11-1.オレさ、お前のこと好きみたい
「正臣ー! 準備できたって!」
「なんだってー!?」
結衣からの電話を切った途端、急に辺りに暴風と言っても差し支えない風が巻き起こって、おそらく叫んでいるんだろう近くにいる凛子の声すらよく聞こえない。
正臣も叫んで聞き返したが、凛子が耳に手を当てて聞こえないのジェスチャーを送ってきた。
激しい風と、耳を
今にも飛び立ちそうな勢いでヘリコプターが羽を回して
ここは
今まさに正臣と凛子は結衣が用意したこのヘリコプターに乗り込もうとしている。
しかしこうも立て続けに非現実的な光景をまざまざと見せられてしまうと、
結衣も美姫同様、正臣とは住む世界が違うのだと改めて突きつけられた気がして打ちひしがれてしまう。
本当に美姫に会ってもいいんだろうか。
さっきの電話では美姫と話せた嬉しさからくる勢いで一方的に会いたいと伝えてしまったが、肝心の美姫の意見は聞いていない。
むしろ、すぐに会うのは難しいと言っていた。
今すぐ会うのは迷惑かもしれない。
これからやろうとしている、無茶苦茶な作戦を決行すれば、二度と美姫と会えなくなるかもしれない。
そんなネガティブな思考がさっきから頭の中をグルグル回って離れてくれない。
「こらーっ! ぼーっとすんなぁー!」
耳元で叫ぶ凛子の声でハッとする。
どうやら考え込んでぼーっとしていたようだ。
「ごめん!」
今更、怖気付いてどうする。
会うって決めたんだ。なにがあっても。
両頬を張って、無理やりネガティブな発想を頭の外に追い出す。
美姫に会いたい。
その気持ちに家柄の差も、未来に起こるだろう結末も、美姫の気持ちも関係ない。
(オレが、今、美姫に会いたいんだ)
理由はそれだけで十分だ。
ヘリを見つめ直した正臣に、凛子が持っていたへッドセットをすっぽりと被せる。
「みんな正臣に協力してんだから、しっかりしろっ!」
ヘッドセットのおかげでクリアに聞こえた凛子の声にごめんと返した所で、「そろそろお時間です」と、ここまで案内してくれた結衣の付き人、
正直、結衣の考えた作戦が
だがもうここまで来たら、覚悟を決めてやるしかない。
既に先にヘリに乗り込んだ凛子を奥へ追いやり、狭いシートに身体を
(なんて言うか、美姫への気持ちに気づいてから自分でもびっくりするぐらい、大胆になったなぁ)
「何笑ってんのよ?」
「や、別に」
思わず笑ってしまった正臣に目を細める凛子に肩を
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