情報収集

 俺とi(これでアイと読むと教えてもらった)は王都エクスバータにある冒険者ギルドの相談窓口にてiの情報から知ってそうな事を教えてもらおうとしたが、


「結論から言いますと、私達も日本と言う国は知りません」


 アランさんは知らないらしい。そうか。何かわかると思ったんだけどな。iはここに来る前の事をなにも覚えてないらしい。記録がないとか言うみたいだけど。


「雨宿家の人達に聞いてみるのはどうでしょう?」


「雨宿家、ですか」


 雨宿家と言えば有名な貴族だ。謎の文字でなおかつ名前の前に家名がくる特殊な一族。代々戦いの才能を持った子が産まれ、どの時代でも名をはせていてなおそれを鼻にかけず身分の低い人にも平等に接し、人当たりも良い。憧れる人も少なくない。


「なんでも先祖が日本人と言う事らしいです」


「無理ですよ」


 横で聞いていた暇そうな受付嬢がそう言う。


「どうして?」


「どうしてって、私一度聞いたことありますもん」


「ええ!」


「なんて返ってきたんですか?!」


 俺もお姉さんも食い気味に反応する。しかし、期待されても困ると手を振る。


「わからん! とだけ、なんでも残された手記が古すぎて解読が困難なうえに仮に解読しても何百年も前、今生きている貴方が知りたい情報なんて出てこないと思いますよ」


 詰みかな? 確かに、自分の事を知るには今の情報が必要だ。何かわかると思ったが、


「i、残念だな」


「その手記が日本語、または日本の古文でしたら読めます」


「へー」


「へーって、興味なさそうね、聞いたことあるって事は知り合いか何か?」


「お見合いの話が一度あったの、どっちも『結婚願望無し』で終わったし、手紙でも送りましょうか?」


「流石はツテだけでギルドに居座ってるシーカ家の令嬢……」


 その後シーカさんに雨宿家に手紙を送ってもらえるように頼んだ。


 その後も情報交換とかで調べてみても【日本】を知るものはいなく、そんなこんなでなんの情報も得られないまま昼になる。


「腹減ってきたな。そこの飯屋で食おう」


「わかりました。私は外で待っています」


「え、いやiも一緒に………」


「無一文です」


「………そういやiが朝食をとってるところ見てない」


「必要ありません。なので外で待ってます」


「食事を必要としない生き物なんていないよ」


「アンドロイドは生き物ではありません。機械です。食事は必要とせず、メンテナンス、ブルーカウ人工血液の交換、必要であればパーツ交換、修理です。電力補充は今は太陽光発電だけ、省エネモードで動いています」


 うんわからん。理解不能。


「食事はしないってことはわかった。うん。店の前で待っていてくれ」


 頭がパンクしそうで整理しようにもできないまま店に入る。すぐに食べられるサンドイッチやスープを注文する。

 食事を必要としない、あんどろいどはきかい。そんな種族なのかな? そのわかり、やらなければいけないことはあるみたいだし。メンテナンス。んー、わからん!


 いや、今は考えるのはやめよう。彼女のことは知る人がいない限りどうしようもない。今は俺の今後の事を考えよう。



「お姉さん、どうしてお店の入り口の横に立ってるの?」


「レクさんの食事を待ってるからです」


 冒険者ギルドにパーティ脱退届け、はテラス達が既に出しているだろうから次ギルドに来たときは俺自身の個人ランクでの活動になる。


「お姉さんはご飯食べないの?」


「はい。必要ありません。それに無一文で入店するのは迷惑です」


 ただ数年間パーティとして活動していたから再試験か。俺一人でどこまで行けるだろうか


「無一文? だから待ってるの? そのレクって言う人ひどい! 自分だけ食べて綺麗なお姉さんを待たせるなんて!」


「いえ、無一文だから待っているのではなく」


 ……………………………


「たとえ無一文でも、お腹空いてなくても、一緒にご飯食べるの!」


「私は食事できないのでここで」 


「iごめん、やっぱり入ってくれません? ただ一緒に座ってるだけで構いませんので、相席だったら俺が二人分食えばいいだけの話だから。お願いします」


「わかりました」


 iって凄い目立つからこれ以上は俺の尊厳にかかわってくる。iは表情変えず入店し俺と相席になる。丁度サンドイッチが届いた。


「お嬢さんはどうする?」


「彼女は少食なので、少なめのものをお願いします」


「それじゃあ同じサンドイッチでいいかな?」


「それでお願いします」


「水もお願いします」


 店員は注文をとってその場から離れる。


「ありがとうございます。まだ文字を解析できていないゆえに、何を注文すればよいかわかりませんでした。サンドイッチ代、その他の恩はできる限り早くお返しします」


「別に構わないさ。それにしても言語は同じなのに不思議だよな」


 そう、iはフラル語この国の文字が読めない。今朝知ってびっくりした。学習本一式あれば数分で覚えられることにさらにびっくりした


「これ、先に図書館行くべきだったかなぁ」


「食べ終わったら行きますか?」


「そうしよう」


 彼女はサンドイッチと一緒に運ばれてきた水を飲む。一応水は飲むんだ。 


 現時点でわかっていることは、何一つない。が、わからないことは増えた。謎すぎる。


 着ている服もここらじゃ見ないものだし、違和感を感じる。彼女の歩く姿は常に一定。何と言うか、をしているような感じ。表情も変わらないし。文字も俺達とは違うみたいだし、していた。タダに等しいけど。それが当たり前の場所で育ったんだろう。


 何から何まで違う感じがする。彼女だけ世界観が違うような。






 ふと思う。謎と言えば俺のスキル【鎮魂歌】この世界で確認されているどの文字でもない。彼女の所はどうなのでしょうか?



「i、これって読める?」


 俺はギルドカードを取り出しスキル欄を見せる。






鎮魂歌ちんこんか、日本語です」
























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