2-2.伏見家にようこそ
「そんな不満そうな顔しないでください。結衣さんも私も正臣くんのことを信頼してるんです」
なんというか、直接感謝を述べられてしまうとくすぐったい。
「......あー、なんだ、その引き受けるわけじゃないけど、なにをするのかだけまずは聞いてもいいか?」
「もちろんです」
ニッコリと微笑む美姫にバツが悪くなって視線を逃す。
なんというか、毎回上手くしてやられてる気がして本当に
「今回の依頼は、隣町の海岸清掃のボランティアです。毎年生徒会の恒例行事として参加しているんですけど、ゴミが多くて、ちゃんとやるには人手が必要でして」
「海、か......」
「いかがですか?」
夏らしいワードに少し興味をそそられる。
どうせなんの予定もない夏休みだ。それぐらいなら日帰りだろうし、参加してもいいような気がしてくる。
「当然、交通費や食費は全て学校持ちです」
「マジで!?」
好条件過ぎる。これは絶対に何が裏があるパターンだ。
「その顔、かなり疑ってますね?」
「当たり前だ。自慢じゃないが、オレは生徒会を1ミリたりとも信用していないからな」
「手厳しいですね。まぁ、裏があるとしたら、一泊しなければならないって事ですかね。実はボランティア、一日じゃなくて二日あるんです。しかも2日目は早朝。なんでも、地元の方が設置した地引網を引くのを手伝うんだとか」
「一泊......」
少し引っかかったが、結衣と美姫と一緒に泊まると言っても、当然部屋は別々だと思うし、心配する必要はないだろう。
ボランティア後はよっぽど自由時間だと思うので、タダで海辺を散策できると思うと美姫の提案が魅力的に聞こえた。
「まあ、それぐらいのことなら手伝ってもいいけど......」
「本当ですか! よかったぁ......」
真剣だった表情を安心したのか急にふにゃり
「あら? どうかされましたか?」
「別に......」
首を傾げて正臣の顔を覗き込もうと四つん這いで近寄ってくる美姫がこれ以上近づけないように、右手を突き出して動きを制する。
急にそんな無防備な顔を向けられるのは心臓に悪い。
改めて美姫が正臣の部屋にいるという事実が心臓の鼓動を早めさせている。
これで用は終わったし、さっさと帰ってもらわないとこちらの気が持たないと改めて再認識して正臣は立ち上がる。
「じゃあまた改めて当日のスケジュールは連絡してくれ」
おかえりはこちら、とドアを開けて恭しく礼をした正臣に、美姫があからさまに不満げな表情を向けた。
「せっかく正臣くんのお家に来たんですから、もう少しゆっくりしてはダメですか?」
「ダメ」
「そんな......正臣くん、酷いです......」
「酷くて結構。おい、そんなしおらしい顔しても無駄だぞ」
「むぅ。今日の正臣くん、ガード固いですね」
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