14-2.お泊まりドギマギ




「あー、もうこんな時間か。私は学生諸君らと違って明日も仕事だから、そろそろ寝るわー」



 いつも通り、しこたまお酒をチャージした櫻子が眠たそうに目をこすって欠伸をかます。


 時刻はもう11時を過ぎていた。そろそろ寝るにはいい時間だ。



「美姫ちゃんの布団は和室に敷いといたからね」



「はいっ。ありがとうございます」



「いえいえ。お父さんもしばらく帰ってこなさそうだから、しばらく泊まってもいいからね? その方がおばさんも楽しいし。じゃあねー、おやすみー」



 ひらりと手を振る櫻子に美姫が丁寧に頭を下げておやすみなさいの挨拶をする。


 櫻子がいなくなってリビングに訪れた静寂せいじゃく


 美姫の方をチラリと盗み見る。


 相変わらずサイズの合っていないダボダボな正臣の服を着た美姫が、少しだけ表情を強張らせて、膝の上できゅっと手を握っている。



「あー、その、美姫?」



「は、ひゃい!」



 呼んで振り向いたその顔は何故か真っ赤で、正臣も変に意識してしまって心臓が加速する。



「その、そろそろ、寝る?」



「そ、そうですね......でも、もし正臣くんがよければですが、少しだけ今後の事についてお話しておきたいです」



 結局、家に帰ってから櫻子のペースに飲まれて肝心の話ができていないことに不安を感じていたのは美姫も同じだったようだ。



「そうだよな。じゃあ、オレの部屋来る?」



 リビングで話してもいいのだが、櫻子が寝ている部屋はリビングの隣だ。


 声が漏れて母親の睡眠を妨げ、怒らせてしまって会話の腰を折りかねない。



「それと、話しするならコーヒーでもどうだ?」



 どうせすぐに終わる話じゃないだろし、夜も深くなってきたのでカフェインでスッキリさせたい気分だったので提案すると、目を細めてふんわりと笑ってくれた。



「はい。是非ご馳走になりたいです。正臣くんの淹れてくれるコーヒー、大好きですから」



 こっくりと頷いた美姫に正臣は素直に口角を持ち上げてコーヒー豆をチョイスするためにキッチンへ向かった。


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