的に変わりませんから慎重に選んでください。なにか質問がある人…て麒麟君、何ですか」
「はい。えークラスの皆さんには伝えましたけど改めてもう一度伝えます。これは先生にももしかしたら関係あるかもしれないので聞いておいてくださいね。ここ半年、悪質な擦り付けを行っていた犯人の行方をつかみました。しかし証拠が不十分なので捕まえられない状態です。その犯人は今から潜るダンジョンにいるそうなので、擦り付け行為を見たら特徴などをすぐに通報してくださいね。以上です」
先生は「分かりました」とだけ言いあとは生徒に任せるようで外に出ていった。
俺は下釜と先生に先にダンジョンに向かう旨を伝え出入口に向かうとそこには支部長がいた。
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