3-2.カップラーメン
「と言うわけで、この辺が王道だ」
「それなら私も見たことがありますし、知っています」
正臣が選別したカップ麺を美姫が目を細めて睨みつける。
正臣が選んだのは日本人なら誰もが知っている王道カップラーメンのシーフード味とカレー味、そして未確認飛行物体の名前のついたカップ焼きそばだ。
「迷ってしまいます......正臣くんはどれが食べたいですか?」
「今回はお前に決めてくれって言っただろ? この辺ならどれ食べても美味いからなんでもいいよ」
「......わかりました。なら、これとこれにします!」
美姫が手に取ったのはシーフード味のカップラーメンと円盤みたいなカップ焼きそばだ。
「了解」
意を決したような表情で差し出す美姫に口元を緩ませつつ、カップ麺を受け取って包装を開ける。
ラーメンタイプの方はお湯を注ぐだけ。焼きそばタイプはソースやふりかけを外に出してポットからお湯を注いで蓋をする。
「後は三分待ったら完成だ」
「もう終わりですか!?」
正確には焼きそばは湯切りする必要があるんだが、驚く美姫が面白いので訂正せずにうなづいておく。
「お前が悩んでる時間の方がよっぽど長かったな」
「だ、だって、たくさんあるから迷ってしまって......」
「そんな珍しいもんでもないだろ?」
一回作って食べれてしまえばハードルは下がる。
気になるならコンビニにでも行って買ってくればいい。
そんな風に思っていた正臣に美姫がゆるりと首を横に振る。
「いえ。初めては一回だけですから。それも正臣くんと一緒に食べるなら尚更です」
「ど、どういう意味だよ......」
「どういう意味だと思いますか?」
ふわりと微笑む美姫を見ていられず、視線をリビングの掛け時計に向ける。
「......そろそろ三分だな」
ちょうどいいので少し
立ち込めるソースの匂いに、食欲が前面に押し出てくる。
「いい香り。美味しそうです」
「だな。よしこれで完成だ。食べようか」
こっくりと頷いた美姫を引き連れてキッチン横のダイニングテーブルに二人揃って腰掛ける。
「最初はどっち食べる?」
「では、焼きそばで」
「はいよ」
カップ焼きそばを美姫に渡し、手を合わせた後、カップラーメンを
安定の美味さ。やはりこの手のカップラーメンはシーフードに限る。
視線を送った美姫はと言うと、カップ麺を食べているとは思えない上品な所作で焼きそばを一口啜ると、驚いたような表情になって目を見開いた。
「お、美味しいです!」
「そいつはよかった。こっちもどうぞ」
差し出したシーフードを受け取って、夢中で箸をつける美姫にバレないように正臣は小さく笑った。
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