12-3.早乙女財閥 総帥
「正臣くん......」
「辛くてどうしようない時、いつも美姫さんは笑顔で支えてくれました」
目を閉じると、美姫への想いが溢れてくる。
女性恐怖症になった理由を話した時も、凛子が正臣をフッた理由を
早乙女財閥の跡取り娘。
きっと美姫には庶民の正臣には想像のつかない途方のない重圧がのしかかっているのだろう。
今度は彼女を支えたい。
ずっと笑顔でいられるように。隣で一緒に笑っていられる存在でありたい。
彼女を、愛しているから。
「庶民で学生の自分には、お母さんの気持ちや考えを全て理解することはできません。ですがどんなことがあっても彼女を支える覚悟は出来ています。どうか美姫さんの側に居させて下さい」
「......あなたにお母さんと呼ばれる筋合いはないのだけど」
大きなため息を落とした和葉が背を向ける。
「気持ちや考えが理解できていなくて覚悟が出来ている? 青臭い。話にならないわね。紅緒」
「はっ」
「伏見さんを丁重にお見送りして下さい」
「かしこまりました」
迫る紅緒。
その間に両手を広げた結衣が割って入り、彼女の動きを止める。
「おおっと。そうは問屋が
「会長!?」
「よくがんばったわね、二人とも。ここはお姉さんに任せなさい」
微笑む結衣に紅緒が
「......九条院様、そこをおどき下さい。流石にそれは
早乙女の前には九条院の名も
以前結衣が話してくれた言葉を思い出す。
正臣達のせいで結衣の立場を悪くしかねない。
「会長......」
「ふふっ。そんな心配そうな顔しないで。お姉さんは大丈夫だから。今はみんな熱くなってる。このままいくら話してもずっと平行線よ」
結衣の言う通りだと思った。
今は時間が欲しい。冷静になるための時間が全員に必要だ。
「だから伏見くん、和葉さんの熱が冷めるまで美姫ちゃんのこと、守ってあげて」
ぱっちりとウインクした結衣が一緒にヘリから飛び降りてくれた付き人、東郷に視線を送る。
「東郷、頼むわよ」
「はっ! 伏見様、早乙女様こちらへ!」
走り出した東郷の背中を美姫の手を引いて追いかける。
「正臣くんっ! ダメですっ! このままじゃ結衣さんがっ」
「大丈夫」
根拠はないけど、多分。
紅緒の方に向き直る寸前に見えた結衣の顔は、いつも正臣達をからかっている時のおちゃらけたものではなかった。
桜花学院生徒会長、九条院結衣。
天下の桜花を束ねる生徒会長たる、凛々しいものだったから。
「紅緒さん」
背後から聞こえたよく通る
「いち使用人如きが、この私を脅すとはいい度胸じゃない。九条院を舐めるんじゃないわよ」
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