手記
「うわぁ………」
小次郎さんはカタネを鍛え始めた。iは手記の翻訳……俺はやることが無かった。暇だからiの作業進行を見たら、使用人がページをめぐり、紙を抑え、iが両手で書いていた。凄く効率が上がっている。そのかいあって5日間で書き終えてしまった。
その間俺は暇だったので霧と一緒に農作業してたりした。近隣の住人が気さくに話しかけてくるあたり本当にここの人達は人当たりが良いんだな。
それはさておき、書き終えた手記を小次郎さんと一緒に読む。ここにiの故郷への手がかりがあるかもしれない。
だが1000年近く続いている名家なこともありその量は膨大であった。三日三晩読みまくって要点をまとめる。
雨宿家は奈良時代から続く妖怪退治の仕事を持つ祓い屋と呼ばれる者だった。
雨宿家は妖怪や怪異の力の源が異世界だと考える。
シオンと言う長寿の女性と出会う。
平安時代に彼女の力を借りていくつかある異世界に雨宿家の人達は分かれていった。
世界の各地に異世界に繋がりやすい場所がいくつかある。
後はこちらにきたその後の調査や魔物退治等の技や特徴等が記録されている。
俺達のほしかった情報は確かにあった。
「シオン……長寿って事はまだ生きているのかな」
「でも1000年以上も前じゃ」
「子供とかいないかな。一人ぐらい作ってそう」
「それよりも異世界に繋がりやすい場所があるみたいだしそっちを優先しよう」
「そうだな」
カタネの言う通りつながりやすい場所を探すことが一番の早い。そうとなればまずは場所を特定することから始めよう。手始めに
「もう一度手記を読んでそれらしい事が書かれてそうなやつを探す」
手記のや魔をを見る。iが翻訳とは別に要点だけをまとめてくれた本があるのでそこから探すことになるがそれでも何十冊もある。
「読み探す必要はありませ」
「i? 必要無いって?」
「私が全て記録しています。該当する情報は6つあります」
そう言って本をいくつか持ってページを開く。見てみると確かに異世界に関する事が書かれていた。
「凄い記憶力だね」
カタネは感心している。確かアンドロイドは記録しているからデータを消さなければ忘れることは無い。iはありがとうございますと褒められたことを素直に受け取る。
「亜空……転生……転移……魂……神隠し……門……」
亜空は世界と世界の狭間。
転生……死んだ時、別の存在として生を受ける際別の世界にその魂が行くことがある。小次郎さんがその例。
神隠し……何ならかの理由で別の空間、世界へ行くこと。
門……世界と世界を繋ぐゲート。記録として残っているとは地獄の門が開き、死ぬのを待たずに閻魔の裁きが決定した者がいるときに開く。怖……
「ん?」
300年前の記述に鳥居と呼ばれる門からこの世界にやってきた人がいる。
「鳥居と呼ばれるモノがあるらしい。まずはそれを探………」
言葉が続かなかった。何故ならカタネが憎悪に満ちたような目で本を睨んでいた。
その手記は解読されたものではなく最近の、先々代の物だった。
そのページをつまむ手には力が入っていてシワになっている。あと少し動かせば破れてしまう。
「…………?!」
そのページを見る。そこに書かれていたのはとある吸血鬼に関する情報だった。そこには絵も書かれており、その姿はギルドにいるとSランク専用の依頼リストで見たことがあった。
Sランク賞金首 魂血のアルバート
何百年も前から生きている吸血鬼。各地に現れては魔族、人間、獣人問わず殺し、死体を回収する。その死体が見つかる時は……大抵生物の形をしていなかった。
王都でも昔、ギルド合同討伐隊を編成。しかし結果は振るわず逃した。
逃げの1手ではあったものの、当時のSランク2人と10数隊のAランクパーティから逃げ切った実力は本物としてSランクの賞金首となり今でも倒されていない。
この手記は当時の当主が書いたものだ。
『生き物は死んだら生き返らない』
『魂が霊になるか、この世から離れたときが完全なる死』
『絶対に覆せない世界の理』
『奴の力はそれを侮辱するものだった』
『魂が無ければ自身の血で代用しようと考えた』
『自身の血に魂の情報を転写し、遺体にいれることで擬似的に息を吹き返す』
『何度も失敗し、その度に死体を積み重ねる』
『ギルドの強者達でさえ倒せなかった』
『私は命を引き換えにしてでも守ると誓った』
『私では力不足だ。それでも切り札がある』
『かつて祓屋が使っていた【封印術】』
『命は断てなくても、いつか倒せる者が現れるその日まで』
『私では50年前後が限界だろう』
『だからそれまでに願う』
そこで途切れている。
「日付は55年前……既に復活している可能性が高い……」
封印された場所はここから少し離れた場所だ。また同じ被害が出てもおかしくない。
「こいつはまずいな。カタネ、一度戻ってギルドに知らせよう。いつ封印が解かれてもおかしく」
「もう封印は解かれてる」
「え?」
カタネは手記から手を離す。ゆっくりと拳を握りしめた。すぐにでも爆発しそうな感情を抑えるように……それでも漏れ出す憎悪が表情となって現れる。
「アルバートは……兄を殺した」
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