15-1.誓い
「やっぱり、正臣くんの淹れてくれるコーヒーは世界一美味しいです」
「そりゃどーも」
正臣の部屋のちゃぶ台近くに座った美姫がコーヒーカップに口をつけてホッと息をつく。
「こんなに美味しいコーヒー淹れられるなら、将来喫茶店のオーナーになってもいいんじゃないですか?」
「おっ、それいいな」
「ふふっ。......しかし、今日は本当に
「だな」
「まさか空から正臣くんが降ってくるとは夢にも思いませんでしたよ」
「そりゃオレも同じだ。まさかヘリコプターに乗って、さらにスカイダイビングするなんて夢にも思わなかったよ」
「ですよね。本当にびっくりしちゃいましたもん」
口元を隠してクスクスと笑う美姫に
「それに、正臣くんに告白されちゃいました」
「ぐふっ!?」
思わず吹き出しそうになったコーヒーを慌てて口で押さえてティッシュを当てる。
「お、おまえ! 急に何言うんだ!」
「事実じゃないですか」
からかうようにニヨニヨと笑う美姫だが、白い頬にはほんのりと
美姫が隣で笑ってくれる。
あの日、結衣の別荘で紅緒に連れ去られた時、二度とこの笑顔に会えなくなると思った。
あの時向けられた、まるでさよならと言っているような無理やり作った笑顔。
胸が張り裂けそうだった。
もうあんな顔させない。
この笑顔をずっと守りたいと強く想う。
床に置かれた美姫の手に自分のものをそっと重ねる。
「そうだよ。事実だよ。オレはお前が好きだ」
「はうっ!?」
「大好きだ」
「ま、正臣くんっ!?」
重ねた掌に込める力が強くなる。
心臓がびっくりするぐらい強く脈打ってるのがよくわかる。それに熱でもあるんじゃないかと思うくらいら顔が熱い。
心の底から無限に溢れてくる好きの感情にブレーキをかけられない。
この気持ちを全て伝えたい、そして触れていたい。
愛おしい。
彼女を愛しているから。
「ずっと側にいたいって思ってる」
揺れる美姫のエメラルドグリーンの瞳がふと伏せられ、重ねた掌からするりと抜け出されてしまう。
「美姫?」
「......本当に、それでいいのでしょうか?」
「え?」
今にも消えてしまいそうな美姫の声が、温もりで満たされていた正臣の心に冷気をもたらす。
「今も正臣くんが、私なんかのこと好きと言ってくれて心の底から本当に嬉しいです」
「じゃあなんで」
「だからこそです」
顔を上げた美姫のエメラルドグリーンの瞳が潤んでいる。そう、気づいた直後、そこから溢れた大粒の涙が白い肌を伝って零れ落ちる。
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