15-3.誓い




「いや、美姫と一緒にやりたいんだ」



「だからそれは無理なんです......」



 伏せようとする美姫の頬にてのひらを添えて、悲しみで満たされてしまったその顔に笑みを向ける。



「六十才とか七十才になって、早乙女財閥の経営が一区切りしたくらいに、二人で一緒にやれたらなって」



「えっ」



 驚いたように見開かれた瞳に正臣が映り込む。なんだが急に恥ずかしくなって正臣はその瞳から顔を逸らした。



「んだよその顔......」



「六十才、七十才? それまでずっと一緒......?」



「い、言わすなよ......お前と付き合うんなら、そこまで覚悟してるって言ってんだよ。ああもうっ!」



 キョトンとして察しが悪い美姫に、照れ隠しするように頭をきむしる。



「お前とそのっ......なんだ、結婚まで考えてるっていうか......」



「結、婚......?」



 ぽけっとした美姫が呟いてしばらくすると、火がついたように白い肌が真っ赤に染まった。



「けけけ、結婚!?」



「なんだよ......イヤか?」



「そ、そんなことないですっ! 嬉しいです! 凄く嬉しいんですけど、やっぱり......」



 自分でも、びっくりするような行動を取ってしまった。


 ごちゃごちゃうるさい美姫の唇に自分のものを重ねて大人しくさせる。


 柔らかくて瑞々みずみずしい、熱い美姫の唇が自分のものを押し当てる度に形を変える。



「......夢とか将来とかどうでもいいんだよ。オレの幸せはオレが決める。オレはお前と死ぬまで一緒にいたい。それがオレにとっての幸せなんだよ」



 しばらく唇を重ね合った後、顔どころか耳まで真っ赤にした美姫から離れてそっぽを向く。



「本当に、いいんですか......?」



「だから、いいって言ってるだろ」



「私、結構わがままですよ? 正臣くんが他の女の子と話してるの見ると、ムッとしちゃうし......」



「だから、大丈夫だって」



「......なら私も、素直に......なります」



 胸に感じた優しい衝撃しょうげき


 正臣の胸の中に再び美姫が顔を埋める。



「正臣くん、大好きです。死ぬまでずっと、私の側にいて下さい」



「ああ」



 もう、二度と離さない。


 一人にさせない。どんな事があろうとも。


 そう、誓いを立てて、上目遣い気味に見上げる美姫の唇に再び自分のものを重ねた。


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