iの爆弾クッキング

 凍らして動けないスケルトンが壁の役割をして他のスケルトンからは見えなくなったので墓石の後ろに潜む。


「今回は物が無いので器は氷で代用します。最初に中が空洞の氷のボールを作ってください」


 言われた通り氷のボールを作る。空洞と言う点が難しいがそこはナイフを火の魔法で熱して差して内側から溶かし水を抜けばできる。


「その穴は塞がないでください。次に穴の空いた台の上に乗せて下に水の入った入れ物を用意します」


「小さい柱4つでも大丈夫?」


「はい」


 穴の空いた氷を4つの小さな氷の柱で支え下に向けてその下に水を用意する。


「その水に電気を流します」


 言われた通り指を入れて雷の魔法を凄く弱めで使う。するとiが指を入れてくる



「1.06V、5.23mA……もう少し強くお願いします」


「わ、わかった」


 え、なにいまの。ぼると? みりあんぺあ?


「……そのままを維持してください」


「うん?」


 今自身が何をしているのかわからない。カタネも困惑しながらも興味津々で見ている。すると今度は氷ボールの中に指を入れる。


「爆弾作り、なんだよね? 火薬は? ガスは?」


「可燃性ガスならボールの中にたまりつつあります」


「「え?!」」

 

「電気分解と言いまして、水に電気を流すことで水素と酸素に分解してます。魔法の電気でも可能なのか科学的にはわからないのでそこは運でしたが大丈夫でした」


 暫くして最後に穴を氷で塞いで爆弾が完成した。これを複数作った。


 空洞の氷のボール。これが爆弾だと誰が思う? 思わない。どうして水が爆弾に変わるの? どういうこと? え?


「これって本当に爆弾?」


「ちゃんと爆発するんだよね?」


「はい。水素が漏れて無ければ後は火で爆発します」


「なんか軽い気がする」


「水素は空気よりも軽いです」


「空気に重さなんてあったんだ」


 既に何度めかの意味不明発言。iの知識は、iのいた国はきっとこの国では比べ物にならないぐらい発展してるのだろう。


「ともかくこれで爆弾が作れた訳だ」


「いま思ったんだけど爆弾を作れてもどうやってあちこちに設置するんだ? ここにはいなくても別の方角にはいるけれど?」


「言っただろう。爆弾があればって、ちゃんと考えてある」


 カタネのその発言に対して俺は答える。数年間サポート役に徹していた俺の経験からがくる安全策。


「知能が無くてもあっても厄介だけど中途半端ほど楽な奴はいないさ」


 俺は作戦を伝える。二人は納得したようでカタネは「いい案だ」と喜ばしく受け取ってくれた。iはなるほどと言った感じで「勉強になります」と言ってくれた。


「《ブースト》」


 身体強化魔法だ。二番目にポピュラーな魔法だろう。魔法使いはこれを全員にかけられるが俺は自身にしかかけられないのが残念だ。それは置いといて俺は複数作った氷ボールの中で一番大きい物を持つ。二人は小さいのを持つ。


「行くぞ!」


 墓石の陰から飛び出して爆弾をスケルトンジックのいる方角へ空に向かって投げる。


「《ファイア》!」


 火の玉を爆弾に向かって放つ。火の玉は氷を砕き爆発を起こす。一番大きいからか鼓膜が破れそうになる程の爆音。咄嗟に耳を塞ぎたいがここからが勝負!


 iとカタネがあちこちに小さい爆弾を投げる。それを落ちる前に《ファイア》で撃ち抜いて爆発を起こす。威力はだいぶ低いがそれでも爆弾、音は一級品だ。


 2回目の爆発を合図に俺たちは走り出す。道中のスケルトンは各々の方法でなぎ倒す。襲ってくるものは当然いる。しかし襲わずにあらぬ方向を向いているスケルトンもいるのだ。

 スケルトンジックは俺達のいる方角がわかっていた為にスケルトンを多く配置していただろう。それでもあまりにも簡単に、そして最速にスケルトンジックの元へ向かうことができる。


 何故こんなにも楽かと言うとスケルトンジックは困惑しているからだ。一方向からしか攻撃が来ないためそこを重点的に警戒していたと思ったら空で盛大な爆発。当然目立つ。するだろう。その視線誘導を利用して他の投げられる小さな爆弾を視界から外しあちこちで爆発させることで多方位から攻めてきているように錯覚させたのだ。


 スケルトンジックは混乱をおこしスケルトンにあらゆる方向に行くように指示。その結果間近にいるスケルトンの一部が攻撃を仕掛けないと言う状況になる。


 スケルトンジックは知能があっても高くない。その為囮や揺動を見破れない。


 スケルトンはスケルトンジックの指示の下動くときはそれ以外の行動をしない。


 その2つの弱点をついて一気に攻めたてる。


 視界に現れるスケルトンジック。ボロいローブに身を包んだ骨。あちこち体や顔を動かしていたがこの場では目立つ格好である俺達が現れたことでその奥行きのある存在しない目を向ける。左手を前に出し人差し指を俺達の方へ向けた。

 それと同時に俺も右の掌を前に出す。


「《ファイア》」

「《フレア》」


 2つの炎が両者の間でぶつかり合う。

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