第2話
《とある鈴の視聴者視点》
俺の名前は
「ようやく癒しの時が訪れる」
俺はそんな気持ちで配信が始まるのをまった。ちなみに俺自身も探索者だが仕事が忙しすぎて低ランクのままだ。
ようやく配信が始まり俺は読まれるかわからないコメントをしようとした瞬間爆発音が聞こえその手を止めた。
何事かとみてみると真っ白いドラゴンが画面に映ってるではないか。鈴ちゃんが泣きながら助けを求めているのを聞きながら俺は探索者ギルドが家の前にあることを思い出しスマホ片手に飛び出した。もちろんこのことをコメントしてだ。
「誰かいるか‼緊急事態だ‼」
ギルドに入りそう叫ぶ。ほかの探索者が何事かとこちらを見るのに対しギルド職員は駆けつけてきた。
「そんなに血相を変えてどういたしましたか?何があったのか聞かせてください」
「俺はさっき始まった下釜鈴chのダンジョン配信を見てたんだが中層だというのにドラゴンが出てきてな。このままだと鈴ちゃんが殺されてしまう‼」
俺はそう言いながらスマホの配信画面を職員に見せた。そのほかにも聞いていた探索者たちがギルドに設置されているモニター画面にそのライブ映像を流した。
「それは、ただのドラゴンじゃありません。ダンジョンの異常事態で一般的なドラゴンとは違います」
「そんな…なら鈴ちゃんはこのまま殺されてしまうのか⁉」
俺は職員から聞いた情報をコメントに書き込みながらそういった。モニター画面を見ている探索者も絶望の声をあげる。しかし職員は続けてこういった。
「いや、もうすでに世界に5人しかおらず日本に一人だけのSランク探索者に依頼しました。ダンジョンに入ったことは伝えられたので下釜さんの悲鳴、あるいはドラゴンの咆哮が聞こえ次第全力で助けに行くでしょう」
Sランク探索者…俺はその言葉を聞いて少し安心した。
Sランク探索者…それはAランク探索者とは比べ物にならないくらい強い探索者のことだ。その強さゆえに世界各国からの依頼が絶えないと聞いたことがあり探索者にとっての憧れの存在だ。世界に5人しかいないが4人はすべてアメリカに住んでおり1人だけがこの日本に住んでいる。
俺はスマホでの視聴をやめてモニターのほうをみた。
モニターの中ではドラゴンが腕を振り下ろす瞬間だった。
間に合わなかった…。誰もがそう思ったが何者かによって攻撃は防がれた。
『もう大丈夫だ。ドラゴンは俺が倒す』
男の声が聞こえ見ると鈴ちゃんはその男によって助け出されていた。どうやら二人は知り合いらしい。ギルド職員はモニターの男を紹介するように声を張って言う。
「彼が世界最年少のSランク探索者…宇喜多麒麟さんです。彼は高校一年生の…英雄です‼」
そう宣言したと同時にモニターから彼の声が聞こえた。
『安心しろ下釜、お前は死なせやしない。お前の配信を見ている視聴者の為にも』
俺は彼が本当に高校一年生なのか疑うのをやめその配信に見入った。
《麒麟視点》
俺は内心緊張していた。下釜が配信中だと知ってうっかりかっこつけたが元々陰キャ寄りの俺だ。約8万人の前でかっこつけてしまったと焦っていたらドラゴンがしびれを切らしたのかブレスを放ってきた。
「まじかよ。俺一人なら避けたんだけど流石にまずいんでね。久々に斬りますか」
そういい持っていた片手剣に魔力を溜める。片手剣が熱量で溶かされないように全力でだ。
するとどうだろうか。片手剣から虹色の光が出始めたではないか。俺はそれを思いっきり斜め上に斬り上げた。
スパァァァン‼気持ちのいい音を立てながらブレスを相殺する。次の瞬間、片手剣が砕け散った、というより寿命が尽きて蒸発した。
「うわ、マジか…爺さんがくれた剣が。そうか、いままでありがとうな片手剣…もう武器はないけどどうしようか…。一応下釜が配信してるから楽しませたほうがいいか?」
そう考えながらもドラゴンの攻撃を素手で受け止めていく。もうこの時点で十分見せ場は作ってるのだが配信なんかしたこともない俺は知らなかった。
ぐるぐる考えているとドラゴンが連続攻撃をやめブレスの構えをとった。どうやらこのままでは俺は殺せないと判断したらしい。今までになく力の籠ったブレスだ。
「いいよこいよ…。次で決着をつけてやる」
そういいながら右手に魔力を纏い殴れるように構えた。一瞬の静寂の後にブレスを放ってきたドラゴンに対し俺は思いっきり右こぶしを振りぬいた。
ズガガガァァン‼
ダンジョンが珍しく揺れる。俺は手ごたえを感じドラゴンを見た。
「まじかよ。ぎりぎりで耐えやがったぞ。いや、でも反応が弱くなってる。勝ったな。さて飲み込まれる前に鑑定でもしときますか…。一応声に出して読んでみよう…は?」
俺は鑑定を使用しすでに息絶えたドラゴンをみた。配信が続いてることは知っていたので声に出して読もうとして言葉を失った。鑑定でみたドラゴンのステータス…そこに記してあったのは…。
「名前以外…?ってあり得るのかよ…」
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