10-4.好きにならないはず、ないじゃないですか
「気持ちはとても嬉しいのですが、今は警備も沢山いるので、すぐに会うのは難しいと言いますか......」
「はーい。美姫ちゃん、そろそろお姉さんに代わってもらってもいいかしら?」
手を伸ばしてきた結衣に首を
「なんかちょーっと男らしくなったわねぇ伏見くん。きっと愛ね。愛の力がそうさせるのね!」
ニンマリ顔で話す結衣が、慌てた様子でスマホを耳から離す。
ちょっと離れた位置にいる美姫でも正臣の声が聞こえたので、かなりの声量で何か物を言ったのだろう。
からかうような表情を
「結衣さん、正臣くんと何を話していたんですか?」
「んー? なんでしょうね?」
まるでイタズラする前の子どものような顔になった結衣が部屋の窓の方に視線を向ける。
「今日はとってもいい天気ね。星がよく見えそう」
「は、はあ......」
なんの
微笑みを
「ちょっと夜風にでも当たらない?」
「いいですけど......」
結衣に
風のない穏やかな夜。
昼間の残った熱と湿度を
「まるで降ってきそうな穏やかな星空ね」
「確かにそうですね」
「ふふ。こんな素敵な夜だもん。少しくらい奇跡が起きてもいいと思わない?」
「奇跡、ですか?」
「そ、奇跡」
微笑みを絶やさず再びポケットからスマホを取り出した結衣は、ライトを付けるとそれを夜空に向かって振り始める。
突然始めた結衣の奇行に戸惑いつつも、美姫は素直に首を縦に振るのだった。
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