第4話

《麒麟視点》


 俺は下釜を横抱きにしたままギルドまで全力で走りぬいた。恐らく配信のコメントは阿鼻叫喚だろうがそんなのは気にしない。

 ギルドにつくとそこには40代くらいの渋めの男性がほかの探索者とともにモニターを見ていたがすぐにこちらに気づいた。

 その男性には見覚えがある。時々、下釜の配信に出ている下釜晋也しもがましんやさんだ。彼は世界トップシェアを誇る探索者向けの会社の社長でもありダンジョン配信という新たなジャンルが出てきてからは配信向けの機材なども取り扱っている。

 俺は下釜をおろしてやると職員の女性にドラゴンを出しながら言った。


「すみません。依頼されていた正体不明のドラゴン。討伐完了しました。とりあえずここで詳しく見ますね」


「了解いたしました。5分後にダンジョン庁の調査員が来られますのでその時にお願いしますね。それと鈴さんの視聴者も気になるでしょうから配信はそのままでお願いします」


 職員はそういうと奥のほうに消えていった。

 晋也さんは職員が消えていったのを確認して頭を下げた。


「初めましてだね。私は鈴の父親で探索者整備会社の社長をしている下釜晋也です。麒麟君、この度は私の娘を救ってくれたことほんとうにありがとう。君が駆けつけてくるのが遅かったら娘は多くの視聴者の前で殺されていただろう。私も唯一の身内を失っていたところだった。だから、本当にありがとう」


 晋也さんの言葉が言い終わるとその場にいた探索者たちも次々にお礼を言っていく。俺はちょっと恥ずかしくなりちらっと下釜の配信画面に映っているコメントを見た。


・下釜社長、本当に心配したんだろうなぁ…

・過去に奥さんをダンジョンで亡くしてるから娘まで亡くすわけにはいかなかったんだろう

・鈴ちゃんが死んでしまったら会社の新商品を紹介できなくなるからな


 そんなコメントであふれかえっていたが俺は少し微笑みこう返した。


「お礼は受け取りましたから。その頭を上げてください。下釜、鈴さんも無事だったわけですし。その、Sランク探索者として困っている人を助けるのは当然のことですから。そもそも依頼うけて討伐に潜ったら鈴さんが窮地に立たされていたわけですし。正直なところ武器を失うのは想定外だったんですけどね」


 俺はそのあとも晋也さんと話していたら調査員の人がやってきた。


「私はダンジョン庁の調査員です。麒麟様が討伐されたドラゴンの鑑定結果と生態調査のために派遣されてきました。早速ですが鑑定をほかの人たちにも見えるようにしてお願いします」


 配信していることを了承したうえで視聴者にも伝わるように調査員の人は挨拶をして俺の横に来た。

 俺は鑑定の上位互換である上位鑑定を使いさらにドラゴンの情報を開示した


【種族】クイーンドラゴン

【特殊スキル】ブレスによる確定武器破壊

【スキル】威圧 咆哮 武器破壊 ブレス 魔力吸収 再生 魔法攻撃無力化


「これは…Aランク探索者が100人いても倒せるか怪しいですね…。仮に倒せたとしても壊滅的な被害を受けるのは確定しますね。信じられないのですが…これは持ち帰って詳しく調べさせてもらうので失礼しました」


 そう言葉を残しドラゴンをマジックバックに入れ帰っていった。そこから1分間の沈黙が続いた。

 配信でのコメントもきえ誰もが唖然としている中一人の探索者がようやく口を開いた。


「ブレスによる確定武器破壊…やばすぎるだろ」


 その一言で騒ぎ始める。

 俺は爺さんがくれた片手剣が寿命ではなくスキルで破壊されたと知って愕然としていた。


「魔法の完全無効化…なんなんだよそれ…最強すぎる」


 俺がそう呟いていると晋也さんがコメントを見ながら語りかけてきた。


「改めてあのドラゴンがどれだけやばいものかを認識したよ。君の武器が蒸発した理由もわかった。あの武器が1億円近くすることに驚いていたがあれには劣るかもしれないけど会社で一番の剣を無料で進呈しよう」


「麒麟君、お願いだけどお父さんからの最大のしてあげれることなの。受け取ってほしいわ。あ、配信をしたいって言ってたわよね?お父さん、彼に配信機材もプレゼントしたらどう?それと今日の配信は、このまま雑談配信ということでいくね」


 雑談配信に変更することを宣言し晋也さんに配信機材ももらえることになった。それでせっかくSランク探索者がいるからだと質問などに答えていくことになったがその最初に下釜からお願いがあった。


「麒麟君、その…もしよかったら戦い方おしえてくれないかな。私、もっと強くなりたくて」


 それを聞いた俺は渋々了承し下釜が弟子になった。

 晋也さんはどうやら俺がなぜそこまで強くなれたのかということを視聴者を代表して申し訳なさそうに聞いてくる。


「麒麟君、どういうことをしたらそこまで強くなれるんだい?過去を…もしよかったら聞かせてくれないかな」


 俺は悩んだ挙句自分の過去を語り始めた。

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