第7話

《鈴視点》


 私は朝、囲まれていた。理由は明白、昨日の配信だ。


「鈴ちゃん、昨日は災難だったね」


「宇喜多の奴入学した時からずっと陰キャの印象が強かったけどSランク探索者だったなんて驚いたぜ」


「麒麟に振り向いてもらえるように頑張りな。昨日の配信でお前の視聴者は麒麟に恋したこと知ってるんだから」


 そんなふうにクラスメイトにもみくちゃにされていると、担任の先生が入ってきた。私にたかっていた人はすぐさま席に着いたが誰かが麒麟君が来てないのを不思議に思ったらしく


「先生、そういえば昨日の英雄、宇喜多君はどうしたんですかー」


 そういっていたが先生の反応は「今日は仕事があってこれないという連絡を貰いました」と言って淡々とホームルームを始めた。


「今日の日程については午前中に全校生徒で探索者に必要な知識などを教えてもらいます。配信する予定なのでしっかり話を聞くようにしてくださいね。午後からは3人づつグループをつくってもらってダンジョンに行きます。午後からは麒麟君も来れると連絡をもらいました」


 私は改めてSランクである麒麟君を尊敬した。私が目指すところは遠く感じる気がした。


「なにか質問はないですか。ないなら体育館に集合してください」


 そう言って先生は教室を出ていき、それに続いてクラスメイト達も移動し始めた。私もそれに続いて移動する。

 体育館に来て暫くすると校長先生がでてきて挨拶をはじめる。


「えー配信を見てる方、届いてるでしょうか。そいて本校の生徒諸君、今から年に一度の特別講習を始める。例年はこの学校の先生が講演をするのだが、今回は特別にある人に来てもらった」


 その言葉にコメント欄も会場も少しざわつく。その間にスクリーンには特別講師のプロフィールが映し出されるとともに私の昨日の配信が流れる。

 その時点で私は誰が特別講師なのかが分かった。


「知っている人も多いと思うが昨日、本校の生徒で人気配信者でもある下釜鈴さんが絶体絶命の危機に陥った。それを救った英雄…そして本校の生徒で日本に一人しかいないSランク探索者の宇喜多麒麟君に講師をしてもらう」


 校長先生の言葉で全校生徒が歓声をあげた。


《麒麟視点》


「では、麒麟君。登場してくれたまえ」


 校長先生の言葉で俺が全校生徒の前に姿をあらわす。するとあちこちから英雄様と歓声が聞こえてきた。


「えーご紹介に預かりました。探索者学校1年、Sランク探索者の宇喜多麒麟です。本日はよろしくお願いします」


「麒麟君、まずは昨日のドラゴン討伐お疲れ様。どうだったかな、あのドラゴンは」


「あー正直に言うと爺さんとの訓練よりは楽でしたね」


 俺がそういうと校長先生は信じられないという顔をしていたがそれも一瞬のこと。


「あれだけ派手に戦ってか…これは今日の話も期待できるね。早速だけど麒麟君は毎朝素振りをしているそうじゃないか。どんな感じでやってるのかね?」


 そういわれた俺は今朝の片手剣を取り出し朝やっているように素振りを披露した。ただ全力で素振りをしてしまうとこの空間を破壊してしまうので加減はしたが。


「まあこんな感じですね。あーめんどくさいんでさっさと進めていいですか」


「すまんすまん。私はこの辺で退席しよう」


 そういい校長先生はステージを下りて行った。俺は生徒全体を見渡しながら速攻で考えた講演を始める。


「では早速始めていきます。早速ですが探索者としてダンジョンに潜るときに大切なことを3つ紹介しますね。一つ目がしっかりした準備をしたうえで潜ること。これは当たり前です。準備をしっかりしておかないと最悪ダンジョンの栄養になる可能性がありますからね。二つ目にほかの人の迷惑になるようなことはしないこと。これも当り前ですね。ダンジョンには自分だけではなく、ほかの探索者の人たちもいます。その人たちの迷惑なことは絶対にやらないでください。最後が法律でも禁じられている、故意にほかの探索者にモンスターを擦り付けないことですね。もし破った場合にはSランク探索者…つまり俺が痛めつけます。実際今年に入ってから三件ありました。もし被害者が万が一けがをしたりなくなったりしたらその分痛めつけられますからね。なすりつける予定のある方は参考にしてください。俺が全力で痛めつけますけど」


 その言葉に会場は息をのんだ。ダンジョン関係の法律はこの一つしかない。加害者は捕まるとSランク探索者が締め上げるのだ

 その後も俺は順調に講演をすすめていき終了した。

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